ログイン歴史を誇る老舗旅館【夕月園】の若女将として働く主人公の透子(とうこ)。 そんな夕月園の資金繰りが難しくなり、旅館があの有名なリゾートホテル【カナリア】を経営する高城ホールディングスによって買収されることが決まったことを女将を通して知った透子は、夕月園が買収された後、旅館を辞めて離れた場所へと引っ越し、カフェで働きながら暮らしていた。 そんなある日、透子の前に高城ホールディングスの御曹司である高城藍(あおい)が現れたことで、透子の人生の歯車が大きくまわり始める。 透子は藍に呼び出され公私ともにパートナーにならないかと誘われるが、お酒の勢いもあり一夜を共に過ごし、その後妊娠していることが発覚して……。
もっと見る「今度は凛花が行きたがってた遊園地にでも連れてってあげないとね」 凛花ももう三歳になったし、家族で遊園地も悪くない。 きっと楽しいだろうし。「陽人、よく寝てる」陽人の寝顔を見ながら幸せな気持ちに浸っていると、三人がお風呂から出てきた。「ママー!」凛花が元気にわたしの元へと走ってくる。「凛花、お風呂出たの?」「うんっ!」「パパとお兄ちゃんと遊んで楽しかった?」凛花はパパと結人と遊んでたのがよっぽど楽しかったのか、ニコニコと笑っていた。「うん!たのしかったっ!」「そっか。良かったね」凛花の髪の毛をタオルで拭きながら「凛花、髪の毛乾かすよー」と話しかける。「はーい」凛花は女の子だから、わたしにとってはとても嬉しいんだ。 たまに凛花とお揃いのコーデをしたり、お揃いの髪型をしたりするけど、とてもかわいい。親バカと言われてもいい。とにかく、うちの子どもたちはかわいい!世界一で一番、大切な宝物。世界一で一番、幸せな家族を持ったわたしは、幸せ者だ。凛花の髪の毛を乾かしていると、藍と結人もリビングへと歩いて来る。「透子、風呂出たぞ」「じゃあ結人の髪の毛乾かしてくれる?」藍にそう言ったら、藍は自慢気に「言われなくてもそのつもりだ」と言葉を返してくる。「ほら結人、髪の毛乾かすからこっちに来い」しかし結人はおもちゃで遊びたいみたいで「えーやだっ!」と駄々をこね始める。「結人、すぐ終わるから」「ええー」駄々をこねる結人を捕まえて抱きしめる藍に、結人は「パパー苦しいよー!」と逃げようとしている。「捕まえたぞ!乾かすまで逃さないからな」「えっ、やだー!」「ほら結人、言う事聞かないとママのご飯食べられないぞ」「やだっ!ごはん食べたいっ!」結人は観念したのか、藍に大人しくドライヤーをされていた。「ほら、終わったぞ。もういいぞ」「はーい!」結人はドライヤーが終わると、わたしのところへ歩いてくる。「ママー」「ん? どうしたの?結人」結人はわたしに「ジュースのみたい!」とニコニコと笑いかける。「冷蔵庫にリンゴジュースがあるよ」「リンゴジュース? やった!」「結人、凛花にもリンゴジュース飲ませてあげてね」「はーい!」冷蔵庫からリンゴジュースを取り出すと、結人に二つ手渡した。「藍、お風呂ありがとう」「ああ」藍はわたしに「
そしてママと呼んでくれた次の言葉はと言うと……。「パパ」ではなく「バナナ」であった。 バナナとちゃんと言えるわけではないが、バナナのことを「ナナナ」とかわいい発音をしていた。けどそれもまた、凛花の可愛いところだ。藍的には、パパも呼んでもらえなくて残念だったそうだけど。今ではすっかり「パパ」と呼んでもらっているから、ご機嫌な様子の藍であった。結人も凛花も最初の言葉は「ママ」だったので、陽人には必ず一番最初に「パパ」と呼んでもらうのだと、今から気合十分でいるようだ。「さ。ねんねしようね、陽人」眠そうにウトウトする陽人をベッドで寝かしつけ、わたしはお昼ご飯の用意を始めた。やはり三人目にもなると、子育てにも余裕が生まれている。一人目の時は何がなんだか分からないまま子育てが始まっていったけど、一人目の時の失敗などを含めるとニ人目の時は、学んだことを生かしながら子育てが出来るとわかった。三人目ともなると、かなり子育ての仕方に慣れが出てきたので、一人目や二人目よりも余裕が持てている。もちろん気持ちにも余裕が出ているので、戸惑うことも迷うことも少なくなった気がする。これはわたしたちにとっても、親としての成長だろう。 