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第8話

Author: 睦月 レイ
それでも俺は、必死に耐え抜いた。

一秒でも長く時間を稼げば、助かる確率は上がるはずだ。

ナイフが何度も俺の左腕を貫く。

もう我慢できず、喉から苦痛の叫びが漏れ出した。

亮司は何度も命乞いをしろと煽ってくる。

だが、こんな奴に頭など下げるものか。

傷口は増える一方で、左腕の感覚は完全に失われた。

意識も徐々に遠のいていく。

これ以上の痛みが待っていると思うと、心は死んだように冷え切っていく。

だが意外なことに、亮司は手にしたナイフを放り投げた。

「つまらねえ。やっぱり、さっさと殺したほうが合理的だな」

その一言で、心臓が喉から飛び出しそうになった。

亮司はついに拷問に飽きたのだ。

後ろに控えていた屈強な男たちも、安堵のため息をつく。

「お前ら、やれ」

亮司はパンパンと手を叩き、ハンカチを取り出して手を拭った。

男たちが近づいてくる。懐から何かを取り出した。

俺はゆっくりと目を閉じた。死を受け入れるために。

だが目を閉じたその瞬間、窓ガラスが砕け散る音が響いた。

続いて激しい衝撃と白い光が同時に弾けた。

一瞬にして、俺の耳は何も聞こえなくなった。

再び目を開けると、美桜が武装した警察隊を引き連れて飛び込んでくるのが見えた。

あっという間に現場は制圧された。

美桜が俺のそばに駆け寄り、涙まみれで何かを叫んでいる。

だが、ズタズタになった自分の左腕を見て、俺の心に残った感情はたった一つだ。

美桜。俺はもうお前を愛していないだけじゃない。

お前を、憎んでいる。

次に目が覚めた時、俺は病院のベッドの上だった。

すぐに医師が来て検査をする。

「今のところ左腕の重傷以外、大きな問題はないでしょう。

ただ、この左腕が治ったとしても、以前のように力を入れるのは難しいかもしれません」

医師はそう報告し、静養するように言い残して部屋を出て行った。

入れ替わりに、部屋の外から美桜が慌ただしく入ってきた。

「海人、海人、気分はどう?ごめんね、ごめんね、本当にごめんね」

彼女は涙を流しながら、何度も何度も謝罪を繰り返す。

かつて彼女の謝る姿を見れば、愛おしさで胸が締め付けられたものだ。

だが今は、ただ吐き気がするだけだ。

「失せろ。二度と顔も見たくない」

俺は淡々と言い放ち、鬱陶しさのあまり顔を背けた。

「海人、そんな
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