秘書からの連絡があった時、海男は書斎で、携帯の画面に浮かぶ【未読】を、ただ茫然と見つめていた。「社長。確認が取れました。日影様は、本日午後の便で、海外へ行かれました。現時点で、それ以上の具体的な行き先は掴めておりません」海外……?彼女は、国外へ?あんなに、あっさりと?一言の別れもなく。海男は、携帯を握る手に思わず力が入り、指の関節が白く変色した。彼は、日影が「去る」とは思っていなかった。この街から、彼の生活から、完全に消え去るとは。離婚したとしても、せめて同じ空の下、いつか顔を合わせる機会もあるだろう。ごく普通の旧知として、時折消息を交わすこともできるだろう。彼女がここまで徹底的に、彼の世界から身を引くとは。胸の奥が、突然、何か大切なものがごそりと抉り取られたように、空っぽになった。息を吸うたびに、軽い痺れるような痛みが走る。彼は無意識に窓辺に歩み寄り、外の闇に沈んだ夜空を見つめた。すると、脳裏に日影の姿が、次から次へと、抑えようもなく浮かび上がってきた。雪の中、必死に指輪を差し出す日影。深夜のオフィスで、彼の隣で資料を整理する日影。そして最後に、調停室で、余計な一瞥もくれずに署名する日影の、あまりにも平静な横顔……彼がかつて無視し、軽んじていた数々の瞬間が、今、鮮烈すぎるほどに蘇り、胸の中をぎっしりと埋め尽くす。言いようのない焦燥感が、喉元までせり上がってきた。彼は首を横に振り、その感情を振り払おうとした。――きっと……きっと、彼女のあまりにも突然の「行方不明」が、この七年間で染みついた習慣を乱し、この得体の知れない違和感を生み出しているのだ。そうに違いない。海男は寝室に戻った。ベッドの中で、安らかな寝顔を見せる祢々の横顔を、そっと見つめた。心の中で、自分に言い聞かせた。――海男、覚えておけ。祢々こそが、お前の人生を共に歩む人だ。すぐに結婚式を挙げ、新しい生活が始まる。日影は、ただの家同士の政略結婚に過ぎない。もう、彼女にお前の心を乱されるべきではない。しかし、その日を境に、海男は頻繁にぼんやりとするようになった。食事をしていても、ふと、日影がかつて、彼の好みを何時間もかけて研究し、手間ひまかけて作ってくれた料理の味を思い出した。夜、改装されたばかりの別荘に戻っても、どこか物足りない。
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