All Chapters of 初恋に溺れた夫、義母に追い出される: Chapter 11

11 Chapters

第11話

「あの女と一緒に行くというのなら、私は慎也に一銭たりとも財産は残さない」お義母さんはそう言い切った。その言葉を聞いた慎也はしばらく黙り込んでいた、ふと見ると彼の頬を一筋の涙が伝っていた。その涙が後悔なのかどうかは私にはわからなかった。綾香は何度も慎也に会いにきたが、慎也は一切会おうとせず、彼女は外で泣き叫び取り乱した。しかし慎也は部屋でただ呆然と座り込み、何を考えているのかわからない表情をしていた。ある日再び綾香がやってきて、慎也は会いに行った。二人が何を話したのかは定かではないが、戻ってきた慎也はまるで別人のようだった。「自分が間違っていたのはわかってる、でもここまできたらもう取り返しがつかない」と彼は言った。「財産はすべて結衣に残す、自分は何も持たずに出ていく」と。そして彼は有言実行した。離婚届受理証明書を受け取った時、私はどこか現実味がなくてぼんやりしてしまった。「俺はいい父親じゃなかったし、いい息子でもなかった。もし時間を巻き戻せるなら、こんな間違いは絶対に起こさない」そう言った慎也の言葉が今も耳に残っている。その時の私はその言葉を深く受け止めてはいなかった。ただ一晩で急に大人になったんだなと思っただけだった。しかし翌日私は警察からの電話を受けた。慎也と綾香が交通事故を起こしたと、調べの結果、それは事故ではなく心中だった。そこでようやく私は昨日の彼の言葉が何を意味していたのかを理解した。お義父さんの死が彼をずっと苦しめていたのだろう、その痛みから逃れるためにあんな究極の選択をしてしまったのかもしれない。お義母さんはその知らせを聞くとまたしても泣き崩れ気を失った。目を覚ました時にはお義母さんの病状はさらに悪化していた。子供達の世話もあって手がまわらず、私はお義母さんのためにヘルパーを雇うことにした。お義母さんはすでに家を子供名義にしてくれており、離婚の際には慎也が全ての財産を私に譲ってくれていた。お義母さんには他に頼れる家族もいない。だからこそ彼女の面倒を見るのは私の務めだと思った。慎也と出会い、結婚し、子供を産んだこの二、三年、私はあまりにも多くのことを経験した。これからは母を呼び寄せ、子供達を一緒に育ててもらうつもりだ。この先の人生はまだ長い。私は二人の子供
Read more
PREV
12
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status