職業運び屋は副業で殺し屋。赤髪エルフ娘のお仕事日記。ついでに何重もスパイやってます!

職業運び屋は副業で殺し屋。赤髪エルフ娘のお仕事日記。ついでに何重もスパイやってます!

last update최신 업데이트 : 2025-11-12
에:  涼風紫音완성
언어: Japanese
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類い稀で比類なき美貌を武器とし、魔法はあまり得意じゃない。 赤髪と抜群のスタイルを自負するそんなエルフのハイパー自己中おてんば娘。 その美しさで数多の人間を手玉に取り、 運び屋、ついでに殺し屋のお仕事を自分勝手にやり遂げる。 裏ではあちこちでスパイも掛け持ちしてさあ大変。 今日もその美しさは咲き誇り、世界はおてんばエルフを中心に回ります♪

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1화

Case.00 - Prologue - 世の中見た目が十割

 だいたい人間という連中は、エルフには甘い。私のように誰が見ても、エルフの中でも飛び抜けて美しいとなれば、チョロい。それが世界の真理。世界は私を中心に回っているのだ。えっへん。

 この大陸ではしょっちゅう戦争が起きる。あっちの川の水が欲しい、そっちの鉱山を寄越せ、そこの農地は豊穣だから手に入れたい。理由がなんであれ、まあ戦争というのは起きるのだ。人間というのはそういう生き物。そこに私の美貌は抜群に効く。

 せめて私ほどの美貌がそれぞれの国にいれば、あっという間に口説いて止めさせることができるのに、残念ながら私のような美人はそうそういない。まさに絶世の美女とは私のこと。魔法はあまり得意ではないけど、あまりある美しさはすべてを解決するのだ。

 そんなわけで、人間の国を渡り歩くのにたいていは苦労しない。誰もが美しさに息を呑み、女神と讃え、振り向いて目が離せなくなるのだから、国境を超えるなど造作もない。

 燃えるように鮮烈な腰まで伸びる赤い髪、ルビーでさえ叶わないちょっと憂いを帯びた(ように見える)瞳、ついでに泣きボクロもポイント。

 背は高く出るところは出て引っ込むところは引っ込むメリハリ抜群の体からすらりと伸びた傷一つない手足。つまり、私はどこをどう見たって美人さんなのだ。自画自賛しても神は怒らないどころか褒め称えてくれるに違いない。

     ◇◆◇

 今日もつい半刻前に谷あいの哨戒塔の下を堂々と闊歩して国境を越えたばかりだ。イチコロとはまさにこのこと。誰何する人間などいない。やっぱり世の中見た目が九割、いや、十割。うーん、美貌も過ぎると罪よね。

 今回の荷物は密書。まあ運び屋を使うなんてだいたい疚しい連中ばかりなのだから、料金はもちろんはずんでもらった。ちょっと上目遣いに見つめてやったら、依頼主はほいほい倍額出した。チョロい。チョロすぎるぞ人間。

 空は晴れ渡りそよ風が気持ちいい。陽光は私の赤い髪をいっそう際立たせる自然の恵み。すばらしい旅日和。草原はこうでなくっちゃ。

 私は運び屋。この密書に何が書かれているのかは知らないけど、どうせろくでもない内容なのだろう。また戦争が始まるのかと思うと、稼ぎ時の予感で胸が高鳴る。

     ◇◆◇

 道中立ち寄る予定の宿で、実はもうひとつ仕事の予定がある。

 表向きの仕事は運び屋。もう一つは殺し屋。魅力溢れまくりな美貌に油断しまくっている人間をちょいと昇天させるのは簡単。私にうってつけの仕事なのだ。暗殺ギルドのアルバイトもちょっとした小銭稼ぎ。

 この先の宿で歌うへっぽこ吟遊詩人を「二度と歌えないように」するのが依頼だ。まあ歌えなければよいのだから何も命まで取らないでもと思ったけれど、とっても下手くそで聞く者の精神が狂うほどだと聞けば、それも仕方ないなと思う。

 よくもまあそんな声で歌うものだが、もしかしたら見た目くらいはいい男なのかもしれない。

     ◇◆◇

 そんなことを考えているうちに、もう宿が見えてくる。緩やかな斜面の丘の上にぽつんと建つ旅人御用達の安宿。まあへっぽこ吟遊詩人が歌えるのは安宿だからかもしれないと思うと、そんな安宿で下手な歌まで聞かされる財布が軽い客には少しだけ道場する。

 お金が無いと宿も選べない。だから私はもっともっと稼ぎたいのだ。それだけじゃないけど。

「ハーイ(はぁと)」

 必殺のウィンクで宿にイン。これで落ちない人間はまずいない。というかほぼ落ちる。一目惚れするのも無理はない。それもこれも私が美しすぎるからだし、そう生まれてきたのは私の責任じゃない。さあ貧乏な客たちよ、惚れて溺れてなんでも私の言うことを聞きなさい……っ?

