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幸せ色の恋~想いよ、永遠に~ のすべてのチャプター: チャプター 21 - チャプター 30

109 チャプター

第21話

「おまえら!! 見て……んがっ…」見てんじゃねー。そう言ってしまう前に、私は慌てて先輩の口を両手でふさぐ。先輩は、モゴモゴと声にならない声をあげている。私の手から逃れた先輩は、眉間にしわを寄せて私を見下ろした。「何してやがる」「あ、いや、あの…」「おまえの為にしてやったのに」「あ、いや。 私は別に……」ゴニョゴニョと口ごもると、『別に何だよ』と、さらに絡んできた。「そんな事より、今からどこか行くんですよね?付き合いますよ」状況が悪化しないうちにあからさまに話題を変え、先輩の腕を引いた。もちろん。周りの視線を避けるように、先輩の長身に隠れながら。2人で肩を並べてやって来たのは、この前のファミレスだ。先輩いわく、ここは昔から3人のたまり場だったらしい。『金のない俺らが、唯一長時間居座れる場所』と、ちょっと可愛い事を言っていた。「ところで、話しって?」ここに来る途中、先輩は何やら真剣な表情で、私に話があると言っていた。早速本題に入ると、先輩は『ああ……』と一拍置いて話し出した。「レオの、事なんだけど」私は、レオくんの?と、言葉をそのまま返した。「あいつ、種目何にするって?」種目と言われて、一瞬の何のことだかわからなかった。私が眉間にしわを寄せていると「クラスマッチだよ。そろそろ決める時期だろ」先輩がコーヒーカップに口をつけながら言った。「レオくんは、ソフトだったと思います」「はっ? ソフト?」少しコーヒーを吹きだす先輩。「あいつが、ソフト?」「ああ、でも、レオくんの意思じゃないですよ。レオくん、HRの間ずっと寝てたから。 あまりもののソフトに、自然と名前が」私が苦笑しながら言うと、先輩は大きなため息をついた。「ったく、あいつは……」椅子の背もたれに全体重を預ける。しばらくテーブルに指を打ちつけていた先輩は、突然私に視線を向けてきた。「おまえは?」
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第22話

「わ、私ですか?」コクンと、先輩が頷く。「私は、日和とバレーですけど」「出来んの?」「たぶん……?」曖昧に疑問系で答えた私に、先輩が噴き出した。「そこ疑問系かよ」私も自分で答えておきながら、おかしくなる。2人でクスクスと笑いあう。すると、先輩はいきなり神妙な面持ちになり、私の目を見てきた。「あいつの事、頼む」オレンジジュースのグラスに口をつけた私だけど。先輩の静かな声を聞いて、そのままグラスをテーブルに置いた。「あいつ、ちょっと色々あってさ、いつもあんな感じなんだ。無口なうえに無表情だから、全てにおいて損してるというか。人生、楽しんでねーというか」先輩はそこで言葉を区切ると、テーブルに両腕をついた。先輩の真剣な瞳が、私をとらえる。「おまえと知り合ったのも何かの縁だし、あいつの事、見てて欲しいんだ。クラスで一人にならないようにさ」そう言うと、先輩は優しくほほ笑んだ。私も『はい』とほほ笑みを返して、もう一度オレンジジュースのグラスに口をつける。レオくんの事を心配する先輩は、まるで父親のようで。そのほほ笑みに、心が温かくなった。『あいつ、ちょっと色々あって』私がレオくんを変えられるかわからないけれど。せっかくの高校生活を、楽しく過ごしてもらいたい。私がダメでも、日和がいる。少しずつ、距離を縮めていけたらいいな。
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第23話

