婚約者・祖浜進介(そはま しんすけ)にブロックされてから、55日が経過した。私は、八年も待ち続けた結婚式をキャンセルした。その間、彼はうつ病を患った幼なじみ・石塚ニナ(いしづか にな)と共に、K寺で心の療養をしていた。彼は長年参拝客が絶えなかったK寺を、半年間も閉鎖させた。一方で、私は彼の突然の失踪により記者に追い詰められ、家にも帰れなくなった。やむを得ず、私は彼を探しにK寺まで行った。しかし、「寺の静けさを乱すな」と言われて、山から追い出された。真冬の寒さの中、私は山のふもとで気を失い、命の危険にさらされかけた。目を覚ましたとき、私は見た――進介が自らの手でK寺の境内に、愛の象徴である無数のバラを植えている姿。半年後、彼はようやく下山し、ニナを連れて帰ってきた。そして、彼女と一緒に植えたバラを、私との新居に飾りつけたのだ。私はただ冷ややかな目で見つめている。彼はまだ知らない――私がもうすぐ別の人と結婚することを。……店で指輪を選んでいると、半年ぶりに進介と会った。店員が私の手にあるダイヤの大きさを褒めそやしているが、私は何も耳に入らなかった。ただ、彼を見つめているうちに、心が少し揺れ動いた。進介は私の指にある指輪を見ると、冷ややかな表情のまま近づいてきて言った。「どうして一人で先に来た?サプライズを用意してたのに」口ではそう言っているが、彼の手にぶら下がっている袋の中には、ダイヤのネックレスが入っている。それは私へのものではない。ニナのためのものだ。昨日、彼らが家に戻ったとき、私は聞いた。ニナが彼に甘えるように「誕生日プレゼントにダイヤのネックレスが欲しい」と言っているのを。そして進介は、すでにその願いを叶えている。そう――ニナの望むことなら、彼はどんな努力をしてでも必ず叶えてしまう。私とは違って、私はただ結婚式を望んでいただけなのに、八年待っても叶わなかった。だからもう、進介。私はあなたを待たない。私は彼から少し離れて、黙って指輪を外し、店員に包んでもらうように頼んだ。すると進介はすぐにカードを取り出し、支払おうとした。私が店員に説明しようとしたとき、ふと彼の手首にある数珠が目に入った。昨日、ニナが芸能界復帰を発表した際、インスタに投稿
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