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報われなかった青春を弔う

報われなかった青春を弔う

By:  みかんCompleted
Language: Japanese
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私は、あまり有名ではないけれど、愛に満ちたカップル垢をフォローしていた。 そこには、投稿者と彼氏の日常のささやかな出来事が綴られている。 彼らはラーメンを分け合うことで言い合いになっても、次の瞬間、互いの顔を見合わせると、相手を「大人になれない子どもだね」と笑い合った。 また、山頂の星空の下で強く抱き合い、「この瞬間で時間が止まってしまえばいいな」と語り合った。 投稿者は一度も顔を見せなかったけれど、彼女の言葉に、私は深く胸を打たれていた。 そして、私が結婚する前日、そのアカウントの投稿が再び更新された。 【十年にわたる恋は、ここで終わりを迎える。 これから彼は彼女の夫、私は彼女の親友になる。 このアカウントは更新を終了する。私のいちばん大切な友人と、彼女がいちばん愛している男が、永遠に幸せでありますように】 添えられていた写真は、私、松本彩織(まつもと さおり)と婚約者の後ろ姿だった。

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Chapter 1

第1話

Aruna

Reading a book and sipping hot chocolate while its raining outside is something which I love. Its past midnight and I am sitting on the couch in my room and reading Menfreya in the morning.

Its the pre-monsoon shower and I just love the rainy season and the way the hills of Dehra get a fresh green hue. The smell of mud and greens soothed me.

I was so engrossed in the book that I did not realize that the cup had become empty. It was when I picked up the cup and was about to take a sip when I noticed this. "Ugh", I groaned. I hate it when I'm reading a book- a good romantic book and I'm interrupted by these petty kinds of stuff.

I closed the book and kept it on the nearby table. I did not bother to take the cup back to the kitchen.

I dragged myself to the bed. It was really late now and my mom won't spare me if I woke up late in the morning. Well, she was never a bookworm and many times mini-wars in the house had taken place regarding this.

When I was a student she wanted me to study. All.The. Time.  But I was a rebel and didn't like to keep myself limited to the books which the syllabus had allotted. My dad usually stayed in no-man's land. Silently trying to appease both of us.

Well, whatever I say I am one lucky girl who has got the best parents in the world. I just fear I don't hurt them at any point in my life. The only thing that annoys me is their eagerness to get me hitched.

But life is not only about happy memories. I have some bad ones if they can be called memories. They are more like nightmares. Memories are happy ones, right? What do you call the ones which you don't want to remember but they are etched so very clearly in your mind that you can't erase them? I so want to forget those dreadful days which turned my once happy life, topsy turvy.

