All Chapters of 幸せ色の恋~想いよ、永遠に~: Chapter 11 - Chapter 20

21 Chapters

第11話

「いないよ」俯き加減に歩いていると、突然視界に日和が現れた。驚いた私は、目を丸めて日和に顔を向ける。「3人とも」「へっ?」「あ、あのバカ兄貴は誰でもいいって感じだから、いつもたくさんの女の人を連れてたけどね。でも、彼女って呼べる人はいなかったんじゃないかな」本当、バカ兄貴。と日和が呆れる。「どんなに告白されてもさ、全部断ってんの」えっ? と答える代りに眉を上げる。声に出してしまうのが、なんだか少し恥ずかしかったから。咲きかけのこの想いを、まだ悟られたくない。もし知られてしまえば、ものすごい速さで開花してしまうような気がしたから。だって、勝ち目ないし……。「こっちからしてみれば、早く彼女を作れって感じ。そっちの方が楽だし」「……?」「だって、彼女がいればみんな諦めてちょっとは大人しくなるでしょ?彼女を作ろうとしないくせに、愛想ばっか振りまくから私が被害にあうんだよ」「た、大変だね」私が苦笑しながら日和に言うと、突然目を輝かせ私の顔を見てきた。「で、で? 誰に興味をもったのよ」「......っ?」「なに、びっくりしてんのよー。言ったでしょ?私はあの3人のファン達の相手をずっとしてきたのよ? 雰囲気でわかるよ」日和はニヤリと笑うと、私の腕を肘で突いてきた。心臓が暴れ出した私は、日和の腕をはたく。「な、なに、それ。別に、興味なんて……ッ」目を泳がせながら、しどろもどろで答える。「めっちゃ、目が泳いでますけど。お嬢さん」「泳いでないよ」反論して、日和から視線をそらす。隠そうと思っていたのに……。
last updateLast Updated : 2026-01-06
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第12話

加速していく鼓動。熱を帯び始める頬。手の平が汗ばんできて、スカートで少しだけ拭った。久しぶりの感情に、ちょっとだけ戸惑う。私は、3年生の廊下を歩きながら、窓から空を見上げた。高鳴る鼓動を抑える為に、隣の日和にバレないように小さく深呼吸する。程良く差しこんでくる日差しがとても心地よくて、清々しい気分になった。澄んだ青空。太陽の光。木々の濃い緑。目の前のキャンバスに彩られた風景に、私は静かにほほ笑んだ。その時。「美羽ちゃん、見っけ」突然かかった声。空から視線を下げる。声の方へ顔を向けると、ちょうど日和の横にある教室の窓からひょっこり顔を出している人物がいた。日和も、突然の声に驚いている。だけど声の主を見た瞬間、顔をしかめて、一発頭を殴った。「いっで!!」大袈裟に頭を押さえるコウ先輩は、窓から上半身を乗り出し、うずくまっている。授業中だというのに、コウ先輩と日和のコントのせいで、教室は一気に笑いの渦に巻き込まれてしまった。その中には、またこの兄妹のコントが見られると盛り上がっている人達がいる。静かだった教室から、口笛や、はやしたてる声が響き渡った。「あ、おい。 こらっ!!」先生の叱り声と同時に、後ろのドアから現れたのは柊先輩。その瞬間。1年生で溢れる廊下が、ざわついた。男子も女子も、憧れの眼差しで彼を見ている。私の心臓も、自然と鼓動が速くなった。1年生の列をかき分け、柊先輩が近付いてくる。
last updateLast Updated : 2026-01-07
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第13話

今日も制服を着崩している。ネクタイを締めていない白いシャツの隙間から、真っ赤なTシャツが顔を覗かせていた。「よお」昨日出会ったばかりなのに、当たり前のように私の目を見て挨拶してくる。周りの視線を感じながら、軽く会釈。だけど、あまりにもその視線が痛すぎて、私は先輩と目が合わせられなかった。だって、1年生だけじゃなくて、教室の中からの視線まで感じたから。怖くて。出来れば、先輩だらけのこの校舎では、話しかけないでほしかった。いや……。ちょっとは話しかけてほしいんだけど、あまり、話しかけてほしくない……。乙女心は微妙なんだ。「どうした? 腹でも痛いのか」「はっ?」俯く頭上からかかった言葉に、私は意味がわからず、顔を上げて眉をひそめた。「なんか、暗くね?」そう言って、私の顔を覗き込んでくる。その瞬間に、廊下と教室から『はっ』と息を呑む音が聞こえてきた。嫉妬の矢が、私の体に突き刺さる。その矢をかわそうと先輩から視線をそらしたのに、それは逆効果だったみたいだ。俯く私の顔を、ずっと追ってくる。「つまんねーんだろ」またしても、意味のわからない事を。「学校の見学なんてしなくてもよくね?場所なんて、嫌でもそのうち覚えんだし。 な、コウ」コウ先輩に同意を求めて投げかけている。けれど、私はそんな事で俯いてんじゃないんだよ。この視線だよ。さっきからチクチク刺さってる鋭い視線。普通はさ、いち早く異変に気付いて身を引くでしょうが。あー、見てるよ。教室の中から、美味そうな獲物を見つけたハイエナのごとく、目をギラギラせてこっちを見てるよ。私、確実に取って喰われる……。
last updateLast Updated : 2026-01-07
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第14話

