私は、あまり有名ではないけれど、愛に満ちたカップル垢をフォローしていた。そこには、投稿者と彼氏の日常のささやかな出来事が綴られている。彼らはラーメンを分け合うことで言い合いになっても、次の瞬間、互いの顔を見合わせると、相手を「大人になれない子どもだね」と笑い合った。また、山頂の星空の下で強く抱き合い、「この瞬間で時間が止まってしまえばいいな」と語り合った。投稿者は一度も顔を見せなかったけれど、彼女の言葉に、私は深く胸を打たれていた。そして、私が結婚する前日、そのアカウントの投稿が再び更新された。【十年にわたる恋は、ここで終わりを迎える。これから彼は彼女の夫、私は彼女の親友になる。このアカウントは更新を終了する。私のいちばん大切な友人と、彼女がいちばん愛している男が、永遠に幸せでありますように】添えられていた写真は、私、松本彩織(まつもと さおり)と婚約者の後ろ姿だった。それは、先週、私たちがウェディングドレスの店にいたときに撮られた写真だった。あのとき、葉月清美(はづき きよみ)は私のベールを整えながら、絶え間なくおしゃべりをしていた。鏡の中で、彼女は私よりも楽しそうに笑っていて、まるでこれから結婚するのが彼女自身であるかのようだった。「彩織、本当にきれいだね」彼女はふいに声を詰まらせ、「彩織の婚約者は、本当に幸せ者だね。彩織を妻に迎えられるなんて」と言った。少し離れたところに、古井弘行(ふるい ひろゆき)が立っていて、スマホを見た。自分の名前を聞いて、弘行は顔を上げ、私たちに向かって穏やかな笑みを浮かべた。けれど、その笑顔の奥に、どこか無理をしているような影を感じてしまった。「清美が大げさだよ」私は清美の手を握った。「あなたが無理やり連れてこなかったら、たぶんウェディングドレスを適当に一着買って終わりにしてた」「それはダメでしょ!」清美は目を見開いた。「私のいちばん大切な親友が、一生に一度だけ迎える結婚式なんだから、適当になんてできない!」彼女は弘行のほうを振り向いた。「ねえ、そう思わない?」弘行はスマホをしまい、歩み寄って、自然な仕草で私の肩を抱いた。「どこが適当なんだよ。彩織は、何を着てもきれいに決まるだろう。でも、このドレスは特に似合ってる」彼は私を上から下まで眺め、
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