そして相変わらず藍は、わたしたちを毎日溺愛しているが、その溺愛っぷりは高城明人を驚かせるくらいのものであった。しかし藍のその溺愛っぷりは、想像以上かもしれない。わたしにも子供たちにも毎日「愛してる」と言ってくれるし、わたしにも愛情をたくさんくれる。✱ ✱ ✱みんなの分のお昼ご飯を作っている時、藍と結人と凛花が帰ってきた。「ただいま〜」「ママ、ただいま〜」「ママ〜、ただいまぁ」「おかえりなさーい。……って、結人泥だらけじゃないの!?どうしたの!?」公園に遊びに行って帰ってきた結人は、服が泥だらけであった。「パパとおいかけっこしてたら、ころんじゃったぁ。ね〜パパ?」「ははは。そうだな」 凛花まで、服が泥だらけになっている。「ちょっと、凛花まで泥だらけにして来たのね」「たのしかったよ、おいかけっこ!」凛花は藍の方に視線を向けながら言っていた。……って、藍もじゃない。アンタは子供か!「もう……。結人も凛花もパパも、すぐにお風呂入ってきなさい。服は洗濯機の中に入れてね!」「はぁーい、ママ」「ママ〜、はぁーい」「よし行
藍のパパぶりは、相変わらずすごい。でも、子供たちにとっても自慢のパパであることは、間違いない。わたしにとっても、自慢の夫であり、自慢のパパだから。「それと……今回はちょっと悪阻がやばそうなのよね」「そうなのか?」「うん」今回は食べづわりではなく、ちゃんとした悪阻のようだ。……結構、気持ち悪い。 前回は食べづわりで、食べてないと気持ち悪くなることが多かったから、今回の悪阻は気持ち悪くて食べられないかもしれないわね……。「大丈夫だ。俺がいるし、いつでも俺を頼れよ」「ありがとう、藍」今回も藍は頼りになりそうだと感じた。「早速なんだけど……お米を炊いてくれない?」「お安い御用ですよ、奥様」「頼りになります、旦那様」そんな日々はいつの間にか過ぎ去っていき、無事に第二子を出産した。 産まれた子は女の子だった。藍も初めての女の子にとても喜んでいたし、わたし自身も女の子が産まれてとても嬉しかった。第二子となる我が子には、凛花《りんか》と名付けた。 凛とした素敵な人になって欲しいという想いを込めている。結人もいつの間にか一歳を過ぎて、歩けるようになったり、言葉も少しずつ話せるようになってきたりと変化もしてきた。親としては、結人の成長もとても嬉しく思っている。 きっと藍は、結人のことを立派な大人に育ててくれるだろう。「結人、ほら。結人の妹だよ」結人には、藍みたいにちゃんと家族を大切にしてくれるような人になってほしいな。 妹のことを大切にしてほしい。「凛花、かわいいね」「ああ、透子に似て美人だな」こうして四人家族となったわたしたちは、さらに明るく楽しい生活になるだろう。藍の両親に凛花が産まれたことを報告したけど、お義父さんは女の子が産まれたことで、今まで以上に甘やかしてくる気がする。「これからもよろしく、藍」「おう。俺に任せておけよ」藍は女の子が産まれたことで、さらに子どもたちにデレデレになっていた。 あんな俺様な雰囲気の藍からは、想像出来ないくらいだった。でも藍は、立派な父親だ。子どもたちにとって、自慢のパパであることに間違いない。「凛花はきっと、透子に似て将来はモテそうだな」「モテるかもね。 美人だもの、凛花は」そういえばわたしも、若女将をしていた頃は何人かのお客様にナンパされたな。なんならどこかの企業のお偉いさんたちの会
藍ってば、わたしとの子作りが出来るようになったかは嬉しいのかしらね……。「透子は、二人目欲しくないのか?」「もちろん、わたしだって二人目は欲しいよ? でもこればかりは、天からの授かりものだしね。出来たらいいなって感じかな」藍は「そうだな。 まあ、焦ることでもないもんな」とわたしの胸に手を伸ばしてくる。「ん……ちょっと……さっき、したじゃない」「いいだろ? 今日は透子のこと、たくさん感じたいんだよ」身体を藍の方に向かされ、啄むようにキスをされる。藍とのキスは、再びわたしの理性を奪ってくる。「透子、そんな目で見つめるとまた抱くぞ」 「ん……藍の方が、抱きたいくせに」「バレた?」「バレバレよ」藍は温泉から出ると、わたしの身体をバスタオルで拭いていく。 「ちょっと、気が早いって……」藍の身体をバスタオルで拭いていくと、藍は再びわたしの身体をベッドへと押し倒す。