「見学とかいいからさ、あいつんとこ行こうぜ」今にも逃げ出したい空気の中、柊先輩は私と日和に向かいさらっと言ってのけた。嫉妬の渦。今すぐにでも飲み込まれそうなんだけど。「そだな」それに同意したコウ先輩が、先生の制止を無視して教室から出てきた。先生は教科書片手に、またか。と、完全に呆れかえっている。「美羽ちゃん、行こう。あ、おまえはついて来んな」コウ先輩は私の腕を引っ張ると、日和に冷たく言い放った。「バカ兄貴。その手を離して。マジで美羽に触れないで」今度は日和に腕をとられる。よろけながら苦笑すると、「おまえ、人気者だな」と、柊先輩が笑った。笑うとこじゃないでしょうが……。「ところで、あいつって?」腕を引っ張る日和に耳打ちすると、『あー、レオくんよ』と素っ気なく言った。そう言えば、さっきからレオくんの姿が見当たらない。「レオくんは、団体行動をとらない人なの」「え?」「自分の興味を持った時にしか行動しない人」興味を持った時にしか、って。随分、マイペースな人だな……。私達の前を歩く先輩2人は、レオくんの居場所がどこなのか分かりきっているように、ずんずん進んでいく。高校生になってまだ、2日目。どこに何があるのか全くわからないこの校舎の、一体どこにいるというのだろうか。迷いもなく歩みを進める先輩と。それに何も言わずについて行く日和。理解不能。「おーい、レーオ」ガラガラっと部屋のドアを開けたのは、柊先輩。先輩達の後ろからその部屋を覗き込んでみると、そこは、とても静かな図書室だった。つかつかと中へ入って行く先輩達。その後へ続くと、古い本の匂いや、埃の匂いが混ざった、図書室独特の匂いに包まれた。
last updateLast Updated : 2026-01-08
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第15話

授業中の図書室には、誰もいない。グラウンドから体育の声が聞こえてくるだけで、この部屋の中は物音ひとつしなかった。しかも、窓から差し込む日差しで、舞い上がる埃がキラキラと光っている。とても幻想的だ。こんなところに、本当にレオくんがいるのだろうか。柊先輩達と一緒に、本棚の間を探す。高校の図書室には、たくさんの本がぎっちり詰め込まれていた。絶対に読まないであろう分厚い本まである。ついでに、表紙の漢字が難しくて、何て書いてあるのかさえもわからない。ゆっくりと足を進めながら、本棚の間を覗く。すると。視界の下に、誰かのつま先が映った。首だけ本棚から出して、さらに覗き込む。そこには、絨毯に座り、本棚に寄り掛かって寝ているレオくんがいた。太ももの上には、一冊の本が広げられている。レオくんの寝顔は、今までに見た事もない程、キレイな顔だった。思わず、吸い込まれるように足が進む。茶色のサラサラの前髪が、目元にかかっている。目を閉じていても、目が大きいんだろうなと思わせる、二重のライン。鼻筋がすらりと通っていて、男の子とは思えない美しさ。レオくんの美しすぎる寝顔に見とれて足を進めていると、コツンと、レオくんの足に私の足が当たってしまった。それに反応して、レオくんが薄っすらと瞼を開ける。眩しそうに目を細めて、私を睨むように見上げた。「ご、ごめん」慌てて謝る。すると、レオくんは大きなため息をついて、太ももに広げていた本をパタンと閉じた。のっそりと立ち上がる。レオくんが手にしていた本の表紙には、『花図鑑』と書かれていた。花が好き……なのかな?
last updateLast Updated : 2026-01-08
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第16話