✍✍✍✍

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橘ありす
橘ありす
彼氏と10年付き合って結婚しようとしたら、自分の親友もその彼氏とこっそり付き合っていたってキツいなぁ… でも主人公きっぱりハッキリ決断しててかっこいい。クズ共が幸せじゃないのがざまぁ。
2026-04-13 04:59:55
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kogorou21
kogorou21
結婚式前日にクズ男と別れる決断をするのは本当に辛かったと思う。でもそれはヒロインにとって正しい選択で、その正しさが誰からも非難されることのない明るい日々になった。それはクズ男にもクズ女にも憧れても決して得ることの出来ないもの。クズたちさん、これからの長い人生、ずっと後悔し続けるが良い。
2026-02-08 07:06:14
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ノンスケ
ノンスケ
彼も親友も初めから彼女に隠れて付き合ってきたってことだよね。彼からしたら、うまく2人の女性の間でやってるつもりだったんだろうけど、はっきり裏切り行為。結婚前にわかってよかったとしか言いようがない。クズにはクズが寄ってくる。さっさと手放して正解!
2026-02-07 22:00:49
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松坂 美枝
松坂 美枝
男がクソすぎる 十年も浮気してて結婚式前夜もそいつといるとか 主人公がずっと冷静でいたのが不思議なくらいの裏切り こいつらがそういうことができたのは結局生活に余裕があったから 主人公と違って不幸に生きていってて良かった
2026-02-07 10:31:13
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10 Chapters
第1話
私は、あまり有名ではないけれど、愛に満ちたカップル垢をフォローしていた。そこには、投稿者と彼氏の日常のささやかな出来事が綴られている。彼らはラーメンを分け合うことで言い合いになっても、次の瞬間、互いの顔を見合わせると、相手を「大人になれない子どもだね」と笑い合った。また、山頂の星空の下で強く抱き合い、「この瞬間で時間が止まってしまえばいいな」と語り合った。投稿者は一度も顔を見せなかったけれど、彼女の言葉に、私は深く胸を打たれていた。そして、私が結婚する前日、そのアカウントの投稿が再び更新された。【十年にわたる恋は、ここで終わりを迎える。これから彼は彼女の夫、私は彼女の親友になる。このアカウントは更新を終了する。私のいちばん大切な友人と、彼女がいちばん愛している男が、永遠に幸せでありますように】添えられていた写真は、私、松本彩織(まつもと さおり)と婚約者の後ろ姿だった。それは、先週、私たちがウェディングドレスの店にいたときに撮られた写真だった。あのとき、葉月清美(はづき きよみ)は私のベールを整えながら、絶え間なくおしゃべりをしていた。鏡の中で、彼女は私よりも楽しそうに笑っていて、まるでこれから結婚するのが彼女自身であるかのようだった。「彩織、本当にきれいだね」彼女はふいに声を詰まらせ、「彩織の婚約者は、本当に幸せ者だね。彩織を妻に迎えられるなんて」と言った。少し離れたところに、古井弘行(ふるい ひろゆき)が立っていて、スマホを見た。自分の名前を聞いて、弘行は顔を上げ、私たちに向かって穏やかな笑みを浮かべた。けれど、その笑顔の奥に、どこか無理をしているような影を感じてしまった。「清美が大げさだよ」私は清美の手を握った。「あなたが無理やり連れてこなかったら、たぶんウェディングドレスを適当に一着買って終わりにしてた」「それはダメでしょ!」清美は目を見開いた。「私のいちばん大切な親友が、一生に一度だけ迎える結婚式なんだから、適当になんてできない!」彼女は弘行のほうを振り向いた。「ねえ、そう思わない?」弘行はスマホをしまい、歩み寄って、自然な仕草で私の肩を抱いた。「どこが適当なんだよ。彩織は、何を着てもきれいに決まるだろう。でも、このドレスは特に似合ってる」彼は私を上から下まで眺め、
