LOGINたくさんの悩みや葛藤を抱えた、高校生。 自分なりに出した答えを正解だと信じて駆け抜けた青春時代。 4人の高校生の等身大のストーリー
View More高校を卒業してから4年間――。
開いては閉じて、閉じては開いてと、何度も繰り返し見てきたものがある。
封印しようと思っても、なかなかできなかった。
机の引き出しにしまっている、手作りの小さなアルバムだ。
赤い表紙には“Forever”の文字。
それはまだ、幼い字だった。クセのある、丸文字で。
このアルバムを開くと、必ずあの頃の私に気持ちが戻った。
何もかもが楽しくて、キラキラと光輝いていて、ただ真っすぐに、恋をしていた頃。
今日もまた、表紙を撫でて中を開く。
1枚目には、16歳の私の笑顔。
その隣には、あの人。
肩を組んで、グンと手を前に出して満面の笑みでピース。
写真の周りにはたくさんの落書きがあり、とても賑やかだ。
ページをめくる度に、高校生だった私達が笑っていた。
変顔のものもあった。
仲間と悪ふざけばかりしていた日々。
“永遠”を信じてやまなかった日々。
自分たち中心に動いていたあの頃――。
もう、全て、思い出でしかない……。
窓から、風が流れ込んでくる。
机横のカーテンがヒラヒラと揺れ、私の前髪を浮かせた。
アルバムのページをめくれば、どれも笑っているものばかり。
まるで、辛いことなんて1つもなかったかのように。
本当は、何もなかったのかもしれない。
あの過去は、全てまぼろし……私の、夢物語で……。
あの頃の想いは、わからない。
何をあんなに一生懸命走っていたのだろう。
友情にしても、恋にしても。
気持ちのままに動いて、簡単にいろんなものを信じていた。
“永遠”なんて、約束されないのに。
未来は、必ず明るい光に満ち溢れているんだって、素直で...。
いつもいつも、全力で駆け抜けていた。
あの頃に戻りたいか、と聞かれたら、躊躇してしまう。
もう、あんなに辛い事は経験したくないから。
けれど。なぜか、何度もアルバムを開いてしまうんだ。
忘れようとしているのに、結局はこうして探している。
大好きだった人を...。
机の上で携帯が鳴ったのは、頭を振って、過去の想いを振り払った時だった。
ディスプレイに表示されたのは、知らない番号。
通話ボタンを押すと、受話器の向こうから、微かに波の音が聞こえてきた。
「もしもし……」
恐る恐る声を出す。
『もしもし――』
返ってきたのは、波音に消えてしまいそうな、小さな声だった。
今日も制服を着崩している。ネクタイを締めていない白いシャツの隙間から、真っ赤なTシャツが顔を覗かせていた。「よお」昨日出会ったばかりなのに、当たり前のように私の目を見て挨拶してくる。周りの視線を感じながら、軽く会釈。だけど、あまりにもその視線が痛すぎて、私は先輩と目が合わせられなかった。だって、1年生だけじゃなくて、教室の中からの視線まで感じたから。怖くて。出来れば、先輩だらけのこの校舎では、話しかけないでほしかった。いや……。ちょっとは話しかけてほしいんだけど、あまり、話しかけてほしくない……。乙女心は微妙なんだ。「どうした? 腹でも痛いのか」「はっ?」俯く頭上からかかった言葉に、私は意味がわからず、顔を上げて眉をひそめた。「なんか、暗くね?」そう言って、私の顔を覗き込んでくる。その瞬間に、廊下と教室から『はっ』と息を呑む音が聞こえてきた。嫉妬の矢が、私の体に突き刺さる。その矢をかわそうと先輩から視線をそらしたのに、それは逆効果だったみたいだ。俯く私の顔を、ずっと追ってくる。「つまんねーんだろ」またしても、意味のわからない事を。「学校の見学なんてしなくてもよくね?場所なんて、嫌でもそのうち覚えんだし。 な、コウ」コウ先輩に同意を求めて投げかけている。けれど、私はそんな事で俯いてんじゃないんだよ。この視線だよ。さっきからチクチク刺さってる鋭い視線。普通はさ、いち早く異変に気付いて身を引くでしょうが。あー、見てるよ。教室の中から、美味そうな獲物を見つけたハイエナのごとく、目をギラギラせてこっちを見てるよ。私、確実に取って喰われる……。
