窓から差し込む春の陽光を吸い込み、その髪は淡い金色の絹糸のように柔らかな輝きを放っている。廊下を歩く彼女の背中を、誰もが息を呑むようにして見送っていた。透き通った青い瞳は、まるで遠い異国の海か、あるいは一点の曇りもない冬の空を切り取ったかのようだ。その瞳に見つめられれば、誰しもが自分までもが清らかな存在になったような錯覚に陥る。 彼女はいつも、静謐な微笑みを絶やさない。誰に対しても分け隔てなく丁寧で、その仕草一つひとつに育ちの良さと知性が滲み出ている。試験の結果を貼り出した掲示板の頂点には、常に彼女の名があった。放課後のグラウンドで風を切って走る姿は、見る者の胸を熱くさせるほどに躍動的で美しい。学年一の美少女、あるいは女神や天子という称号さえ、彼女の完璧さを形容するにはあまりに凡庸に思えた。 だが、その光の輪の中に、ユウの居場所はない。いや、あろうはずがない。 ユウは、喧騒から切り離された教室の隅で、ただ一人、自分の呼吸の音だけを聞いていた。人付き合いという、正解のない迷路を歩く術を、ユウは知らない。他人と向き合うたびに、心に小さなささくれができていくような感覚。いつからか、人を信用するという行為が、自分自身の柔らかな部分を無防備に晒すことと同じだと感じるようになっていた。 そんなユウにとって、彼女という存在はあまりに眩しく、同時に、何の意味も持たない幻影のようなものだった。薄暮の公園、凍える涙 傾きかけた太陽が街を長い影で浸し、空の端から藍色がじわじわと滲み出していた。暦の上では春が近づいているとはいえ、陽が落ち始めれば空気の刃は鋭さを増し、肌を刺すような寒さが戻ってくる。 学校からの帰り道、通り慣れた公園のそばを通りかかったとき、不意に視線の端で何かが揺れた。足を止めるつもりなどなかったのに、網膜に焼き付いた色彩が、意識を無理やり引き戻す。 そこには、自分と同じ見慣れた制服を纏った少女がいた。街灯もまだ灯らない薄暗がりの中、彼女の頬を伝う一筋の光。それが、静かに溢れ落ちる涙だと気づくのに、そう時間はかからなかった。 関わるべきじゃない。心の中の防波堤が、冷淡な警告を発する。他人の抱える事情に首を突っ込むほど、自分は親切でもなければ、他者への信頼も持ち合わせてはいないのだ。 追い払うように背を向けて歩き出すと、鋭い風が襟元を抉るように吹き抜
Last Updated : 2026-01-21 Read more