五年前、夫の一時の身勝手な行動で、私は息子を失いかけるとともに、視力も失いかけた。五年後、思いがけない出来事がきっかけで、失明していた目が奇跡的に回復した。嬉しい知らせを夫と息子に伝えようと、弾むような胸を躍らせて家に駆け込んだのに、目に飛び込んできたのは、夫が息子のピアノの先生を抱き寄せる姿だった。夫はピアノの先生の頬を撫でながら言った。「やはり君がいい。もうあの目の不自由な者への気遣いという偽りの生活を送るのは、うんざりだ。この五年間は、俺にとって牢獄のようなものだ」息子もピアノの先生の胸に飛び込み、こう言った。「白野先生がママだったらよかったのにな。そうしたら、目の不自由なママのことで笑われることもなかったのに」玄関に立った私は、頭のてっぺんから足の先まで、一瞬で凍りつくような冷たさに襲われた。スマホを取り出し、仲睦まじい「親子三人」の姿を、こっそりと写真に収めた。そして、一つの番号に電話をかけた。「先生、以前おっしゃっていたフランスへの研修の件、引き受けさせていただきます」……部屋の中から聞こえてくる会話を耳にしながら、私の心はまるで刃物で少しずつ切り裂かれていくようだ。ほんの一分前まで、今日はこの五年間で一番幸せな日になるはずだった。なぜなら、私は視力を取り戻したのだから。闇しかなかった世界から、再び光を取り戻した。どんな言葉にしても、この胸に広がる感動と高鳴りには収まりきらない。――それは、五年ぶりに見る白洲隆介(しらす りゅうすけ)が白野茜(しらの あかね)を抱きしめているのを目にするまでは。我が家のソファで、彼らはまるで誰もいないかのようにキスを交わした。すぐそばでテレビを見ている息子の存在は、完全に無視している。この瞬間、盲目だった頃のほうがましだと思った。隆介と息子が、まさかこんな軽蔑した口調で私のことを語る日が来るなんて、夢にも思わなかった。隆介と茜がますます親密になっていく様子に、私は思わず飛び込んで二人の下劣な行為を止めようとした。だがその時、息子が突然大きな声で「パパ、水が飲みたい!」と叫び、二人の次の動きを遮った。隆介はしぶしぶ立ち上がり、息子に水を注いだ。息子は一口啜ると、ごく自然に茜の胸に飛び込んだ。「先生、もう一週間も来てないんだよ。ね
Baca selengkapnya