LOGIN異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
View More「誰なんだろ? 俺にお客様……?」
首を傾げながら、俺は記憶の糸を辿る。俺に会いに来る物好きなんて、この城にいただろうか。しかも「ルナに会いに」と言っていたということは、俺の表の顔ではなく、何らかの深い事情を知る人物なのかもしれない。
リリスとルフィアも顔を見合わせ、不思議そうに俺の後に続く。静寂に包まれた書庫の重厚な扉の向こうで、一体誰が俺を待っているのか。ダンジョンへ向かう前に、どうやら一波乱ありそうな予感がした。
♢書庫の再会と、幼馴染の小言重厚な革表紙の本を捲りながら、書庫の静寂に身を浸していた。ダンジョンへ行く気満々だった体には少し酷な待ち時間だったが、不意に廊下からパタパタと軽やかな足音が近づき、扉が勢いよく開かれた。
「レイくん! やっと見つけました……。何度来ても外出中って言われましたので、嫌われてしまったかと思いましたよ!」
聞き覚えのある、鈴を転がしたような透き通った声。そこには、頬をぷっくりと膨らませて、不満げな表情を隠そうともしないフィーが立っていた。お客様って……なんだ、フィーのことだったのか。
「えへへっ。あのね~、最近、冒険に出てるんだぁ~」
再会の喜びを込めて笑顔で答えると、フィーの表情は一瞬で複雑なものに変わった。大きな瞳を不安げに揺らし、心配と寂しさが入り混じったような、今にも泣き出しそうな顔で俺を見つめる。
「そ、そうなのですか……。それは、危ないのではないのですか? それよりも、王子であるレイくんが冒険をされていて……いいのですか?」
彼女は一歩踏み出し、縋るような視線を向けてきた。確かに、何度も何度も足を運んでくれた彼女からすれば、ようやく会えたと思ったら「命がけの遊び」に夢中になっていたと聞かされたのだ。その心境は察するに余りある。
「だよねぇ……。でも、俺、どうしても自分の力で外の世界を見てみたかったんだ」
王子という立場を考えれば、不謹慎なのは百も承知だ。けれど、俺を心配してわざわざ会いに来てくれる彼女の優しさを感じながらも、俺は冒険で得たあの高揚感を忘れることはできなかった。
不満そうに眉を寄せながらも、視線を逸らさずに俺を見つめるフィー。後ろでは、リリスとルフィアが「この人は誰?」と言いたげに、少し警戒した様子で彼女を見つめている。どうやら、ここでもまた新しい「嵐」が起きそうな予感がした。
♢予想外の志願者俺は手にしていた本を閉じると、わざとらしく小さく息を吐いた。
「前にも話したじゃん。冒険がしたいんだよねーって♪ フィーなら分かってくれるかもって思ってたんだけどなぁ」
ほんの少しだけ残念そうな色を瞳に宿し、椅子から立ち上がる。そのまま視線を外して、固まっているフィーの横を静かに通り過ぎ、書庫の重厚な扉を抜けた。
……少し意地悪だったかな。そう思いながら廊下を数歩進んだ時だ。背後から、一生懸命に床を叩くパタパタという可愛らしい足音が追いかけてきた。てっきり呆れて帰ってしまったか、あるいはルナが追いかけてきたのかと思ったが、振り返った先にいたのは、肩で息を切らしたフィーだった。
「わ、わたしもお供すれば問題解決ですわ!」
彼女は乱れた呼吸を整える間も惜しむように、満面の笑みでそう言い放った。その清々しいまでの宣言に、俺は思わず足を止めて呆然としてしまう。
……えぇ? なんの問題が解決したんだろ?むしろ、高貴な身分である彼女が危険な冒険に同行するなんて、火を見るより明らかな問題発生な気がするんだけど。チラリと彼女の背後を見れば、付き添いの護衛たちが「とんでもないことになった」と言わんばかりに顔色を真っ白にさせて、小刻みに震えているのが見えた。
ここで立ち話をするには、あまりに内容が不穏すぎる。俺は仕方なく、今出てきたばかりの書庫へと彼女を促し、再び扉を閉めて話を続けることにした。
