「霧島社長、あなたほど寛大な人なら、きっと僕と美桜が愛し合うことを許してくれますよね」スマホに届いたのは、雨宮美桜(あまみや みお)のマネージャー、成瀬亮司(なるせ りょうじ)からのメッセージだ。その一言以外は、すべて動画と写真だった。エッフェル塔の下での情熱的な抱擁。ルーヴル美術館の絵画の前で寄り添う姿。さらにはモルディブのビーチでの一糸まとわぬ姿。あまつさえ、大きなガラス窓の前で快楽に耽る写真まであった。この瞬間、俺・霧島海人(きりしま かいと)はようやく完全に理解した。美桜はもう、俺が愛したあの美桜ではないのだと。俺たちは無名時代に出会った。彼女の女優業のために、俺は朝から晩まで働き詰め、稼いだ金はすべて彼女のレッスンや売り込みの活動費に注ぎ込んだ。この七年間、帰りの電車で寝落ちするほど働き、接待で胃から血が出るまで飲み続けた。そうしてようやく、一つの会社を興したのだ。そして美桜もついに全国にその名を轟かせ、誰もが憧れるトップ女優へと上り詰めた。かつて二人で夢見ていたそれらのことを、彼女は結局、あのマネージャーの男と叶えることを選んだのだ。俺はもう迷わなかった。離婚協議書を作成した。まさに署名しようとしたその時、唐突な声が耳元で響いた。「海人、だめ。私に三回チャンスをくれるって約束したでしょ?」その懐かしい声に、俺は雷に打たれたように全身が震えた。振り返ると、十九歳の美桜が瑞々しい姿でそこに立っていた。その体は幻のように透けている。身に纏っているのは、俺がバイトを掛け持ちして買った、6千円もしない安物のワンピースだ。そのワンピースを着た彼女は、俺の記憶の中で最も美しい姿だった。俺は十九歳の美桜を呆然と見つめ、不意に笑みをこぼした。「ああ、三回のチャンスだったな」その時、俺のスマホが再び鳴った。「海人!何度言ったらわかるのよ!亮司をいじめないで!彼はただのマネージャーなのよ。毎日私に付き添ってあちこち飛び回って、すごく疲れてるんだから!これ以上騒ぐなら、海に行く約束もナシにするから!」通話ボタンを押し、何気なくスピーカーに切り替えると、美桜の怒声が部屋中に響き渡った。俺は十九歳の美桜を振り返り、穏やかな笑みを向けた。対照的に、彼女の顔には怒りの色が浮かんでいた。
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