私と旦那の幼馴染が、同じ時期に妊娠した。旦那は、幼馴染の評判を守るためだと言って、幼馴染のお腹の子が自分の子だと、周りに言いふらした。そして、私のお腹の子は……私が浮気をしてできた、父親のわからない子だと決めつけられてしまった。泣き崩れて問い詰める私に、彼はただ、冷たく言い放った。「菖蒲は、育ちのいいお嬢さんだから、世間の噂に押しつぶされてしまうだろう」その日、七年も愛してきた旦那の顔を、私はじっと見つめた。そして、もうこの人を愛するのはやめようと、心に決めた。……松尾竜也(まつお たつや)が三日後、岡田菖蒲(おかだ あやめ)と出産にそなえて海外へ行くと知り、私は義母である松尾和子(まつお かずこ)に電話をかけた。「お母さん、私、離婚したいんです」電話の向こうの和子はため息をひとつついて、「ごめんね……竜也が悪かったわ」とだけ言った。竜也が、私のお腹の子はよその男との子だ、なんて言いふらしたせいで、私たちは、この七年間でいちばんひどい喧嘩をした。なのに私が子供をおろそうとしてると知ったとたん、彼は私を家に閉じ込めた。妊婦健診に行くときでさえ、うしろには十人以上のボディガードがぞろぞろとついてくる。「これは俺たちの子供だ。産まないなんて許さない」と彼は言った。なんだ。自分の子供だってこと、ちゃんと分かってたんじゃない。それでも、私と子供の人生を壊すつもりなのね?本当に父親が誰かも分からないのは、菖蒲のお腹の子のほうなのに……私のお腹の子が、れっきとした彼の子供だって分かっているくせに……ふくらみはじめたお腹をそっと撫でながら、これが、最後のチャンスだと、私は覚悟した。お腹の子をおろすなんて、本当は考えたくもない。でも、この子が生まれてすぐに、謂われのない噂に苦しむのは耐えられない。私の手のひらのぬくもりが、伝わったのかもしれない。お腹が、ぽこっと小さく動いた。まるで、お腹の子と心が通じたみたい。私がつらいのを分かって、なぐさめてくれているみたい。途端に、涙がぶわっとあふれてきた。お腹から手を離し、私は顔を覆ってわんわん泣いた。「ごめんね、赤ちゃん……ひどいことを考えるママを、許してね」ようやく気持ちが落ち着いた、その時、部屋のドアが、外から開けられた
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