「レオ。 おまえまた寝てたのか」レオくんが、本を元の位置に戻した、その時。柊先輩とコウ先輩が、同時に本棚の間から出てきた。その後ろには、日和がいる。レオくんは、柊先輩に返事をすることなく、ズボンのポケットに片手を突っ込んで大きな欠伸をした。「ったく… おまえなあ。少しは体を動かそうとは思わないのかよ」「………」「もうすぐクラスマッチがあるだろ?おまえ、少しは周りとコミュニケーション取れよ」柊先輩の言葉に全く耳を傾けようとしないレオくん。また大きく口を開いて、欠伸をした。「おまえな……」首の後ろをかいて呆れる柊先輩。それを見て苦笑するのは、コウ先輩。レオくんが図書室から出て行くのを、先輩2人が溜息をつきながら追った。「私達も行こう、美羽」私は、日和とその後に続いた。と、その時。ムニュっと、足元に柔らかい感触があった。………?絨毯の上に落ちていたのは、生徒手帳だった。紺色の生徒手帳を拾い上げて、踏んでしまった部分を叩く。誰のだろう。と、開けてみると、“佐藤 礼央奈”と、名前が記入されていた。……礼央奈。「どうしたの?」眉をひそめて生徒手帳を見ていると、日和がそれを覗き込んできた。「ああ、レオくんのね。 さっき落したんだね、きっと」礼央奈……。「だから、“レオくん”なんだぁ!!!」突然大声を上げた私に向かい、日和が眉をひそめた。「そんなに驚くこと?」「だって、今初めて名前知ったし」私が言うと、日和はおかしそうにクスっと笑った。礼央奈……。綺麗な名前だなあ。レオくんにピッタリだ。
last updateLast Updated : 2026-01-09
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第17話

教室に戻ると、レオくんはまた机に突っ伏していた。その机の周りに、何人かの女子が集まっている。ヒソヒソと話し、顔を赤らめていた。「あの……レオくん」さっき、レオくんの足を蹴ってしまった事もあって、また彼を不機嫌にさせないようにと、遠慮がちに名前を呼んだ。だけど、反応なし。反応があったのは、周りの女子の視線だけ。痛いよなあ……。「レオくん、これ、図書室で落としてたみたいだから。ここに、置いとくね」素早くレオくんの机の上に生徒手帳を置き、女子の痛い視線から逃げるようにそそくさとその場を去る。自分の席に戻ってレオくんの様子を横目で見たけど、まだ机に突っ伏したまま。よくあんなに寝ていられるよな。というか、あの女子の視線、気にならないのかな。まあ、これくらいもう慣れてるんだろうけど。私には、たぶん一生この感覚はわからないんだろうな……。「ねぇねぇ、如月さん」肩を叩かれ振り向く。そこには、同じクラスの下川さんと女子数人が立っていた。今は、一週間後に控えているクラスマッチの出場種目を決めている。私の前の席に向き合う形で座っている日和と、どの種目に出場するかちょうど話し合っていた時だった。「何? どうしたの?」私が聞くと、彼女達は恥ずかしそうに、モジモジと体をひねらせていた。私の視界の隅で、日和が眉をひそめる。「如月さん、仲良いの?」下川さんから遠慮がちに聞かれ、私は首を傾げた。「あの、その、佐藤くんと」彼女が指差す先には、相変わらず机に突っ伏しているレオくんがいた。「昨日、佐藤くんに話しかけてたからさ。それに、図書室がどうのって……」ああ……。昨日の、あれか。あんな一瞬の事を、しっかり見てたんだ。「あれは、仲が良いっていうか、たまたま私がレオくんの生徒手帳を拾っただけで...」特別何も……。そう言おうとしたところで、私の横から日和が言葉をはさんできた。「悪いけど、私達、協力は出来ないよ」
last updateLast Updated : 2026-01-09
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第18話

『え……?』と、彼女達の表情が引きつった。私も、ちょっと驚いた。はっきりとこんな事が言えるなんて……。「きついことを言うようだけどさ、彼の事を知りたいなら、自分たちで調査しな?陰でコソコソ調べてもさ、いいことなんて一つもないよ」あの子達は、相当な覚悟で私に話しかけたのだろう。日和の言葉に顔を赤らめて、今にも泣き出しそうな表情で去って行った。その背中を、見送ることしか出来ない私。やっぱり、レオくんの人気はすごい。入学してたったの数日で、こんなにも女子を動かしてしまうなんて。「こういうのはさ、最初できつく言っておかないといけない事だよ」え? と日和を見ると、日和は肩をすくめた。「中学の時の経験からね。あの3人、コソコソされるのが一番嫌なタイプだから」日和はため息をつくと、机に突っ伏すレオくんに視線を向けた。「レオくんといい、柊先輩といい。そこにいるだけでオーラを放ってんのよね。私には何がいいのかわからないけど、そのオーラに女子は引き寄せられるというか」頬杖をついて顔を歪める日和だけど。私は、それが少しわかるような気がする。3人が放つオーラ。最初は、変な人達に出会ってしまったと思ったけど、たった数日でときめいている自分がいる。あまりにもキラキラと輝いていて。今となっては、もう目が離せなくなっているし。私も、彼女達と同じって事かな……。先輩に心を躍らせて、釘づけになる。だけど。彼女達と同じ立場っていうのは、ちょっと嫌だ。“彼の特別になりたい”と、図々しくも、すでに欲が生まれている。
last updateLast Updated : 2026-01-10
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第19話

