学園の廊下を歩きながら、西園寺千尋はふと、これまでの日々を思い返していた。――卒業できないようにする、という露骨な妨害。今思えば、ずいぶんと回りくどく、そして執念深かった。学園長を中心に、一部の教授たちはあからさまではない形で、しかし確実に千尋たちの足を引っ張ってきた。提出期限の直前に追加される課題。評価基準の不透明な実技試験。説明のない減点。どれも単体では偶然と片づけられるが、積み重なれば悪意としか言いようがない。それでも、すべてが敵だったわけではない。少数ながら、善意を持った教師たちがいた。表立っては助けられなくとも、さりげなくヒントを残し、理不尽な判断を覆すための「抜け道」を示してくれた者たちだ。その糸を、千尋と宮藤万緒は見逃さなかった。繋がり、読み、対処し、やり過ごす。まるで、終わりの見えない実地訓練のような日々だった。「……改めて思い返すと、よく乗り切れましたね」廊下を並んで歩きながら、万緒が軽い口調で言った。「本当よ。嫌がらせのバリエーションだけは無駄に豊富だったわ」千尋は肩をすくめる。だが、その表情には余裕があった。「でも、いい練習にはなりましたね」「ええ。正面から来ない敵ほど厄介だって、身をもって学べたもの」それは、今後の人生においても役に立つ教訓だろう。千尋はそう思いながらも、ふと、ひとつの疑問が浮かぶ。「……でも、どうしてあそこまでしたのかしら」ぽつりと漏れた言葉。学園にとって、千尋が卒業しようとしまいと、実質的な不利益はないはずだった。むしろ、優秀な卒業生として名前を残すほうが名誉ですらある。万緒は、少し声を落として答える。「さあ……ですが」二人は並んだまま、視線だけを前に向けて歩く。「“自分の学園から、あの後継者を卒業させた”――それ自体が不名誉だと、思っているんじゃな
Dernière mise à jour : 2026-01-17 Read More