植物状態となった夫、金杉亘(かなすぎ わたる)を支えて五年。私は甲斐甲斐しく尽くし、あらゆる苦労を乗り越えてきた。しかし、彼が目を覚ましたその日に贈ったのは、私の妹への何億円ものジュエリーと、溢れんばかりの愛の告白だ。――これは何かの間違いだ。そう信じたい。根気よく説明すれば、この五年間にわたって彼を支え続けてきたのは私なのだと、きっと分かってもらえるはず。そう思っていたのに、彼の親友との会話を耳にするまでは。「亘、この五年間お前を支えてきたのは羽純さんだって分かってるんだろ?なぜ彼女を裏切るんだ?少しも情はないのか?」「もう何年も俺の妻でいたんだ、彼女もそれで満足だろう。俺が愛してるのは、いつだって佳純だ。羽純には申し訳ないと思ってる。もし彼女が本当に傷つくのなら、金杉グループの株を5%譲ってもいい」扉一枚を隔てた廊下で、私は涙をこぼした。――彼は最初から知っていたのだ。彼を介護していたのが私であることを。ただ、私を愛していないだけだ。それならば、若かりし頃の自分のためにも、最後の一度だけ彼に道を譲ろう。これからは、お互いに他人となり、二度と会うこともないだろう。書斎の外で、内服液剤が入った器を持つ指先が白く強ばっている。亘の言葉の一つひとつが重く響き、ズタズタになった私の心に、汚れて湿った雑巾を押し付けられたかのようだ。重苦しく、息が詰まるほどの痛みの中で、意識だけが残酷に冴えわたっていく。「意識がなかった五年間、嫁いできたのが佳純じゃなくて本当によかった。彼女は優しい性格だし、母さんは気が強い。きっと佳純なら耐えられなかったはずだ。植物状態になった当時は、彼女を引き留められなかった。でも、これからの人生、もう二度と彼女を裏切りたくないんだ」ドン!亘の親友である岩辺和成(いわべ かずなり)は、昔から血の気が多い。「自分が何を言ってるか分かってるのか?用が済んだら切り捨ててもいいと言うのか!まじで最低で勝手だな!羽純さんが五年間もお前を支え続ける姿を、俺たちは見てきた。あんなにできた女性はいない。それに比べて、あの佳純はどうだ?当時はわがまま放題で、お前が植物状態になった原因を作っておきながら、さっさと逃げ出したじゃないか!目覚めた後も、お前が義理の兄だと知りながら思わせぶりな
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