翌日の昼休み。何やら廊下が騒がしいなと思い、日和と教室の窓から覗いてみると、階段からパタパタとおりてきた女子達が、興奮気味に教室に滑り込んできた。それを見て、眉をひそめる私達。首を傾げながら、女子の会話に耳を澄ませる。「ちょっとちょっと。めっちゃヤバイんだけど」「なになに? どうしたの?」「私、キュン死にするかと思った〜」「私も〜」両手を胸の前で合わせて、キャピキャピはしゃいでいる。まるで、好きな芸能人にでも会ったかのようなテンションだ。さらに日和と耳を澄ませていると、『どうしたの?』と、女子の輪が大きくなった。「レオくんよ」名前を聞いた瞬間、私の体が飛びあがった。隣の日和にはバレていないだろうけど、なぜか、心臓が驚く程飛びはねたんだ。「たまたま屋上に行ったらね、レオくんがいたの」「寝てたから話は出来なかったんだけど」「その寝顔がねっ!!」と、次々に話し出す彼女達。どんどん速くなっていく鼓動をしずめようと、大きく息を吸った。すると、隣の日和が私の腕を突き『ちょっと行ってみようか』と、私に耳打ちしてきた。ガチャリと、屋上のドアを開ける。少し錆び付いたドアは、何とも不快な音をたてた。4月も中旬。寒くもなく、暑くもない。爽やかな風が頬をかすめ、とても気持ちがいい。空を仰げば、心が躍り出すような青空が広がっていた。「うわぁ〜」日和と同時に声をあげ、お互い目を見合った。「私の中学はさ、屋上立入禁止だったんだ」肩をすくめる日和に、『うちの中学もだよ』と、苦笑した。「こんな景色が見られたなんて。なんか、人生損した感じだよね」私は、眉間にしわを寄せ大きく頷いた。
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第24話

眼下に広がる景色。空と海との境界線が、どこなのかわからないくらいに広がる青。忙しく行きかう車たちが、小さく見えて。新芽の青々とした木々が、ずっと連なっている。元々高台に位置するこの屋上からの眺めは最高だった。風で乱れる髪を整えることもせず、日和とフェンスに張り付いて景色を眺めた。「うるさいんだけど」突然、背後からかかった声。私と日和は、同時にフェンスから手を離して振り返った。そうだった……。ここへは、レオくんに会うために来たんだった……。振り返った先には、かなり不機嫌なレオくんが。屋上の端にあるベンチに、座っていた。膝に両肘をついて、前かがみになっている。私と日和は一度目を見合わせ、ベンチに座っているレオくんの元に足を進めた。レオくんは、フイっと私達から視線をそらす。「こんな所にいたんだ」普通に話しかけたのは日和。小さい頃から接しているだけあって、それは違和感がなかった。前かがみのままのレオくんの茶色い髪が、風に乱れる。だけど、レオくんは微動だにしなかった。「クラスマッチの種目の事だけどさ。あれ、嫌ならあたしが言ってあげようか? レオくん、室内の方がいいでしょ?」日和がレオくんの隣に腰かける。それから逃げるように、レオくんはまたそっぽを向いた。「バスケとかの方がいいんじゃない?」「関係ないだろ」
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第25話

冷たい、レオくんの声。「ねぇ、レオくん。高校くらいはさ、楽しく過ごそうよ。またお兄ちゃん達とも一緒にいられるし。まぁ、たったの一年だけどさ。あのバカ兄貴でも、レオくんの支えになると思うし」日和が言うと、レオくんは大きなため息をついて、立ちあがった。背中を向けて、両手をズボンのポケットに突っ込み歩き出す。「つーか」去り際。ドアの目の前で、レオくんはクルリと振り返った。「そういう同情みたいなのって、イライラするんだよね」それだけ言うと、レオくんはすぐに屋上から去って行ってしまった。沈む日和の表情。私にはどうする事も出来なくて。『あいつの事、頼む』『あいつ、ちょっと色々あってさ』日和が私の顔を見て、苦笑する。『レオくんの支えになると思うし』『そういう同情みたいなのってイライラするんだよね』どういうことか理解できないけど、昨日の柊先輩といい、日和といい。レオくんの事をかなり心配しているような気がする。表情だって普通じゃなくて。色々あったって、何?レオくん……。どうしたの?過去に、一体何があったの?私は、何をしてあげられる?「あら、出かけるの?」玄関で靴を履いていると、背後からお母さんの声がした。「うん。ちょっと出てくる」「そう」ヒールの靴を履いて、くるりと振り返る。「帰り遅くなるかもしれないから、ご飯はいいからね」「あまり遅くならないでよ。お父さんがうるさいから」私は、肩をすくめて『いってきます』と家を出た。日曜の昼過ぎ。穏やかな時間が過ぎ、町はどこかのんびりとしていた。休日を楽しむ家族の笑い声や、散歩を楽しむお年寄りたち。思わず微笑んでしまう光景が広がっている。レオくんの事は何もわからないまま、時間だけが過ぎていく。学校ではやっぱり机に突っ伏していて、私はその背中を見てるだけ。柊先輩にも日和にも、レオくんの事を何も聞けないままだった。
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第26話

