朝八時、枕元に置いたスマホのアラームが鳴る。 俺は身支度を整えると、部屋を出て、上階のペントハウスへと向かう。 俺こと多聞蓮太郎と、シノさんこと東雲柊一の馴れ初めを話始めたら、それこそ夕方になってしまうので、ここでは割愛する。 現状、俺はシノさんの持ちビル "キングオブロックンロール神楽坂ビル" 内の賃貸「メゾン・マエストロ」で暮らしていて、シノさんを起こすのが日課となっているのだ。 ちなみに、シノさんは俺の幼馴染で、想い人でもある。「おはよう、シノさん」 ペントハウスには施錠がされていないので、俺は勝手知ったるナントカで中に入り、寝室で未だ朝寝坊を満喫しているシノさんを起こす。「なんだよ〜、まだいーじゃんか」「良くないの。ほら、起きて。敬一クンと、シノさんのコトちゃんと起こすって、俺は約束してるんだから!」「ん〜、も〜、ケイちゃん余計なコトを…」 ブツブツ言いながら、シノさんはベッドから抜け出した。「エービーシーサンドでいいか?」 キッチンに立ったシノさんが言った。 シノさんが冷蔵庫から取り出したのは、近所のパン屋で買った八枚切りの食パンとクリームチーズ。 それと、バナナスタンドに下がっていたバナナだった。 棚から取り出したホットサンドメーカーに、既にパンが仕込まれている。「なにそれ?」「アップル、バナナ、クリームチーズで、エービーシー」「りんごが……どこに?」「昨日、メシマズが鎌倉の有名店で買ったとかゆー、ジャムのセットを送ってきてさぁ。ちぃと味見したら、りんごジャムが結構イケたんだよ」「同じホットサンドなら、ハムとチーズとかいわれ大根……みたいな方がいいんだけど……?」「あ、かいわれ大根なら、ケイちゃんがそこの窓辺で育ててるぜ」 シノさんは屋上にプランターの菜園を持っているけど、それに啓発でもされたのかと思ったら、窓辺に置かれているのは豆苗の根っこだった。「シノさん、これまだ、芽が出てないよ」「うい? そーだった? んじゃあ冷蔵庫から好きな具材を出せい。先に俺のを焼いちゃうから」 冷蔵庫の中を見ると、スライスチーズとハム、それにシノさん特製のポテサラがあった。 野菜室にしなびたかいわれ大根もあったので、具材は希望通りのものを作ってもらうこと
Última actualización : 2025-10-29 Leer más