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第2話
そのカップル垢を見つけたのは、本当に偶然だった。その日、私は何気なくスマホをいじっていて、システムのおすすめで表示された投稿の中で、そのアカウントを見た。アイコンは、私がとても好きなアニメキャラだった。好奇心に駆られて、私は思わずタップした。フォロワーは三千人あまり。最新の投稿は、三日前のものだった。深夜のデスクを写した写真で、添えられていた言葉はこうだった。【深夜まで残業。彼が『一緒に我慢しよう』って言ったのに、結局デリバリーを二人前頼んだ。ほんと、バカ】私は無意識のうちに、指を滑らせた。【彼は、私が最近あまり食事を取っていないことを気にして、ラーメンに入っているチャーシューを無理やり私に分けてくる。私はお肉が好きじゃないって言ったら、『大人になれない子どもだね』って笑われた】【山頂で星を見ながら、彼は『この瞬間で時間が止まってしまえばいいな』って言った。実は、私も同じことを思ってた】【風邪をひいたら、彼は仕事を抜けて看病に来てくれた。料理もできないくせに、無理やりお粥を作ってくれて。焦げてたけど、おいしかった】……そんなふうに、一つ、また一つと読み進めていくうちに、私の心は理由もなく揺り動かされていた。ありふれた日常。ささやかで温かなやりとり。それは、かつて私が思い描いていた「理想の恋愛」そのものだった。祝福の言葉を残そうとして、コメント欄が閉じられていることに気づき、私はフォローだけを押した。けれど実は、彼らの幸せな記憶において、私はずっと、何も知らない脇役だったのだ。彼女は【十年付き合った】と書いていた。けれど、私と弘行も、付き合って十年だった。そして私は清美と知り合って二十年になる。十歳のとき、彼女は私の家のそばに引っ越してきた。初めて会った日、彼女はツインテールを結び、いちご味のキャンディを私に差し出した。「私は清美。これから友だちね!」小学校から大学まで、私たちはいつも一緒だった。彼女は私の秘密をすべて知っていて、人生の大事な瞬間を、いつもそばで見届けてくれた。大学二年のとき、私は弘行と出会った。建築学科の人気者で、彼に想いを寄せる女の子は数えきれないほどいた。一方の私は、取り柄もない、ごく普通の存在。彼に気づいてもらえるなんて、考えたこともなかった。
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第3話
私はよろめきながら浴室に飛び込み、冷たい水で何度も頬を洗ったが、どうしても落ち着けなかった。明日は、私の結婚式なのだ。招待状はすでに送った。ホテルも予約済み。ウェディングドレスはクローゼットに掛かっている。すべては準備万端だった。私は震えながら、弘行に電話をかけた。一度、二度、三度……応答はない。しばらく呆然とした後、なぜか清美の番号を入力した。同じく、繋がらなかった。私の胸が一気に沈み込んだ。彼らは私を欺き、共に喜びを分かち合っていた時、果たして一瞬でも私に対する罪悪感を覚えただろうか?それともただ刺激を感じ、浮気の快感を味わっていただけなのか?清美が旅行ブロガーで、行く先々で写真を撮り、各プラットフォームに足跡を残していることを、私は知っている。また、SNSで活動する人はサブアカウントを複数持つことも知っている。私はホテル名で検索し、関連するIPの投稿をひとつずつ確認した。そしてついに「愛されない人こそ離れるべき」というアカウントで一枚の写真を見つけた。写真には、男性の細く長い指がシャンパンを開ける様子が写っている。腕時計は、去年私が彼に送った誕生日プレゼントだった。そう、弘行だ。キャプションは短く、ただ一行だけ。【盗み取った時間は、カウントダウンしていく】すでに多くのコメントがついている。真実の愛を祝福する者もいれば、【愛人なのでは?】と疑う者もいる。震える手でホームページを開くと、そのアカウントは以前のカップル垢とはまったく対照的だった。フォロワーは十数万人、登録もずっと以前だった。そのアカウントでは、彼女が私たち三人の物語を記録している。最初の投稿は、私を皮肉する内容だった。【人気者ってこんなに簡単に落ちるんだ、私も狙えばよかった。まさか親友に先を越されるなんて。しかも、彼氏とデートするなら前もって教えてくれればいいのに、わざわざ私がすっぴんでパジャマ姿で彼女を引き立てる役をさせられるなんて、本当に困るわ】コメント欄では【偽りの親友だね】と茶化す者に、彼女はニヤリと笑う絵文字で返していた。その後、私が風邪をひいて熱を出すと、弘行が看病に来た。彼女はこう書き残した。【あの人、本当にお姫様気質ね。熱を出しただけで世話してもらわないと気が済まないんだか