『美羽。ちょっと出てこれる?みんなで集まろうって、バカ兄貴がうるさいのよ。あっ、柊先輩とレオくんも来るよ』そんな電話がかかってきたのは、30分程前。一息に話す日和に圧倒されて、断る事が出来ずに『うん』と返事をしてしまった。休日はほぼ家で過ごすことの多い私は、日和から電話がかかってきた時にはまだ部屋着のままだった。とりあえず髪をアップにまとめて、この前新しく買ったばかりの服を着た。少し、化粧もしてみて。大人っぽくしてみる。別に、特別な意味はないんだけど。先輩が2人もいるし、ガキだって言われたくないだけ……。ホントにただ、それだけ。電話で説明されたとおり、日和の家はすぐにわかった。『目の前には小さな公園があって、2軒隣には小さな居酒屋があるからすぐにわかると思う』ピンポーンとチャイムを鳴らす。するとすぐに、中からパタパタと足音が聞こえてきた。「あ、いらっしゃい。すぐにわかった?」「うん。 日和の説明が上手かったからね」私が言うと、日和は肩を上げてフフッと笑った。「おじゃまします」靴を丁寧に揃えて、日和が準備してくれたスリッパをはく。と、その時。「おせーぞ」リビングの中から、私の心臓を高鳴らせる声が。心臓が速く動き過ぎて、急に呼吸が苦しくなる。声がしてからしばらくすると、リビングのドアから柊先輩が出てきた。麦茶とグラスの乗ったお盆を手にしている。「ったく。電話がきたらすぐに出かけられるように準備しとけよなあ」眉間にしわを寄せた先輩は、まるで自分ちのように、『早く2階に行け』と顎でしゃくった。
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第27話

「まあ、小さいころからこうだからね。むしろ、自分で何でもしてくれるから、こっちからすればすごく楽」びっくりしている私に、日和は肩をすくめて、柊先輩に続いて階段を上って行った。私もその後に続く。先輩の持っているお盆の中で、歩く度にグラスがカチャカチャとぶつかり合っていた。「おお。美羽ちゃん、いらっしゃい。つーか、美羽ちゃんの私服、超可愛い」「うわっ!!」部屋に入った瞬間、コウ先輩に肩を組まれ、私は自然とコウ先輩の隣に座る事に。だけど。「コウ、離せっ!!」ガチャン、と乱暴にお盆を置いた柊先輩が、私の肩からコウ先輩の腕を振り払った。「んだよ……。ちょっとくらいいいだろお?」柊先輩に叩かれた手を、ブラブラと揺らしている。「おまえの“ちょっと”はちょっとじゃねー」気をつけろよ。と、なぜか私の肩を抱きながら言う柊先輩。えーと……。肩を抱く必要はないのでは……?私の心臓、はち切れそうなんだけど。私の目の前に座っている日和は、前みたいに私を助けてはくれなかった。楽しそうにニコニコ笑って。おまけに、ウインクまで……。「つーか。あいつ、まだ来ないのか」ようやく私の肩から手を離してくれた先輩が、イライラとため息をついた。「あいつの事だから、まだ寝てんじゃねーの?」そんな柊先輩とは対照的に、ベッドに寝転んで雑誌をめくっているコウ先輩が、さらりと言った。柊先輩は何度も携帯を開いている。「あいつから、一通も返事がこねー」「壮吾も嫌われたもんだな」「ふざけんな。あいつ、マジで寝てんのか?」イライラが限界を超えたのか、柊先輩はとうとう電話をかけはじめた。と思ったら。“レオ”と表示されている携帯を、私にグイっと押し付けてくる。「え…… 何ですか?」「おまえがかけろ」
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第28話

「ど、どうしてですか?」「女からの方が、あいつもちょっとは動く気になるだろ」無理矢理持たされた携帯を片手に、おろおろとする。「あいつが、女で動くわけないだろ」呆れ気味に言ったのは、コウ先輩だ。私も、そう思う。女って言っても、私だ。絶対に興味を示すわけがない。「んだよー」先輩はふて腐れながら、仕方なく携帯を耳に当てた。受話器越しに、呼び出し音が微かに漏れてくる。ワンコール、ツーコール、スリーコール……。哀しい呼びだし音が微かに聞こえてくるだけで、レオくんが電話に出る気配は全くない。諦めた先輩は、ぱたんと携帯を乱暴に閉じると頭を垂れた。「相変わらず社交性のないヤツだよなー」私はそんな先輩に苦笑しながら、部屋をぐるっと見渡す。見るからに男の部屋って感じだから、ここはコウ先輩の部屋だろう。白い壁に、家具は全て黒で統一されているシンプルな部屋だ。ベッドの周りにはマンガや雑誌が散乱している。ちなみに、ベッドの上も布団がぐちゃぐちゃ。だけど、なぜか不衛生には感じなかった。箪笥の上や本棚の間に、たくさんの写真が飾られている。不衛生に感じないのは、この写真の効果だろうか。「写真、いっぱいあるんですね」私が言うと、急に日和の目が輝き出した。「美羽、気づいた? そうなの。私写真撮るの大好きでね。 これ、全部私が撮ったんだよ」
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第29話

