わたしのために人々が貴方を罵り、迫害し、あなた方に偽り様々な悪口を言う時、あなた方は幸いである。 『マタイによる福音書 5:11』 窓から黄色い陽光が差し込む部屋、そこに一人の青年が無表情で座っていた。 どうやらここは病院の待合室らしい。 子供たちが笑いながら走り回っている、小児科なのだろうか。 「………」 すると前の席に座る子連れの女性が抱き抱える赤ちゃんと目が合う。 すると。 「……うえぇぇん!!!」 目が合った途端赤ちゃんは泣き出してしまう。 「……っ」 周りが一斉にこちらを向いた。 別に何か悪い事をした訳じゃない、しかし大周のその目は"お前がわざと泣かせた"と言っているかのように見えた。 「ぅ……」 果てしない罪悪感と不安感が訪れ、身体から魂が離れるような感覚に襲われる。 「……はぁ、はぁ」 まるで離れた所からテレビで自分を見ているようだ。霧のようなモヤモヤに包まれて。 頭を抱えて不安に襲われているとある"幻聴"が聞こえてきた。 『君は大丈夫、大丈夫だから!』 必死にポジティブな言葉をぶつけてくるような。 そんな言葉に何の意味がある。 「大丈夫よ〜ほら、ガラガラ」 「……⁈」 "大丈夫"という幻聴と同じ言葉に驚くがどうやら一人の看護婦が子供をあやしに来たようだ。 おもちゃのガラガラ音を鳴らして見事に子供を泣き止ませた。 「キャッキャ!」 「………………………!!」 その光景に思わず見入ってしまう。 子供を泣き止ませた彼女はその母親や周りの人間にとって"英雄"のはずだから。 そして気付けば不安感は消えていた。 その代わり、新たな感情が。 「…………」 意味深に彼女を見つめる。 その目には複雑な感情が写っているようだった。 「どうしました?」 しばらく見入っていると流石に視線に気付いたのか声を掛けられる。 「いえ別に……」 慌てて視線を逸らすが見ていた事がバレた。 恥ずかしい事この上ない。 しかしその声色から別に自分に対して"子供を泣かせた野郎"などとは思っていない事が受け取れたので少し安心した。 が、恥ずかしいのと泣かせてしまった罪悪感は別だ。 「……はぁ」 看護婦がその場を去った後、彼は1人悩んだ。 子供と目が合った
Last Updated : 2025-11-13 Read more