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第4話
清美の誕生日に、私は彼女がずっと欲しがっていた限定版のバッグを贈った。翌日、彼女はそのバッグを背負い、弘行と「偶然」出会った。カフェでの自撮りの際、「うっかり」彼も写真に写り込んでしまった。彼女は三人で映画を観るときの写真も撮っている。肘掛けの下で交差する清美と弘行の手が映っている。弘行が私にプロポーズした日、清美は長文を投稿し、自分の苦しみと無念さを綴った。【今夜、答えが欲しい】と彼女は書いた。【もし彼も私を愛しているなら、このチャンスを逃すべきじゃない】彼女は、それを成し遂げた。その夜、弘行は彼女のキスに、拒否の意思を示さなかった。二人は結婚前に一度だけ狂騒の旅行をすることを約束し、弘行は私に「一週間出張だ」と告げた。私の胃の中は、まるで波が逆巻くようだった。残業、接待なんて、すべて彼らのデートの口実だったのだ。七日間、清美は無数の動画を更新した。彼女は、私と弘行のすべての記憶を塗りつぶし、彼の未来を自分の影で満たすつもりだった。私はまるで自虐的に投稿を読み続けた。レストランからホテル、遊覧船から山道まで、同じ風景の中に映るのは別の二人だった。見ているうちに、最初は心が切り刻まれる思いだったのが、やがて麻痺し、最後には滑稽ささえ感じるようになった。心が死んだ後では、憎しみさえも余計なものだったのだ。夜が明けようとするとき、私は決断した。結婚式は、絶対に中止する。私はパソコンを開き、招待客に送るメールの下書きを始めた。一文字打つたびに、心が痛んだ。十年の恋、二十年の友情が、この瞬間に消え去る。送信する前に、私は清美に電話を掛けた。「彩織?こんな時間にどうして電話してきたの?」声は軽やかで自然だった。「もうすぐ一番美しい花嫁になるんだから、夜更かししちゃだめよ」私は口を開いたが、声は出なかった。おそらく私の様子がいつもと違うことに気づいたのだろう。彼女はすぐに心配そうに尋ねた。「彩織、大丈夫?結婚前で緊張して寝られないの?弘行は?なんであなたのそばにいないの?また仕事で忙しくて電話も出ないの?もう、この男には本当に呆れるわ。明日結婚するんじゃなかったら、今すぐ電話して怒鳴ってやるのに!」なんと皮肉なことか。つい先ほど、彼女はあれほど断固たる覚悟の投
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第5話
電話の向こうは、死のような静寂だった。私は想像できた。彼らの顔、今どんな表情をしているのか。慌てふためき、戸惑い、そして暴かれたことによる狼狽さえ混じっているかもしれない。「彩織、聞いてくれ……」弘行の焦った声が聞こえた。私はそのまま電話を切り、電源をオフにした。窓の外、空はもう明るくなっている。本来なら、人生で最も幸せな日はずだった。私は立ち上がり、荷物をまとめ始めた。浴室に並んだ歯ブラシ、リビングのテーブルのカップル用マグ、クローゼットに掛かった彼のネクタイと私のドレス。どれも心に針のように刺さる。私はできるだけ早く、港市行きの最初の便を予約した。そこには会社の新しい支社がある。以前、マネージャーに市場開拓に行かないかと尋ねられたとき、私は結婚準備を理由に断っていた。今ならちょうどいい。家を出る前、最後にこの家を見渡した。かつて、ここを幸せの始まりだと思っていた。今なら分かる、ただの嘘だったと。空港へ向かう道すがら、私はスマホを開いた。数十件の不在着信。弘行から、清美から、私と弘行の両親から。私は誰にも返事をせず、マネージャーである長野正守(ながの ただもり)にだけメッセージを送った。【長野マネージャー、港市支社へ行くことにしました。