私は清水芽衣(きよみず めい)、ウェディングドレスのデザイナーだ。ブライダルクイーンコンテストの決勝を翌日に控えたその日、私のきわどいプライベート写真が突然ネットに出回っていた。「愛を汚した女だ」「もうウェディングドレスに触る資格なんてない」と、罵倒が一気に押し寄せ、私はコンテストの出場資格を取り消された。あの写真を持っていたのは、恋人の神谷颯斗(かみや はやと)だけだ。取り乱しながら彼に真相を確かめようと向かったが、扉の前で、彼と、その双子の弟――神谷陽翔(かみや はると)の声が聞こえてくる。「やっぱりあの写真を流したら、芽衣は一気に炎上したな。ファッション業界からも外されるだろ。これで橘綾香(たちばな あやか)とブライダルクイーンを争うことは二度とできないだろう。ってことは、もうあんたのふりしてあいつを抱きに行けないってことか?あいつさ、見た目は清純なのに妙に色っぽくて、案外悪くなかったぜ」「じゃあ、今のうちに楽しんでおけ。綾香がブライダルクイーンの称号を取ったら、芽衣とはきっぱり切って、本気で綾香を追いかけるつもりだ」スマホの画面には罵詈雑言が並び、鋭い刃のように心を切り裂いた。ドアの向こうでは、颯斗と陽翔がグラスを合わせて祝杯をあげている。「颯斗、マジで今回のやり方は完璧だよな。ウェディングドレスのデザイナーが私生活だらしないってバレたら、芽衣は一生ドレスなんか触れない」「お前のおかげでもあるけどな。毎日あれこれ体勢を取らせてさ、しかも顔がはっきり写るように撮って」ふたりは声を立てて笑った。私は思わず口を押さえ、爪が掌の柔らかいところに深く食い込む。鋭い痛みが、これが夢なんかじゃないと告げている。私がすべてを捧げるつもりでいたあの恋は、残酷な茶番にすぎなかった。あの数々の夜の甘さなんて全部、甘い殻で覆った毒だった。よろめきながら外へ出ると、涙があふれて止まらず、目に映るものが全部ぼやけて歪んだ。両親の結婚が破綻した影を引きずって、私は恋というものから距離を置いて生きてきた。その代わり、情熱のすべてをドレスのデザインに注ぎ、そこに感情を込めようとしていた。そんな私の前に、半年前、颯斗が現れた。端正な顔立ちに、財力もあって、優しさも気配りもあって、それでいて冷静さを失わない人。そばにいる異性とい
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