予約していた心理カウンセラーは、なんと大学時代の後輩、浅倉光(あさくら ひかる)だった。かつて体育祭の競争で私が足を怪我したとき、飛び出してきて私を保健室まで背負ってくれたのが彼だった。だから、少し印象に残っていた。光は私の遭遇した出来事を聞いて、非常に憤り、そして残念がった。大学時代の私は有名人というほどではなかったが、そこそこ知られていて、とても明るく活発だったからだ。「先輩、一緒に頑張りましょう。必ず良くなりますよ」挨拶の後、私と光は奥の部屋に入り、今日の心理療法を始めた。治療が終わると、私の状態はずいぶん良くなっていたので、ついでに光に食事をご馳走することにした。光は人当たりが良く、私は次第に心の壁を下ろし、会話が弾んだ。心の中で葛藤していた多くのことも、解消されていった。夕食後、入り口で光が車を回してくるのを待っていると、不意に誰かに手首を強く掴まれた。蒼介だった。酒臭いが、目は妙に澄んで冷たく、私を脇へ引っ張った。「真奈、あの男は誰だ?」彼を見た瞬間、こめかみがズキズキと痛み出した。彼が掴む力は強く、振りほどけない。「誰だってあなたに関係ないでしょ?」蒼介はさらに強く私を握りしめた。彼の視線は私を捉えて離さず、言葉には哀願が混じっていた。「真奈、俺はずっと自分の感情とお前の感情を認めるのが怖くて直面してこなかった。でも今ははっきりした。俺はお前に対して、ただの兄妹以上の感情を持っている。愛してるんだ。過去のことは忘れて、やり直そう、な?」蒼介のそんな姿を見ても、ときめくどころか、滑稽にしか思えなかった。「あいにくだけど、今の私はあなたに対して、兄妹の情さえ持っていないわ。これからは私の生活に関わらないで」彼は手を離すどころか、絶望の淵にいるかのような狂気を滲ませた。「いやだ、ありえない。真奈、お前はまだ俺を愛しているはずだ。ただ俺に怒っているだけだろ、そうだろ?」私はこれ以上蒼介と話すのも億劫になり、もがいて彼の手をこじ開けようとしたが、それが完全に蒼介を怒らせた。彼は目を血走らせ、手を離すと、長い腕を回して私を懐に閉じ込めようとした。私は両手で必死に彼の肩を押し返したが、彼の酒の匂いが鼻先にかかった。「如月蒼介、最低!」私が持ちこたえられなくなりそうにな
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