今朝の便で】すぐに返信が来た。【よかった!ちょうど人手が足りないところなんだ。着いたらすぐ新しいプロジェクトを担当してくれ】スマホを閉じ、窓の外を流れる風景を見つめる。この街には、私のすべての青春と恋が詰まっている。今、私はそれらを自分の手で葬ろうとしているのだ。港市に着いた初日、私は仕事に没頭した。新しい環境、新しいプロジェクト、忙しさこそが最良の麻酔だった。弘行からは無数のメッセージが届いた。最初は説明と謝罪、次第に責めや非難に変わる。「彩織、君は衝動的すぎる!十年も一緒にいたのに、説明の機会もくれないのか?その夜、俺は酔っていて、何が起きたか本当に分からなかった……清美とは……ただ一時的に判断を誤っただけ。やり直すチャンスをくれないのか?」私はそれらを眺めても、心は微動だにしなかった。十年の恋は、こんなにも脆いものだったのか。三日目、あるアプリから予約通知が届いた。ネットで最も有名なカップル向けレスト
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第6話
港市に来て二週目、私は新しいプロジェクトを担当するようになった。仕事は想像以上に忙しく、ほとんど毎日、深夜まで残業していた。それでいい。余計なことを考える時間がなくなるから。弘行が、ようやく港市に飛んできた。彼は会社のビルの下で私を待っている。無精ひげを生やし、目の下はくぼみ、かつての意気揚々とした姿は影も形もなかった。「彩織、話をしよう」彼は私の手首をつかみ、かすれた声で言った。私は手を引き抜いた。「私の住んでいるところへ行きましょう。ここは都合が悪いから」私は彼を、マンションへ連れて行った。ドアを開けた瞬間、彼は床に膝をついた。「俺が悪かった、彩織」彼は私の服の裾をつかみ、まるで叱られた子どものようだった。「あの夜は飲みすぎたんだ。清美とは……本当に、あれ一度だけなんだ」「一度だけ?」私は静かに聞き返した。「弘行、私を馬鹿だと思ってるの?」私はスマホを取り出し、清美のサブアカウントの投稿を開き、彼に見せた。二人が最初に内緒で会った時から、その後のすべてのデートまで。曖昧なやり取りのチャット履歴も、親密そうなツーショット写真も。弘行の顔色は、みるみるうちに青ざめていった。「こんなの、こんなの全部嘘だ」彼は虚しく言い訳をした。「彼女が勝手に話を作ってるんだ……」「作り話?」私は笑った。「弘行、私たちが初めて海に行った日のこと、覚えてる?」彼は言葉を失った。「あの日、あなたは言ったよね。これから先、毎年一緒に海を見に行こうって」私は淡々と続けた。「去年あなたは、仕事が忙しいから行けないって言った。でも後で、清美の投稿で見た。あの日、あなたは彼女と海辺に行ってた」弘行の唇が震え、何も言えなかった。「それから、私の誕生日の日。あなたは残業だって言って、私にお金だけを送ってきたよね」私はさらに言った。「実際、あなたは彼女と一緒に過ごしてたんでしょ?」「違う、彩織、話を聞いてくれ!」「何を説明するの?」私は遮った。「私との結婚式を準備しながら、彼女と別れの旅行をしていたこと?」弘行は力なく床に座り込み、両手で顔を覆った。「まさか、まさか彼女がこんなことまで全部投稿するなんて……」「つまり、あなたが後悔しているのは裏切ったことじゃなくて、浮気がバレたこと?」私は彼を見つめ
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第7話
弘行が去ったあと、私の生活は再び静けさを取り戻した。仕事も順調で、港市での暮らしにも少しずつ慣れていった。たまに過去のことを思い出しても、もう胸が痛むことはなく、ただ無感覚なだけだ。清美からは、ずっと連絡がなかった。それも想定内だった。あれほどプライドの高い人が、頭を下げて謝るはずがない。そんなある日、見知らぬ番号から電話がかかってきた。「松本彩織さんですか?」相手は厳しい口調で名乗った。「港市の警察です」胸がきゅっと締めつけられた。「はい、私ですが……何かありましたか?」「古井弘行さんは故意による傷害事件に関与した疑いがあり、現在病院にいます。ご本人があなたに会いたいと希望しています」私は言葉を失った。故意による傷害?弘行が?もう彼に対して感情は残っていなかったが、人としての義理から、私は病院へ向かった。