「フィー……本気で言ってるの? 冒険って、昨日今日みたいなピクニックじゃないんだよ?」
座り直した俺の正面で、フィーは覚悟を決めたように力強く頷いた。彼女の真っ直ぐな瞳には、もう迷いは見えなかった。
♢譲れない想いと、二人きりの招待俺は少し困り果てて、正面に座る彼女の顔を覗き込んだ。
「あのさぁ、冒険だよ? 魔物とか……魔獣とかと戦うんだよ。野営もするかもだし、外で調理したりするんだよ? 両親が許すわけ無いでしょ~」
一緒にいたいと言ってくれるのは、正直に言えば飛び上がるほど嬉しい。けれど、外の世界は甘くない。エリゼくらいの強さや覚悟がなければ、命がいくつあっても足りないのだ。
「レイくん、わたしをバカにしていますね……むぅ、わたしだって野営をしたことありますわ! それに、両親を説得してみせますわ!」
フィーは頬を膨らませて猛反発してきた。……いや、その野営って、護衛に囲まれた安全な旅の途中のことじゃないかな? 命のやり取りをする討伐行や、薄汚い盗賊との殺し合い、死に直結する罠の解除……彼女がそれらをこなす姿が、どうしても想像できなかった。
だが、その守護者たちの奮闘も、この伝説級のドラゴンには届かなかったらしい。「アシュテリアが俺を攻撃した時、周りの警護の奴らが守ろうとしてくれてたみたいだけど……まあ、アシュテリアには相手にもされていなかったみたいだなぁ」 苦笑まじりにそう告げると、アシュテリアは「ん? そうだったのですか?」と心底どうでもよさそうに首を傾げた。「羽虫が騒いでいる程度にしか思っていなかったのですよ。レイニーくんを守ろうとした心意気だけは、認めてあげてもいいのですけどねっ」(心意気だけ、か……。ヘルフレイムドラゴンからすれば、王宮の精鋭ですらその程度の認識なんだな) 実力差は残酷なほどに明白だったけれど、主のために命を懸けようとしたその忠誠心は嫌いじゃない。たとえ攻撃が通用しなくても、俺のために動こうとした者たちがいる。影の暗殺者と、忠実なる魔犬「俺を守ってくれてるヤツがいるみたいだけど? コイツラも強いのかなぁ?」 気配の主――壁の影や天井の隅に潜んでいる者たちを指さして聞いてみた。するとアシュテリアは、当然のことを聞かれたと言わんばかりに、また首を傾げる。「あぁ、シャドウアサシンですか? 強いと思うのですよ? って、何に対して強いと聞いてるのか分からないんですけれど……人間界ならかなり強いと思うのです。というか、ここに弱いヤツはいないんじゃないかなぁ……。メイドでも、人間界ならば上級の冒険者のレベルだと思うのですよ」(メイドで上級冒険者レベルって……この王宮の基準、どうなってるんだよ) アシュテリアと比べればどうしても霞んでしまうが、彼女が強すぎるだけで、周りの配下たちも十分すぎるほどに規格外らしい。 シャドウアサシン。影に潜み、音もなく目標を仕留める暗殺の専門家か。彼らがいれば、村の隠れた防衛線としては完璧だろう。 だが、さすがに全員を連れ帰るわけにはいかない。(あまりに魔物だらけにすると、村じゃなくて魔王領になっちゃうしなぁ。まあ、余裕ができたら徐々に送り込めばいいか……。まずは、目に見える警備が必要だよな) 俺は視線を戻し、さっきから洞穴の前で行儀よく俺を待っている一団を見つめた。「ここのワンコの群れは欲しいな……強そうだし、カッコいいし」 そこにいたのは、燃え盛るような眼光と、しなやかで力強い体躯を持つ黒い犬の群れだ。威圧感はあるけれど、