「なんだエルフか。お前みたいなのが来る場所じゃないだろ」

 やたらといかつい声の……ドワーフの男。髭もじゃで背は私の半分ほど。その手には棍棒代わりに使ったんじゃないかという具合に見事に半壊した竪琴。

 謀られた。ドワーフはエルフの美貌を理解しない。そう、エルフの天敵。美しすぎる運び屋の私を持ってしても、これだけは無理だ。おまけにドワーフは魔法に耐性があるときた。魅了も使えない。

 とはいえ依頼は依頼。仕事は仕事。残念ながらこの吟遊詩人(たぶん自称)にはお亡くなりになって頂かないと。

     ◇◆◇

 そこからはなんとか宿の外に連れ出した後……くんずほぐれつ、大格闘。

 まったくエレガントさのない戦いは嫌いだ。おかげで服もぐしゃぐしゃでところどころ破れている。あのクソボケドワーフの馬鹿力のせいだ。

 ほんとうにひどい目にあった。暗殺ギルドの連中は吟遊詩人の種族を敢えて伏せたに違いない。いまごろきっと笑い転げているのだろう。腹立たしい。

 そんな一仕事を挟んで無事密書はとある城砦へしっかりお届け。小さな居館にそれほど高くもない城壁。反乱でもするのかしら? ぶっちゃけ負けそう。弱そう。とはいえこの城からもしっかり稼がなきゃ。少ないなら少ないなりに。

 だからとある国、この小さな国のお隣の国で進んでいる秘密の話をうっかり口を滑らせてしまった私は、領主の世間知らずな跡継ぎに大変感謝され、そう大いに感謝され、密書の中身を葡萄酒を煽りながら意気軒高に話してくれた。まあ私を酒の肴にするのだから、舞い上がってべらべら喋るのもしょうがない。すべては生まれ持ったこの美しさゆえのこと。私に罪はない。

     ◇◆◇

 さあ、今度はその話をどこに持っていくのが一番高く売れるかな?

 私は運び屋。アルバイトの殺し屋。裏稼業はあちこちを雇い主にした二重三重のスパイ。噂話や弱味ごとはいくらでも稼ぎの種になる。この類い稀な比類なき容姿と、多少は使える魔法で明日もまた稼ぐための旅に出る。

◆◇ 新緑の月、十日の日記 ◇◆

 今日はこの世界で一番私の美しさを理解しない黒髭へっぽこドワーフ詩人と大変不本意なことに殴り合いました。依頼内容はちゃんと確認しよう。反省反省。この世界は私を中心に回っているべきなのだ。あーあ、疲れた。これだからドワーフは嫌いだ。

