「誰なんだろ? 俺にお客様……?」 首を傾げながら、俺は記憶の糸を辿る。俺に会いに来る物好きなんて、この城にいただろうか。しかも「ルナに会いに」と言っていたということは、俺の表の顔ではなく、何らかの深い事情を知る人物なのかもしれない。 リリスとルフィアも顔を見合わせ、不思議そうに俺の後に続く。静寂に包まれた書庫の重厚な扉の向こうで、一体誰が俺を待っているのか。ダンジョンへ向かう前に、どうやら一波乱ありそうな予感がした。♢書庫の再会と、幼馴染の小言 重厚な革表紙の本を捲りながら、書庫の静寂に身を浸していた。ダンジョンへ行く気満々だった体には少し酷な待ち時間だったが、不意に廊下からパタパタと軽やかな足音が近づき、扉が勢いよく開かれた。「レイくん! やっと見つけました……。何度来ても外出中って言われましたので、嫌われてしまったかと思いましたよ!」 聞き覚えのある、鈴を転がしたような透き通った声。そこには、頬をぷっくりと膨らませて、不満げな表情を隠そうともしないフィーが立っていた。お客様って……なんだ、フィーのことだったのか。「えへへっ。あのね~、最近、冒険に出てるんだぁ~」 再会の喜びを込めて笑顔で答えると、フィーの表情は一瞬で複雑なものに変わった。大きな瞳を不安げに揺らし、心配と寂しさが入り混じったような、今にも泣き出しそうな顔で俺を見つめる。「そ、そうなのですか……。それは、危ないのではないのですか? それよりも、王子であるレイくんが冒険をされていて……いいのですか?」 彼女は一歩踏み出し、縋るような視線を向けてきた。確かに、何度も何度も足を運んでくれた彼女からすれば、ようやく会えたと思ったら「命がけの遊び」に夢中になっていたと聞かされたのだ。その心境は察するに余りある。「だよねぇ……。でも、俺、どうしても自分の力で外の世界を見てみたかったんだ」 王子という立場を考えれば、不謹慎なのは百も承知だ。けれど、俺を心配してわざわざ会いに来てくれる彼女の優しさを感じながらも、俺は冒険で得たあの高揚感を忘れることはできなかった。 不満そうに眉を寄せながらも、視線を逸らさずに俺を見つめるフィー。後ろでは、リリスとルフィアが「この人は誰?」と言いたげに、少し警戒した様子で彼女を見つめている。どうやら、ここでもまた新しい「嵐」が起きそうな予感がした。♢予
Last Updated : 2026-01-27 Read more