深水哲也(ふかみ てつや)が若い愛人を囲っていると知ったのは、私たちの結婚生活がちょうど七年目に入ったときだった。最初は、彼のシャツの襟に、ときおり知らない香水の匂いが残っている程度だった。その後、彼が海外出張に出かけたとき、まる五日間、一言の連絡もなかった。さらに後には、共通の友人が言いよどみながら、彼のそばにいつも若い女の子がいて、ひどく楽しそうにしているのを見かけた、と教えてくれた。私は笑って聞き流し、彼のためにつじつまの合う言い訳をいくつも考えてやった。だって私たちは十七歳のときから今まで、まる十年も一緒に歩んできたのだから。彼が私を裏切るなんて、信じられなかった。あの日、彼のスーツのポケットから、一枚の妊娠検査報告書を見つけたまでは。名前は見知らぬもの、日付は先週の水曜日。私は何も言わず、ただ住所をたどって訪ねて行った。ドアを開けた女の子はとても若く、その眉目のあどけなさと生き生きした表情に、私は少しぼうっとした。彼女は私だと気づいた途端、顔から一気に血の気が引き、「深水奥さん、私、ただお金に困っていただけなんです」ともごもご言った。「深水社長は、私なんて奥さんの身代わりにすぎないって……決して図々しい真似はしません」身代わり?私はもう亡くなった初恋の人のような存在でもないのに、わざわざ偽物を探して、思い出に縋る理由などあるだろうか。その女の子のどこか見覚えのある顔つきを見て、私は突然悟った。彼が夢中になっているのは、十年前のあの活発で明るく、あどけなく純粋だった私の姿なのだ。私はその女の子を責めることもせず、ただ静かに家に帰り、荷物をまとめ、離婚協議書にサインをした。哲也、懐かしむのが私の過去だけなら、私の未来には関わらないでいてください。……哲也が再び私の上から身を離し、暗闇の中には、重苦しい沈黙と、互いにずれた息遣いだけが残る。「最近、ちょっと疲れててさ」彼は背を向けたまま、低い声でそう言った。私は何も言わなかったが、昼間に広瀬光希(ひろせ みつき)を訪ねた時の光景が、はっきりと脳裏に蘇る。彼女がドアを開けるまでにしばらくかかり、体中が青紫の痕だらけだった。彼女が顔を赤らめ、目を泳がせながら、私に小さな声で言った。「哲也……いえ、深水さんは本当に節度が
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