病室では、弘行が頭に包帯を巻き、左腕をギプスで固め、ひどく痛々しい姿をしている。「彩織……」私を見ると、彼の目が一瞬だけ明るくなった。「来てくれたんだ」「どういうこと?」私は尋ねた。彼は苦笑した。「清美のファンに顔を知られて、取り囲まれて……揉み合いになった」私はそこで初めて、清美のサブアカウントが特定されたことを知った。彼女と弘行が一緒にいる写真が撮られ、SNSに投稿された。そこからネットユーザーは、二人の恋愛を綴ったあのアカウントに辿り着いた。世論は一気に炎上した。一方で、私は弘行に関する投稿をすべて削除していたため、ネット上では逆に「愛人」扱いされた。清美のファンたちは、私が二人の関係に割り込んだのだと思い込んだ。私の個人情報は晒され、罵倒や脅迫が次々と届いた。「ごめん、彩織……」弘行は低い声で言った。「君まで巻き込むなんて思ってなかった」彼を見つめながら、私はただ、哀れだと思った。「弘行、あなたはいったい誰を愛してるの?」私は静かに問うた。「私?清美?それとも、あなた自身?」彼は沈黙した。答えは、私たち二人とも分かっている。ほどなくして、清美も病院に現れた。これは私たちが袂を分かった後、初めての顔合わせだった。彼女はずいぶん痩せ、顔色も悪く、かつての輝きはすでになかった。「彩織……」彼女は言いかけて、言葉を飲み込んだ。私は軽く
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第8話
私は整理した証拠をすべてネットにアップした。弘行との婚約写真、卒業写真、そして三人で撮った写真も。時間の流れははっきりしていて、真実は一目瞭然だった。世論は瞬く間に逆転した。清美は、愛のために勇敢に戦った悲劇のヒロインから、誰もが忌み嫌う愛人へと変わった。彼女の全ての広告契約は取り消され、ほかの仕事上の提携も次々に解消された。弘行も、浮気のことで会社を解雇されたらしい。二人がどうなろうと、もう私には関係のないことだった。港市での仕事は順調で、新しいプロジェクトも良い成果を上げた。会社は私を昇進させ、給料も上げてくれた。私は新しいスキルを学び、新しい友人にも出会った。生活は少しずつ、新しいもので満たされていく。たまに過去を思い出すこともあったが、もう悲しくはならない。ただ感慨深く思うだけ。時間は、本当にすべての傷を癒すのだと、私は知った。半年後、清美の母親である美世(みよ)から電話がかかってきた。「彩織、お願い」向こうの声は嗚咽で震えている。「清美をどうか許して。もう彼女は十分辛い思いをしているの……」「おばさん、私は彼女を狙ったわけじゃありません」私は静かに答えた。「すべて彼女自身の選択です」「でも、今清美は仕事も見つからず、外に出ても人々に指をさされて……彼女はまだ若いのよ!」美世は泣き崩れた。「彩織が子どもの頃、私はずっとあなたを大事にしてきたでしょう。どうか清美を助けて」私はしばらく沈黙した。幼い頃、美世は確かに私によくしてくれた。両親は仕事で忙しく、私はよく清美の家に預けられていた。美世はいつも美味しい料理を作ってくれ、新しい服を買ってくれた。しかし……「おばさん、もし今ネットで叩かれているのが私だったら、あなたは私のために言ってくれますか?」電話の向こうは沈黙した。答えは言わなくても分かる。「ごめんなさい、おばさん」私は言った。「彼女を助けることはできません」電話を切り、私は少し寂しい気持ちになったが、後悔はなかった。人は、自分の選択に責任を持たなければならない。清美も、弘行も、そして私も。年末、会社の年次総会で、私は年間優秀社員に選ばれた。壇上に立ち、拍手する人々を見ながら、私はふと現実感を失いそうになった。一年前の今日
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第9話
