翌日はキャンパスチームの巡回だったので、ホクトが夜まで居残っていた。 ホクトは自分から図々しい態度はとらないが、居れば必ずシノさんが夕食に招くし、ホクトが夕餉に招かれると必ずエビセンもそこに参加してくるようになっていて、更に今はエビセンがコッチに来てしまうと、一人で部屋にいたくないコグマまでくっついてくる。 キャンパスチームの三人は誰も幽霊に動じてないし、体力にも自信ありげな体育会系の若者揃いだし、何があっても対処出来るだろう。 そう期待していた。 期待通りに三人は、八時から十二時までの間、一時間ごとに階段を上から下まで見回ってくれた。 だが、何事も起きなかった。 そしてとうとう今夜は、マエストロチームの巡回当番になってしまった。 シノさんの家のリビングで夕食後のコーヒーを飲みながら、俺は心の底から、どうして前日のチームの時に出てくれないんだ幽霊!! と思っていた。 たぶんコグマも思ってるだろう。「んじゃケイちゃん、そろそろ見回ってくら〜」 と言ってシノさんが立ち上がった時、俺もコグマも処刑台に連れて行かれる死刑囚みたいになっていた。 すると俺らの使ったカップを盆に集めていた敬一クンが、ふと思い出したように言った。「そういえば兄さん、昨日俺達が巡回した時、二階の踊り場のところでゴキブリが出ました」「うええええ!」「大丈夫、それは海老坂が退治しました。でもまた出るかもしれないから、驚いて階段踏み外したりしないように気をつけて」 今の今まで鼻歌まじりだったシノさんが、急に尻込みをしてしゃがみ込む。「うええええ! ヤダヤダヤダ! 行きたくなーい!」「兄さん、大丈夫だから。ほら、多聞さんに殺虫剤持ってもらいますから」「ううう…、じゃあレン、オマエ先頭行け! そんでGが出たら、速攻でぶっ殺せ! コグマは俺の前で、G避けの盾になっとれ!」 そう言って、俺とコグマを前に押し出した。 幽霊は鼻で笑い飛ばせるシノさんだが、虫類全般には非常に弱く、特にゴキブリは "ゴキブリ" と口に出すのも避けてるし、絵に描いてあるのすら怖気て逃げる。 だから殺虫剤もボトルの絵を嫌がって、自分では絶対に持たないし、使えないのだ。 悪気のない敬一クンのお陰で、マエストロチームは最悪のフォーメーションとなり、俺らはそれぞれの理由でおっかなビックリ部屋を出た。
Last Updated : 2025-10-29 Read more