「透子……かわいい。俺だけの透子」「藍だって……わたしのものなんだからね」「わかってる」藍と何度もキスをしながら、わたしは藍の体温を肌で感じた。 「あっ……あお、い……んっ」「透子っ……」欲情した藍がわたしの中を動くたびに、わたしは幸せに満ちていく。 「はぁっ、あっ……あ、あんっ」どうしようもないくらい、わたしたちは何度も身体を繋ぎ合わせる。「透子、イキそう?」「ん……イッちゃう」「イッていいよ、透子。我慢するな」二人の身体の重みで、激しくベッドが揺れる。ベッドがギシギシと音を立てるたびに、わたしたちの行為のは激しくなる。「いやっ……っ、あぁっ」わたしは何度も藍の名前を呼んだ。 藍の背中にしがみついては、何度も藍との行為に溺れていく。「藍、また、イッちゃう……」「ん、イッていいから」藍とのセックスに、こんなに理性を奪われてしまうなんて……わたしの身体は正直だから、藍を素直に受け入れている。「透子……俺もイッてもいいか」「ん……」藍とこうして身体を重ね合わせる時のわたしは、わたしじゃないくらい壊れている。だけど藍は、そんなわたしのことをかわいいと言ってくれる。 「あっあっ……いやっ、ああっ」藍がわたしの中にその欲望をぶつけた時、藍は「透子……」と名前を呼んだ。「藍、大丈夫……?」ベッドに横になる藍に声を掛けると、藍は「大丈夫だ。透子は大丈夫
藍は自慢げに「だって俺、ようやく透子と両想いになった訳だし?」と言ってきた。「……な、何を言ってんの、もうっ」「俺ば事実゙を述べただけだ」からかってるのか、そうじゃないのか分からないんだけど……。「透子、帰ったらまた抱きしめてやるからな」「はあ?いいって、別に……」「俺が抱きしめたいんだよ」そう言われると、なんか断れない……。ていうか、断りにくいよね……。夫である以上、断るのもなんか違う気がする。「ほら、もう行く時間でしょ?」「ああ。じゃあ行ってくる」「うん。行ってらっしゃい」藍が仕事に出掛けるのを見送ったわたしは、食器の片付けをした。そして藍が忘れ物をしているこ
そう言ってわたしの涙を、親指で優しく拭ってくれる藍。そしてわたしの髪の毛を優しく撫でながら、藍は「透子に泣き顔なんて、似合わないよ」と言ってくれた。そんな藍の微笑む姿に、わたしは「ありがとう……藍」と返事をした。「透子は俺の妻になるのに相応しい人だよ。 俺の妻になれるのは、透子しかいないんだよ」「……いい妻になれないかもしれないよ、わたし」そう言葉を返すと、藍は「いい妻になんてならなくていい。……言っただろ?透子は透子のまま、いてくれればいいって」と言葉を返してきた。「俺が透子のことを幸せにする。透子が毎日幸せで死にそうになるくらい、幸せにしてやるって言っただろ?」藍の力強さの
「……可愛いですね、赤ちゃん」こんなに小さくても、ちゃんと生きてることが分かる。……不思議だ。こんなに小さくても、赤ちゃんがちゃんと育っているということを思うだけで嬉しいのは、わたしが母親だからだろうな……。「可愛いでしょ?そう思えるようになってきたってことは、あなたも母親だっていう自覚が出てきたってことよ」「……はい。赤ちゃんって、偉大ですね」赤ちゃんがこうして生きているだけで、不思議とホッとする。「高城さん、体重は少しずつキープ出来てるみたいだから、そのままキープ出来るといいわね」「分かりました」「もし少しでも体調に異変があったら、連絡してね」「はい」いずれにしろ、食
「え?……なんだよ、急に」藍の表情が少しだけ曇ったのを、わたしは見逃さなかった。「……わたし、知ってるんだよ。高城社長がわたしのこと、毛嫌いしてたってこと」わたしは元々関東の田舎の出身の人間だ。京都に来たのも若女将として働くためだけだ。関東の田舎の出身のわたしは、京都弁なんて話すことも出来ない。だから今までも、お客様に対しても標準語で話すことも多かった。少しだけ京都弁も話せるけど、わたしには合わない。「関東の田舎の出身のくせに、京都で若女将をやってるなんて、信じられないって……バカにしてたことも、知ってる」「……知ってたのか」「知ってたよ。……結論から言えば、わたしは高城家
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