 あの宿〇×の酒はマズい。貧乏領主の葡萄酒の方がまだマシ。二度と行かないリストに追加。

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Case.07 口は禍の元とは言うけれど
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Case.09 エルフの里帰り
 いつものことだけど、人間というのはチョロい。美しすぎる私の美貌の前にひれ伏し、崇め、勘違いしたバカは股を晒す。 一般にエルフは長命で魔法を自在に操り弓に長けた種族として知られている。人間の間では。その認識はだいたい正しい。だいたいは。 私は残念ながらそこまで魔法が得意ではない。いけ好かない師匠は言うに事欠いて「あなたの魔法はせいぜい人間レベルね」とか言いやがった。 それに対して「私の魔法は常時発動型の魅力《チャーム》なので」と言い返したら、今度は「冗談は顔だけにしてちょうだ」とまで言ってきた。この美貌が冗談であってたまるものですか。 どこを取っても意見もウマも合わない師匠のもとへ、今日は行かなければならない。憂鬱だ。二度と会わないで済むなら神の存在を信じてやったっていい。 そんな憂鬱な仕事を引き受けた理由はたった一つ。報酬が抜群に良かったからだ。 大陸の中央でいまにも始まりそうな人間の大国同士の戦争は即戦力を必要としていた。優秀な魔法使い、騎兵、飛龍などなど。 つまり密書を運ぶ仕事は至るところに転がっていた。エルフの協力を得たいと考えた人間がエルフの里にエルフの運び屋で封書を運ぶ。人間にしてはちゃんと考えているあたりは褒めてあげましょう。     ◇◆◇ エルフの里に人間は立ち入れない。そしてエルフの運び屋は少ない。魔法で稼ぐ方がよほど手っ取り早いのだからこの仕事のうまみはエルフにはあまりない。だいたいは。 そうしてまたしても宙に浮き値段がつり上がった仕事はついに私の目に留まったという次第。それにしても、依頼の運び先は受領サインをする前に気づくべきだった。つい報酬に釣られてしまった私。まあ中央に戻って散財したしたまにはね? エルフの里は大陸の中央から北東にある広大な森林地帯にある。魔法の技で位が決まる超絶格差社会の里。一度その技がランク付けされれば後天的に覆すのはかなり難しいし、その素養に乏しいともなればその機会すら与えられない場所。 私の美貌を腐らせるには相応しくないそこを飛び出して世界を渡り歩くだけの理由はそれだけで十分だった。 思った通り人間の社会
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Case.10 スパイス入りワインにご用心
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last update최신 업데이트 : 2025-10-27
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Case.14 ついでに投資家もやっちゃおうかしら?
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Case.15 戦場の霧とは私のこと
 いろいろあってエルフの里の境界に大軍が集まってボヤが起きたり、その隙を衝けとばかりに大国同士の戦争が始まったこの大陸中央で、運び屋の仕事は増える一方なのだった。 私は何もしていませんよ? あの店の人たちに南の遠いところへ避難してもらっただけですよ? 戦争となれば運び屋の仕事も殺し屋の仕事もついでにスパイの仕事もあれもこれも右肩上がりになる。 裏切りを誘う密書が飛び交い、敵に優秀な指揮官を見つければ暗殺したくなり、敵情を探ろうとスパイが暗躍する。戦争って儲かるのよねー。 本当はほどほどに小競り合い程度で済むと仕事が楽なんだけど、荒れたら荒れたで報酬が上がるのだから平和な世の中よりも稼ぎ時。 そんなこんなで私はいまとある戦場にいるのだった。 エルフの里を襲いに行った国を襲いに行く国。人間ってなんて単純なんでしょ。師匠の顔が歪むのを拝めないのが残念だけど、私はそんなものよりお金が大事なのだ。 今回のお仕事は騎兵が有名な部族の傭兵たちに裏切りのお誘いを運ぶこと。お金で転ぶ者はお金で転ぶのが世の常。 優良種の馬の産地、乗り手も優秀となれば大国といえどもそう簡単に併呑できずに今日まで独立を保っているそれは、今回も「一番高く払うところに行くぞ」とある国の味方としてこの戦場にいる。 とはいえ傭兵として名を馳せるからには表立って「相手から金を積まれたから今日から敵になりますね」とは言えないわけで、それなりのお膳立てが必要。 そう、例えば「味方がものすごく負けちゃってるので勝ち馬に乗ります」というやつである。 そ・こ・で、私の出番。 貴族たちの寄り合い所帯の兵士たちなんて、負けそうになればすぐに逃げだすし、名誉の戦死なんていう美学に殉じる物好きがいればそれはそれで勝手にすれば良い。そんなことをしてもお金にならないのにねぇ? そんな寄せ集めの軍が負けるのはだいたい決まって勢いで押されるか指揮官が「不幸にも」お亡くなりになって統制が取れなくなったとき。 傭兵たちとしてはぜひとも自軍の大将が不慮の事故にでもあって、それとなく敗勢が漂ってきたところに攻め込んできても