加速していく鼓動。熱を帯び始める頬。手の平が汗ばんできて、スカートで少しだけ拭った。久しぶりの感情に、ちょっとだけ戸惑う。私は、3年生の廊下を歩きながら、窓から空を見上げた。高鳴る鼓動を抑える為に、隣の日和にバレないように小さく深呼吸する。程良く差しこんでくる日差しがとても心地よくて、清々しい気分になった。澄んだ青空。太陽の光。木々の濃い緑。目の前のキャンバスに彩られた風景に、私は静かにほほ笑んだ。その時。「美羽ちゃん、見っけ」突然かかった声。空から視線を下げる。声の方へ顔を向けると、ちょうど日和の横にある教室の窓からひょっこり顔を出している人物がいた。日和も、突然の声に驚いている。だけど声の主を見た瞬間、顔をしかめて、一発頭を殴った。「いっで!!」大袈裟に頭を押さえるコウ先輩は、窓から上半身を乗り出し、うずくまっている。授業中だというのに、コウ先輩と日和のコントのせいで、教室は一気に笑いの渦に巻き込まれてしまった。その中には、またこの兄妹のコントが見られると盛り上がっている人達がいる。静かだった教室から、口笛や、はやしたてる声が響き渡った。「あ、おい。 こらっ!!」先生の叱り声と同時に、後ろのドアから現れたのは柊先輩。その瞬間。1年生で溢れる廊下が、ざわついた。男子も女子も、憧れの眼差しで彼を見ている。私の心臓も、自然と鼓動が速くなった。1年生の列をかき分け、柊先輩が近付いてくる。
「いないよ」俯き加減に歩いていると、突然視界に日和が現れた。驚いた私は、目を丸めて日和に顔を向ける。「3人とも」「へっ?」「あ、あのバカ兄貴は誰でもいいって感じだから、いつもたくさんの女の人を連れてたけどね。でも、彼女って呼べる人はいなかったんじゃないかな」本当、バカ兄貴。と日和が呆れる。「どんなに告白されてもさ、全部断ってんの」えっ? と答える代りに眉を上げる。声に出してしまうのが、なんだか少し恥ずかしかったから。咲きかけのこの想いを、まだ悟られたくない。もし知られてしまえば、ものすごい速さで開花してしまうような気がしたから。だって、勝ち目ないし……。「こっちからしてみれば、早く彼女を作れって感じ。そっちの方が楽だし」「……?」「だって、彼女がいればみんな諦めてちょっとは大人しくなるでしょ?彼女を作ろうとしないくせに、愛想ばっか振りまくから私が被害にあうんだよ」「た、大変だね」私が苦笑しながら日和に言うと、突然目を輝かせ私の顔を見てきた。「で、で? 誰に興味をもったのよ」「......っ?」「なに、びっくりしてんのよー。言ったでしょ?私はあの3人のファン達の相手をずっとしてきたのよ? 雰囲気でわかるよ」日和はニヤリと笑うと、私の腕を肘で突いてきた。心臓が暴れ出した私は、日和の腕をはたく。「な、なに、それ。別に、興味なんて……ッ」目を泳がせながら、しどろもどろで答える。「めっちゃ、目が泳いでますけど。お嬢さん」「泳いでないよ」反論して、日和から視線をそらす。隠そうと思っていたのに……。
「あのバカ兄貴と柊先輩のせいでね。ま、あとレオくんもかな」日和が肩を落とした直後、誘導していた先生がくるりと振り返った。「この渡り廊下を渡った向こうは3年生の校舎になります。図書室や音楽室もこの校舎ですからね」先生の案内で廊下を渡る。「あの3人、何気にキレイな顔立ちをしてるでしょ?」……確かに。「3人いつも一緒にいるからさ、目立つのよ。まぁ、中学校の頃からあの頭の色だし?んで、“コウの妹”だって事で、3人目当ての子が色んな事を私に聞いてくるの」肩をすくめた日和はため息をついて、「高校は違うとこにって思ってたんだけど。私の頭じゃ行ける高校がなくて」と、まるで洋画の俳優のように頭を左右に振った。確かに、3人ともすごくモテそうだった。というか、あれはモテるに決まってる。人並みはずれた端正な顔立ちの柊先輩に。お調子者なのに見とれてしまうコウ先輩。そして、無口だけど憎めないレオくんは、とても綺麗な顔立ちだった。3人ともそれぞれ違うけど、昨日見て思ったのは、3人の周りだけが、キラキラと輝いていたって事。「まぁ、ちょっとくらいなら3人の情報をあげてもいいかなって思うんだけど、毎日毎日キャーキャー来られると、正直疲れるのよね。そんなに知りたいなら、自分で直接聞けばいいのに」日和は、キレイな顔して毒舌だ。3人のファンにかなり酷い目にあったのか、日和は、ぶるっと体を震わせると両腕をさすり始めた。3人の中学時代……か。昨日、先輩達が教室に来ただけであの空気の変わりようだ。一目惚れとまではいかなくても、先輩2人に好意を持ち始めた人達はいると思う。それと、レオくんにも。私も、その中の一人だって言える。ほんの少しだけど3人に興味を持ったから。これだけ人気があれば、きっと彼女、とかいるよね。