All Chapters of 職業運び屋は副業で殺し屋。赤髪エルフ娘のお仕事日記。ついでに何重もスパイやってます!: Chapter 11 - Chapter 13

13 Chapters

Case.20 その封書、封をしたのは誰でしょう?

 セイレーンの涙。そいつを届けた先の貴族様は、それはそれは大層喜んだ。余命いくばくもない老体の貴族は、今生の最後の願いとして、一族の繁栄を願ってそれを飲み干した。 私の美貌に年甲斐もなく見惚れてしまい、あれこれ家宝を持ってきては好きなものを持って行けと目の前に並べていった。もちろん披露された数々の品の中から、いくつか頂戴したことは言うまでもない。これでまた私の財布が膨らんだというわけだ。素晴らしい! そしてチョロい。結構な値打ち物まで遠慮なし。 そんな老貴族の願いが聞き届けられたのかどうなのか。セイレーンの涙にはもう一つ効果がある。それは手に入れる幸せの対価が、見合わないくらいの不幸というやつだ。そして程なく私はそれが実際に効果があったんじゃないかと思うのよね。 何故って? おそらく老貴族の願いは、今の王国の中での一族の栄達だったと思う。でも皮肉なことにその王国そのものが別の貴族の反乱であっという間に滅んでしまい、すでに別の王家が君臨している。なんと不幸なことでしょう。残り僅かな人生で最後の願いを、秘薬を使ってまで叶えたと思って安堵したところ、死ぬ前に国の方が滅んじゃうなんて。 そして、一つ目の効果も、おそらくあったのだろう。王様が入れ替わって国名が変わっても、その老貴族の一族は引き続き新しい王国で取り立てられたのだとか。栄達できて良かったわね。そんなこともあって、老貴族は複雑な胸中を示すかのように苦笑いしながら息を引き取ったのだとか。これは幸福だったのか不幸だったのか。二つの効果はどちらもたぶんあった。これでまた一つ賢くなったわね、私。そして分不相応な願いごとなんて、するもんじゃないわよ、人間。     ◇◆◇ あの王国での反乱を、私はもちろん事前に知っていた。お葬式に花束を届けた際に、ちょっと耳を澄まして聞いてしまった小声での密談。反乱の首謀者は、おそらくあの仕事の依頼主に違いない。どさくさに紛れて当主を亡き者にしてその領地を乗っ取った挙句、その話が落ち着く間もなく反乱を起こして今度は王様に。手際だけは立派なものだと、私ですら感心する。 強引なやり方はだいたい反発を生むもので、暗殺者ギルドに顔を出してみれば、さっそく出ている暗殺依頼。もちろん新た
last updateLast Updated : 2025-11-07
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Case.23 世の中見た目が……(前編)

 大陸中央の戦争は不幸な事故が相次いだことで、比較的あっさり終わってしまった。私ったら、つい仕事励み過ぎちゃったかしら? まあ戦場で司令官を務める人間が次々不幸にあったらまともに指揮を取れる人間もいなくなるわけで、こればかりはちょっと欲をかいちゃったかもしれない。 世の中が平和になると仕事がぐっと減っちゃうのよねー。 そういうわけで、運び屋の仕事も安い仕事が増え、戦争で疲弊した大国は内紛する余力もなくなってしまい殺し屋の仕事が減った。 あちらこちらでスパイとして|魅力をふりまいて《暗躍して》きた私としては各国が内政に専念するとなればもちろんスパイの仕事も減って困る。もう辺境オブ辺境の仕事はごめんだ。なにしろ飯が不味いし観光もろくにできない。 この短い季節の間にずいぶんと稼がせてもらったので財布はほくほくなのだけど、湖のほとりに家でも買おうかしら? そんなことを考えながら今日は東方料理で有名なちょっとお値段の張るレストランで香辛料を贅沢に使った刺激溢れる料理に唸っていたときのことだ。「おいそこの赤髪のエルフ。同行してもらおう」 レストランの入り口にはこれでもかと数を恃んだ街の衛兵。街中かき集めてもそんな人数がいるのか疑わしいくらい。 黒糖に群がる蟻だってこんなに集まらないだろうそれを見て、さてどうしたものかと思案する。 運び屋も殺し屋もスパイも全部美貌を武器にやってきたのだから、お芝居にでも出てきそうなこういう場面を切り抜ける武技があるわけではない私。そして魔法はそこまでできない私。 いつものようにきれいな長い赤髪を靡かせてナイスバディで上目遣いに篭絡しようと立ち上がろうと腰を浮かせた時に大音声で響く一言。「その手は食わんぞエルフ。十分言い聞かせられているからな」 どうやら衛兵を差し向けた人間は私のことをよく知っている者のよう。困った。最大の武器が通用しないとしたら、これは大変マズい……。「私の……その手とは……?」「喋るな。それも禁止だ」
last updateLast Updated : 2025-11-10
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Case.23 世の中見た目が……(後編)

 それからたっぷり師匠が勝ち誇った顔でご高説を垂れ、いかに私が性悪な存在なのかを述べ立てていった。エルフの里だって勝ち馬に乗ろうとしていた癖に偉そうに。時折見下す冷めた視線は、それはそれは反吐が出そうだった。 弟王はといえば、これまた苦虫を噛み潰したような顔で私を見ていた。その表情を見ればわかる。こいつは実母の噂話が広まった出元が私だと知っている。ということはこいつは柄にもなくその秘密を私にだけ話したというわけだ。もっと口が軽ければこんなことにはなっていなかったかもしれない。「さて……何か申し開きはあるかしら? 使いっぱしりの害虫さん?」 そう、なにもかも知った上で形だけ整えた弁明の場に意味はない。最初から結論など決まっているのだ。いまさらこのムカつく師匠の前で何か言ったところで変わることなどない。 無言で睨む私を蔑む視線がいくつも突き刺さる。もはや美貌でどうこう、話術でどうこうできる状況じゃない。この宮中全体が敵だ。「どうせ答えは決まっているんでしょ」 吐き捨てるようにつぶやく私に「手続きだから」と酷薄な笑みを浮かべて応えた師匠は、おそらく過去最高の悪人面には違いなかった。「最後にもう一度だけ弁明の機会をあげるわ」 師匠の言葉を合図に新たな登場人物。「そなたは、今後一切の罪をおかさなと誓うか? 表の法を犯さないのはもちろん、裏の仕事もやらないと誓えるか?」 こいつ、失明者だ……。美貌が通じない数少ない人間。相性が悪すぎる。「誓ったら何か変わるの?」 大して期待もしないで尋ねた言葉に、そいつは一言こう告げた。「誓えるなら、罪は不問に付す」 いやいや、あり得るだろうか。 それとも考えなければならないのは、あり得たとしてこれにどう答えるべきだろうか。実際そう形だけ誓うのは簡単だ。問題は誓った後だ。そうせねばならないとしたら、私は真面目に働かなければならない。「私は……」 言い淀む。誓えなければ死。それはわかりきって
last updateLast Updated : 2025-11-12
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