「そういえば、美羽はどっち?レオくん? それとも、柊先輩?」「えっ!?」突然の質問に、私の声は最高に裏返った。ついでに、椅子からお尻がずれ落ちる。「な、何で?」瞬きが多くなるのを必死に抑え、唾を飲み込む。「昨日、あのバカ兄貴のせいで聞きそびれちゃったから」そう言う日和は、すごく楽しそうだ。キレイな顔が、ニヤけて不気味に崩れている。「わ、私は、別にそんなんじゃ」顔の前で、両手をブンブンと振る私に、「もうバレてんだから、白状しちゃいなよ。ついでに、少しでも惹かれたなら、本気になって」と、グンと身を乗り出してきた。「え?」「高校生活くらい、静かに過ごしたいのよ。美羽がどちらかの彼女になってくれるだけで、少しは違うと思うの。ねっ、お願い!!」「そ、そんな事言われても……」私の目の前で両手を合わせる日和。必死に拝まれる私は、苦笑するしかない。どちらかの彼女って……。拝まれて簡単になれるものじゃないでしょ。望みを捨てるわけじゃないけど、あの美形の二人に、私は釣り合わない。それに……。私の心臓、ちょっと変なんだ。柊先輩を見ると、必ず心臓をわしづかみにされるのに。なぜか、レオくんに惹かれつつある自分がいる。私は、決して一目惚れするタイプではない。それに、気持がすぐに変わってしまうような、嫌なタイプでもない。だけど……。レオくんの顔を見ると、吸い込まれるように、レオくんの傍に行ってしまうんだ。すごく不思議な感覚で。こんな事、今までに経験したことなんてなくて。戸惑って、どれが本当の自分の気持ちなのかわからなくなる。もしかしたら、この心臓の高鳴りは“好き”だから高鳴っているんじゃないのかもしれない。みんなと同じでただの憧れで。だって、今までに見たことのない美男子だ。彼らが珍しくて、ただ、興味を持っただけかもしれない。“恋” なんかじゃない。だけど、はっきりと、そう言えない。どうして……?この気持ちは何なんだろう。
last updateLast Updated : 2026-01-10
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第20話

「あ……」放課後。昇降口で靴をはきかえていると、玄関で友達数人と話している柊先輩を見つけた。思わず、『あ……』と出してしまった声は、意外と大きかったみたいだ。ちらっとこちらを見た先輩と目が合い、やっぱり私の心臓は高鳴った。咄嗟に視線を泳がせる私。足が地面に張り付いて、一歩が踏み出せない。ドクン、ドクンと、心臓が痛い。やっぱり、私は……。「よお」「ぎゃぁっ!!」頭上からかかった声に飛び跳ねると、柊先輩は怪訝な顔で私を見下ろした。「随分な反応だな」こめかみがピクリと引きつっている。ははっ……と、苦笑した私は、また俯く。ああ……。もう、無理だ。先輩の顔、まともに見られない。「おまえ、ちょっと付き合え」えっ? と顔を上げた時には、私は柊先輩に腕を引っ張られていた。いきなりの事で足がもつれ、前のめりになる。呆気にとられ、グングン進んでいく先輩の背中を見る事しかできなかった。もちろん、周りの視線は私達に集まっている。「せ、先輩!!みんな見てますよっ」「だから何だよ」「だ、だから。離して下さい」「どうして」「お願いしますっ!!」私の必死の抵抗が伝わったのか。柊先輩は歩みをとめて、クルリと振り返った。「ビビってんの?」は……?「おまえ、かわいいヤツだな」……はっ?「見んなって言ってやろうか?」意味がわからず目を白黒させていると、先輩は大勢の生徒の方を振り向いた。そして、スウーっと息を吸い込む。
last updateLast Updated : 2026-01-11
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