5年の刑務所暮らしを終えて、元カレ・松井純一(まつい じゅんいち)に再会したのは墓地だった。ボロボロの体を引きずりながら、私はいくつか候補のお墓を選んでいた。ちょうどその時、純一は婚約者を連れて、彼の父親のお墓参りに来ていた。「紬、5年も経つのに、まだこんな風に偶然を装って俺に会おうとするのか?残念だけど、俺はもうお前のことなんて好きじゃない」私は唖然とした。でも、すれ違おうとした瞬間、純一に強く手首を掴まれた。彼の薄い唇から、氷のように冷たい声がこぼれた。「お前にできるのは、そんな安っぽい駆け引きくらいだな」私は、呆然と顔を上げた。爪が食い込むほど手を握りしめ、なんとか感情を抑えた。「安心して。もうあなたに付きまとうつもりはないし、二度とあなたの目の前に現れたりしないから」刑務所に五年も入っているうちに、いつの間にか、とげとげしさは消えていた。私はその場から立ち去ろうとした。でも、純一は再び口を開いた。「親父の墓参りに来たんだね」私は思わず足が止まり、口の中にじわりと血の味が広がった。純一は笑った。「やっぱりな。今さら親父に謝りに来るなんて遅すぎる。あの時、一体何を考えていたんだ?親父の納骨の日に、どうしてお前は来なかった?」彼は怒りをあらわにして言った。「お前が今さら親父の前に顔を出すなんて、ただ吐き気がするだけだ」彼がまだ、私が彼の父親を殺したと恨んでいるのは分かっていた。でも、本当のことなんて言えるはずもなかった。私は口に広がる血の味を飲み込み、静かな声で言った。「私はもう、償いを済ませたでしょう?」純一が一歩、前に出ようとする。原田絢香(はらだ あやか)が慌てて彼の服の裾を掴んだ。「純一さん、もう時間だから、先にお父さんのところへ行きましょう」彼女は純一の手を引いて、その場を去ろうとした。そして去り際に、私を慰めることも忘れなかった。「紬さん、純一さんはずっとこうなのよ。もう慣れっこだから、気にしないでね」純一は聞く耳を持たず、絢香の手を振り払った。「紬、お前と出会わなければよかった」純一の言葉と同時に、風は吹き、巻き上げられた落ち葉が、私の視界をかすめた。以前は、決してそんなこと言わなかったのに。純一と初めて会った時。
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