ちょうどそのとき、隼人とつきよが並んでダイニングホールに入ってきた。ふたりとも、妙に楽しそうに喋っていた。「えみさん!お久しぶりです。隼人さんがね、『えみさんに呼ばれた客だから、迎えに行かなくちゃ』って、わざわざ車出してくれたんですよ。そんなことで、怒ったりしませんよね?だって、えみさんって、いつもやさしいですもんね?」口では申し訳なさそうに言っているくせに、その視線には、隠そうともしない勝ち誇りがにじんでいた。席に着くと、つきよはわざとらしく義母を押しのけ、隼人の隣へすべり込む。そのあからさまさに、親戚たちは顔を見合わせ、空気が一瞬きしむほど固まった。隼人ですら、露骨に気まずそうだ。けれど私が何も言わないので、まあいいかと、みんなはその場を流してしまった。ただひとり、兄だけが険しい顔をしていた。私は兄にそっと目で合図を送り、湯呑みを手にして立ち上がった。「お酒は飲めませんから、お茶で失礼いたします。それと……せっかくのめでたい時期に、こうして皆さんにも集まっていただいたので、いろいろ気持ちを伝えさせて頂きたいと思います一緒にかんぱいを三回しましょう。一杯目は……つきよさんへ。新居の件、本当にお世話になりました。あなたが走り回ってくれたおかげで、私と隼人の結婚生活も順調に始められました」テーブルの下で隼人の脚と絡ませていたつきよは、自分の名前が出た瞬間、びくりと跳ねた。勢いよく立ち上がった拍子に足を取られ、危うく前につんのめる。義母の顔が、みるみる沈んでいく。嫁が、義母である彼女を差し置いて、まず他人の女に杯を向けるなんて——この場では、考えられないほどの非常識だ。けれど私は気にも留めず、ふたたび杯を掲げた。「二杯目は……私の夫、隼人へ。妊娠中の私が大変だろうって、つきよさんを連れ回して発散してたみたいですので……本当に——思いやりのある、いい夫です」「へぇっ!?」驚きの声が、場のあちこちで同時に上がった。隼人の顔は、赤いどころか、どす黒い紫へと変わっていた。血管が浮き上がり、目は大きく見開かれ、「信じられない」と口だけがかすかに震えている。私に殴りかかろうとしたその腕を、兄が無言で押さえ込んだ。「慌てないで。まだ三杯目がありますから」その場に立っ
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