『そうなんだー』と答えながら、手の届く位置にあった写真立てを手に取った。写真に写っている場所はこの部屋で。レオくん、柊先輩、コウ先輩3人が、お菓子を囲んで写っていた。「これはね、お兄ちゃん達が中3の時のやつだよ」「幼いね」「でしょ? 髪の色は今と変わらないけど、今より少しは可愛げがあるでしょ?」日和がいたずらっぽく笑うと、すかさずコウ先輩のチョップが日和にとんだ。「った……。 何するのよ。バカ兄貴」「男にかわいいって言うな。つーか、おまえのかわいらしいとこなんて今までに見たことがねー。もっと美羽ちゃんを見習え」「黙れっ!!」今度は、日和が負けじとコウ先輩にチョップを返した。コウ先輩は、器用にそれをかわす。そんなふたりを見て、私は柊先輩と一緒にクスっと笑った。だけど……。柊先輩の表情は、眉間にしわを寄せ、すぐに哀しげな表情に変わった。その視線の先には、今より少し幼いレオくんが。写真の中のレオくんは、やっぱり無表情だった。「もしも……。もしも、あの時。 あんな事がなかったら、レオは今頃どうなってたんだろうな」その言葉に、今までふざけていた日和とコウ先輩が、急に静かになった。柊先輩と同じ表情で、視線を落としている。「どうも何も。 少しは笑えてんじゃねーの?」声がかすれるコウ先輩に、『だよな』と、切なげに微笑みながら、柊先輩が静かに言った。レオくんに対する疑問だけはどんどん膨らんでいくのに。全然、前に進めない。そんな自分が、すごく嫌だ……。
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第30話

静かになった部屋で、それぞれの表情をうかがうように上目遣いで息をのんだ。幼いころから一緒にいるこの3人は、レオくんの事をよく知っている。表情がひどく落ち込んでいて。だけど、それを理解出来ない私。ちょっと距離を感じて悲しくなる。『あいつの事、頼む』『高校くらいは楽しく過ごそうよ』『そういう同情みたいなのってイライラするんだよね』また、私の頭をぐるぐると回り出した。普段は明るい柊先輩のあの時の神妙な面持ちが、瞼の裏に張り付いて離れない。『レオくんに、何があったの?』喉まで出かけた言葉を、飲み込んだ。他人の私は、無理に入り込んじゃいけない。そう、直感で思ったから。「まあ、ほら。 あいつは大丈夫だよ。焦らなくても、そのうち笑えるようになるって」沈んだ空気を元に戻そうと、コウ先輩が陽気な声で言った。それに続けて、「だよなー。あーあ、暗い空気は俺にはあわねーなー」と、柊先輩がグっと伸びをした。すると日和が、「そうだ!!」胸の前でポンと手を叩いた。「せっかく美羽もいるんだしさ。撮ろうよ。初めての写真」そう言うと、みんなの意見を聞く前に勢いよく立ちあがって、自分の部屋に走って行った。すぐに戻ってきた日和の手には、シルバーのデジカメが握られていた。「はい、3人とももっと近づいてー」早速画面を覗き込んだ日和が、手で『もっと近づいて』と合図する。「美羽ちゃん真ん中ね」「え!? うわっ!!」グイッと肩を寄せられた私は、抵抗する間もなく、コウ先輩の腕にすっぽりはまってしまった。「あ、てめぇ、コウ!!その手ぇ離せってさっき言ったばっかだろ」「なんだよ、さっきから。 美羽ちゃんはおまえだけのものじゃないだろ」さらにコウ先輩にグイッと肩を寄せられる。「はーい。撮るよー」やっぱり日和は助けてくれなくて。「はい、チーズ」「えっ!!」
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