あの日、二人が親密な時間を過ごしてからというもの、翔太は長らく多忙だった。裕美は、彼があの夜の県の後処理をしているのだと分かっている。短期間で巨大な一族の実権を握った翔太が、善良な人物であるはずがないと、裕美は考えていた。それでも翔太は、少なくとも彼女の前では優しく接するよう努めているようだ。裕美はそれ以上詮索せず、干渉しないでおくことにした。彼の手段は敵に向けられるものであり、部下や家族に対しては、翔太はもともと責任感が強く、誠実な人間だ。最近、弁護士と遺産に関する話し合いを進めながら、裕美はそのことを翔太に話すべきかどうか、たびたび迷っていた。達也は彼女を幼い頃から甘やかしてはいたが、女の子は良い相手に嫁げばそれでいい、という考えの持ち主で、会社を管理する経験などは教えてくれなかった。今は京西市に来て、裕美はすべてを一から学び直さなければならない。彼女は温井家の看板を利用するのは避けた。それは将来に備えた退路を確保するためでもある。拓真の件を経験した今となっては、たとえ翔太がどんなに優しくしてくれても、裕美が心の底から彼を信じるのは簡単なことではない。裕美は苛立ちを感じながらこめかみを押さえた。そのとき、スマホの画面に突然翔太からの電話が表示された。彼の声はいつもより落ち着いていた。裕美の胸に一瞬にして嫌な予感が走った。「裕美、今何をしている?」「どうしたの?何かあったの?」翔太はしばらく黙り込んだ。「……ちょっとネットが炎上してる。すぐ帰るから、ネットは見ないでおいて」裕美は不安な気持ちで電話を切り、すぐに、SNSの通知が火事場のような騒ぎのようにざわめき始めた。画面いっぱいに表示されたプライベート写真を見て、彼女の体は一気に冷え切った。それは、まるで前世の最も忌まわしい記憶が蘇ってきたかのようだ。拓真は芳子への世間の非難を完全に断ち切るため、彼女のプライベート写真を大画面に映し出し、人々の目にさらしたのだ。その瞬間、無数の誹謗中傷が裕美のアカウントに殺到した。一夜にして、彼女のSNSは炎上。白野家の令嬢という立場は踏みにじられ、誰からも蔑まされるふしだらな女へと転落したのだ。もしそれが他人の仕業であれば、裕美はまだ耐えられたかもしれない。だが、彼女を傷つけたのは幼い頃から最も信じてき
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