年明け、私は港市支社の管理業務を引き継いだ。忙しくも充実した日々だった。北川始(きたがわ はじめ)はとても良い仕事のパートナーで、専門性が高く、几帳面な一方で、ユーモアのある男だ。私たちは順調に仕事を進めている。時折、一緒に食事をしたり、仕事の話をしたり、生活の話をしたりもした。彼は私の過去を決して詮索せず、私もあまり話さなかった。このほどよい距離感が心地よかった。三月のある日、私は弘行から電話を受けた。半年以上ぶりの、彼からの連絡だった。「彩織、俺、結婚するんだ」彼が言った。私は一瞬言葉を失い、ただ「おめでとう」と返した。「清美と」「……そう」電話の向こうはしばらく沈黙した。「何も言いたいことはないのか?」彼の声には、かすかな期待が混じっていた。私は少し考え、「幸せになってね」と答えた。心からの祝福だった。互いに選んだ相手なら、幸せであれ。もう他人を苦しめず、自分も苦しめないでほしい。弘行は苦笑した。「君は相変わらずだな」「人は変わるものよ」と私は言った。「でも、あなたたちには本当に幸せになってほしい」電話を切り、私はそのまま仕事の書類に向かった。心は静かで、波立つことはなかった。夜、始と夕食を共にしていると、私はついその件を口にした。彼は優しい目で私を見つめた。「悲しい?」私は首を横に振った。「もう、悲しくはない」「それならいい」と彼は微笑む。「価値のない人のことで悲しむのは、自分を裏切ることだから」私は頷いた。食後、私たちは川沿いを散歩した。春の気配を帯びた夜風が頬を撫でる。「彩織」始が突然足を止めた。「言いたいことがあるんだ。ずっと前から」私は振り返って彼を見る。「今君はまだ、新しい恋に踏み出す準備ができていないかも」彼の瞳は真剣で、優しかった。「でも、俺は待つつもりだ」私は言葉を失った。「すぐに答える必要はない」と彼は笑った。「ゆっくりでいいよ」私は彼を見つめ、ふと何年も前のことを思い出した。弘行もかつて、こんな風に私を見つめていた。その時は、愛が永遠だと信じていた。でも今わかった。永遠なのは愛ではなく、変化だと。「始」私は小さな声で言った。「少し、時間をちょうだい」彼は頷いた。「いいよ」私は家に帰り、パソコンを開くと、清美か
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第10話
夏が訪れたころ、私は港市で家を買った。広くはないけれど、とても居心地がいい。内装はすべて私の好みに合わせ、シンプルで落ち着いた空間にした。引っ越しの日には、始が手伝いに来てくれた。彼は港市の夜景を描いた一枚の絵を贈ってくれた。「新しい生活へようこそ」と彼は言った。私は笑って受け取り、「ありがとう」と答えた。私たちは一緒に料理をして、食事をして、話をした。まるで昔からの友人のように、自然だった。「実は、港市に来たばかりのころは、とても迷っていたの」私は言った。「これからどうなるのか、分からなくて」「今は?」と彼が聞く。「今はね、すべてがうまくいっている気がする」彼は微笑んだ。「それなら、よかった」食後、私たちはバルコニーに座って星を眺めた。港市の夜空は澄んでいて、星がひときわ明るかった。「彩織」始が静かに言った。「君がどんな経験をしてきたのか、俺は分かっている」私は彼のほうを振り向いた。「君の過去なんて気にしない」星明かりの下で、彼の眼差しはとても優しかった。「俺はただ、君の未来に関わりたいだけなんだ」胸が、そっと揺れた。「始、私……」彼は手を伸ばし、私の手を握った。「急いで答えなくていい。俺は待てるから」彼の手は温かく、掌は乾いていて、確かな安心感があった。彼を見つめながら、ふと、私は思った。もしかしたら、本当に新しい恋を始めてみてもいいのかもしれない、と。彼がどれほど素晴らしい人だから、というわけではない。ただ、私自身が、もう準備できていたのだ。「……うん」私はそっと答えた。彼は一瞬きょとんとし、それから笑った。その笑顔は、星明かりよりも眩しかった。その瞬間、私は悟った。本当にふさわしい人とは、無理に自分を変える必要も、我慢して妥協する必要もないのだと。ただ、ちょうどいいタイミングで現れて、ちょうどいい温もりをくれるのだ。春の風のように、夏の雨のように。すべてが、ごく自然に。年末、私は支社の副社長に昇進した。仕事は順調で、始との関係もとても安定していた。焦らず、慌てず、ゆっくり知り合い、ゆっくり寄り添う。その感じは、とても心地よかった。ときどき、弘行と清美の噂を耳にすることもあった。二人は結婚し、郊外のアパートで暮らしているらしい。弘行は何度
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