last update최신 업데이트 : 2025-10-31
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Case.17 葬式には相応しい花束を
 戦争があれば当然に死者が出る。それが多いか少ないかは別として、無縁ではない。そう、戦場で私がちょっと囁いた結果もその例外ではなかった。戦争だから仕方ないよね? そしてそれなりにお偉い方がその列に加われば、やってくるのは、盛大なお葬式。人間もエルフも儀式というものをとても重視する。私のようにそんなものはお飾りだと言って憚らない存在は珍しいのだ。神なんて信じていないからね、私は。この美貌だけは、とても信じているけどね。 そんなわけで、今回の運び屋のお仕事はそんな貴族様のお葬式に花束のお届け物。もちろんただの花束なわけは、ない。それだけだと大したお金にならないから。そう、私がこの仕事を引き受けたのは、その葬式に暗殺依頼の対象が参列するからだ。人間なんてのはいつも足の引っ張り合いをする生き物。戦争が痛み分けに終わったとしても、今度は政争の相手を引き摺り下ろす好機とばかりに貴族同士のいがみ合いが始まる。それもまた世の常。私にとってはお仕事が増えて助かるけどね。 お偉い貴族のお葬式ともなれば人は大勢集まるし、その中に運び屋が紛れるのは簡単なこと。顔見知りの貴族といっても皆が皆自分で参列するわけでもない。代理を差し向ける人間もいれば、花束だけを贈る人間もいる。もちろん内心で喜んでいる人間だって。 今回のお葬式は、とある貴族の跡継ぎが戦死したことで執り行われるもの。それなりに有力な貴族の跡取りともなれば、その国の中で競争相手はいくらでもいる。そして跡取りが失われれば、養子を送り込みたい者もいれば、いっそ当主ごと死んでくれれば良かったのにと考える者もいる。暗殺依頼はそうやって醜い争いの中で出てくるのだ。それをしっかり見つけた私、えらい。えらいぞ私。     ◇◆◇ かくして私は花屋で花を見繕って、それを今届けに行く真っ最中。薔薇の花はお葬式には似合わないけど、ある程度近しい人間であれば贈ることもあるらしい。薄いピンクの花びらがとても綺麗。遺体と一緒に埋めてしまうには、ちょっともったいないわね。「綺麗な薔薇には棘があるって言葉、人間もエルフも関係ないみたいね~」 そよ風に自慢の赤髪をたなびかせて花束を抱えて思わず舞ってしまう。仕事道具じゃなきゃ思わず持
last update최신 업데이트 : 2025-11-03
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Case.19 猜疑心への対抗法
 人間でも魔法を巧みに使う者がいる。エルフはだいたい皆使えるのだけど、人間の中で使える者は多くはない。しかし使えるとなるとだいたいが巧者。私がエルフの中では異例なことに魔法が得意でないこととは真逆。使えるとなるととことん使う。自然と扱える者が多いエルフと違ってわざわざ専門の学校さえ作ってしまうのだから、人間も業が深い。チョロいくせに生意気だ。まあ生意気なのはいい。私には関係ない、はずだった。 過去形なのは、いま絶賛関係があるからだ。突き抜けた才を持つ者はだいたい傲慢になるし、その結果多くの者から恨みを買う。中には謙虚な者もいるにはいるが、自分を抑制できるほど性根が正しい存在など、人間にもエルフにもなかなかいない。 いま向かっているのは人間の魔術師たちの中でも最高の技を持つという噂の男。いわゆる魔導士と呼ばれる格が高い魔術師の一人。なんでも北の王国で王宮魔導士という肩書で王様はなんでもその男に相談するのだとか。そういうことになると、当然に貴族の反発は大きく、暗殺依頼と相成りましたとさ。 ところで、それだけで済めば暗殺の依頼なのだけど、その魔導士からお届け物の依頼も出ているのだ。つまり運び屋としての仕事の依頼主と、暗殺対象が同一人物。私としては、運び屋の仕事を受けつつ、報酬を先払いでがっぽりもらってからお亡くなりになって頂くのが最善。間違っても報酬をもらう前にお亡くなりになってもらっては困る。 そして魔導士というのはとことん猜疑心の塊なのだ。人間の中でも希少種、その中でも格上の力の持ち主ともなれば、嫉妬もされるし周りを見下したくもなる。エルフの腕利きと比べればまだまだ劣るとはいえ、人間の中では別格。まあ私の師匠だって周囲のエルフを見下して悦に浸っていたくらいだから、人間ならなおさらね。 猜疑心が強いと私の美貌でイチコロとはいかないかもしれない。チョロい人間の中で、珍しくチョロくない。私としては美貌でコロっと逝ってくれると楽なんだけどね。まあどの程度の人物なのか、合ってみればわかるでしょう。 依頼の主であり標的でもある魔導士が住んでいるという二本の尖塔が特徴的な館までもうすぐ。なんでも王宮魔導士として特別に与えられた土地に、これまた国庫のお金でその屋敷を建てたのだとか。そ
last update최신 업데이트 : 2025-11-05
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