創業百五十年の歴史を誇る老舗旅館【夕月園《ゆうづきえん》】インバウンドということもあり、国内だけでなく海外から来るお客様も多いことで有名なこの旅館には、毎年旅行のシーズンになると、観光客が毎日のようにこの旅館に泊まりにやってくる。客足は途絶えることもなく、毎日のように予約は埋まり常に満席状態になる。 本当に忙しい時期になると、予約はいつも三ヶ月から一年先になることも多いため、予約の取れない老舗旅館とも言われていた。 風情ある和室には畳部屋があり、そして部屋の一角には少し大きめの露天風呂がある。そこからの眺めは最高に気持ちが良くて、疲れた体や心を常に癒やしてくれると大人気だ。 旅館の近くには、縁結びの神様と言われる有名な神社もあり、そこで二人の縁を結ぶと、一生幸せになれるとカップルや夫婦にも話題のスポットもある。常に旅行サイトには口コミの高い評価も載っており、サイト以外でも旅行雑誌でも、夕月園は常に名を連ねていた。 何度も雑誌やテレビでも取材を受けていて、その名は京都では知らない人はいないほどであった。しかしその夕月園は、次第に経営難に陥り、客足は減り予約数も徐々に減っていってしまったのだった。その原因になったのは、夕月園から車で十分くらいの所に建設された、新しいリゾートホテル【カナリア】であった。京都の雰囲気には似つかわしくない大型のリゾートホテルの中には、有名なホテルのシェフが作る高級なバイキングレストランやサウナなども完備しており、ホテルの屋上には大きな広々としたプールも完備してある。 京の街には決して相応しいとは言えないその大胆な戦略は、日本だけでなくたちまち海外にまで話題を呼ぶこととなった。そしてカナリアは、その大胆な戦略のおかげもあり若いカップルだけでなく、家族連れにも人気のホテルとなった。今ではカナリアは、京都だけでなく名古屋や沖縄、博多などにも建設しており、高城ホールディングスの社長、高城明人《たかじょうあきと》は世界的にも有名な人となっていた。その息子で高城ホールディングスの御曹司である高城藍《あおい》もまた、将来高城ホールディングスを担うであろうお人だ。そしてそのカナリアが新たな戦略に出たのは、高城ホールディングスが急成長を遂げたすぐ後のことだった。 京都に最初のリゾートホテルを建設し
Terakhir Diperbarui : 2025-12-22 Baca selengkapnya