――昨夜、俺が接触した女は美羽だけのはずだ。なら、キスしたのも彼女ってことか?だがよく考えてみると、光博は美羽の顔がどんなだったか全く思い出せなかった。正直なところ、もし彼女が絶世の美女なら彼が忘れるはずがない。覚えていないということは、そこまで美人ではなかったか、彼の好みに合わなかったかのどちらかだ。それなのに……どうしてあんなにもキスの感触が最高だったのだろうか?一方、悠は電話を切り、委屈そうに涙を拭っていた。ママから「パパは記憶喪失になって、悠のこともママのことも忘れちゃったの」と聞かされていた。最初は受け入れられなかったが、ママが「ただの一時的なものだから、パパの頭の怪我が完全に治るまでの間だけ待ってあげてね。そのうち必ず私たちのことを思い出してくれるから」と説明してくれた。しかしその間、彼女たちは彼を邪魔してはいけないのだという。刺激すれば、永遠に思い出せなくなるかもしれないからだ。パパに永遠に忘れられてしまうのが何よりも怖かった彼女は、ずっと我慢して、会いに行くことも、電話をかけることすら我慢していた。昨夜は本当に我慢できず、ただパパの声が聞きたかっただけなのだ。悠は涙を拭き、顔を洗ってから洗面所を出た。部屋に戻ると、ママはまだ眠っていた。昨夜すごく遅くに帰ってきたから、きっと疲れて眠いのだろう。ママの邪魔をしてはいけない。そう思いつつも、悠はそっと顔を近づけ、ママの頬にキスをした。「ママ。今日の夜は、一緒に外でご飯食べようね。私、あの意地悪なおじさんの顔、見たくないもん」寧々とこっそり約束をして、悠は一階へ降りた。するとちょうど、文雄が一階の階段下の物置から、彼女が隠しておいたスケートボードを見つけ出してきたところだった。「私のスケボー返して!!」悠はすかさず駆け寄って叫んだ。文雄は眉をひそめた。「スケボーで遊ぶのは禁止だと言ったはずだ!」「私、遊びたいの!遊ぶもん!」「俺がダメだと言ったらダメだ!」「あ、あなたなんか私のパパじゃないくせに!私に命令しないでよ!」「……もう一度言ってみろ?」文雄の表情が険しくなったのを見て、悠は少し怯えた。しかし同時に激しい怒りと悔しさも込み上げてきて、口を開いて言い返そうとした、が、次の瞬間、誰かの手に口を塞がれた。「緑川社長。子
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