「むぅ……いやぁ。わたしは、レイニーくんと一緒に行動をともにすることを望みますっ」 アシュテリアは途端に頬を膨らませ、不満を露わにした。その様子は、まるでおもちゃを取り上げられた子供のようだ。「でも、村の守護者が欲しいんだよなぁ……」(あの無秩序の森にはワイバーンもいたし、他にも不穏で強そうな魔物の気配が充満してたからな。彼女がいてくれれば安心なんだけど……) 村を守ってほしい俺と、隣にいたい彼女。伝説のヘルフレイムドラゴンをどう説得したものか、俺は頭を悩ませることになった。 闇の支配者と、魔王の遺産 「ここで暮らすつもりがないのなら……ここの守護者とかを連れていけば良いんじゃないのかなぁ? 結構つよいと思うのですよっ」 アシュテリアは小さな胸を張り、自信満々に提案してきた。 言われてみれば、ここに来るまでの道中、王宮の至る所で見たこともない魔物たちを見かけた。番犬のような魔獣や、重厚な鎧に身を包んだ巨漢、無機質な骨の兵隊。さらには上空を舞う、黒炎を纏ったワイバーンのような魔物まで。(あいつら、全部連れていっていいのか? 闇の王の槍を手にしたことで、俺がここの新しい主になったから、みんな配下になったってことなのかな……) もし彼らを村に連れて帰れるなら、これ以上ない鉄壁の警備体制が整うだろう。戦力としても申し分ない。「連れて行って良いなら、村の警備と戦力になりそうだよな。でも、勝手に連れて行って良いのかな?」 俺が首を傾げて尋ねると、アシュテリアは当然だと言わんばかりに、弾んだ声で答えた。「それは、当然なのですよ。この闇の世界は、レイニーくんの支配下になったのですし、新たなる命令をすれば、みな従いますよ……ご主人様っ♪」 彼女はニコっと愛らしく微笑み、俺の腕に自分の腕を絡めてきた。その無邪気な仕草とは裏腹に、口にされた言葉の内容はあまりに衝撃的だった。(……え? 闇の世界? えっと……他の地域に転移をしたんじゃなくて? また異世界に来ちゃった感じ??) 混乱が頭を支配する。ただの遠出だと思っていたのに、いつの間にか別の世界を丸ごと一つ手に入れてしまったのだろうか。(戻れるのかなぁ? あ、でも……連れて戻ればいいって言ってたし、行き来はできるっぽいよね) 思わぬ形で「魔界の軍勢」を手に入れることになった俺は、まずはどの魔物を村へ
「残念だけど……俺、今さぁ……加減が出来なくなっちゃってるんだよねっ♪ 瞬殺しちゃったらごめんね」 ニコっと笑う俺の瞳には、一切の慈悲は宿っていない。 それまで余裕を崩さなかったドラゴンが、バッと跳ねるように起き上がった。その巨躯は目に見えて震え、黄金の瞳には「死」の恐怖が鮮明に浮かんでいる。「あ、え? あの……ごめんなさい! 寝ぼけていただけなのですっ」 先ほどまでの尊大な口調はどこへやら、ドラゴンは慌てふためき、まばゆい光と共にその姿を縮めた。 煙が晴れた先にいたのは、禍々しい竜ではなく、地面に手をつき、涙目で必死に頭を下げる一人の可憐な少女だった。 漆黒の守護竜と、紫の瞳の少女 あ、まあ……そうだよな。 自分の家に勝手に入ってきた知らない奴が、寝込みを襲うように近寄ってきたら、誰だって驚くし、身を守るために全力で攻撃しちゃうよな。現状を冷静に分析してみれば、悪いのは完全に不法侵入した俺の方だ。 目の前で震える可愛らしい少女の姿を見ていると、さっきまでの禍々しい槍を振るう気なんて一気に失せてしまった。俺は憑き物が落ちたように肩の力を抜くと、素直に言葉を返した。「まぁ、人の寝床に勝手に入った俺が悪いんだよな……こっちこそ、ごめんねっ」「うぅ……ホントに死ぬかと思ったぁ……。いきなり攻撃をしちゃって、ごめーんっ!」 俺の謝罪を聞いて極限の緊張から解放されたのか、彼女は大きな瞳に涙を溜めながら、勢いよく俺に抱きついてきた。 擬態した彼女は、薄紫色の柔らかなセミロングの髪を揺らし、深い紫色の美しい瞳を潤ませている。その小さく温かな体温が伝わってきて、さっきまで山を吹き飛ばすような炎を吐いていたドラゴンだとは到底信じられない。 彼女は俺の胸元に顔を埋めてひとしきり震えていたが、やがてハッとしたように身を引き、その場に跪いた。 漆黒の守護竜と、永遠の誓い 「あの……一生おそばにいさせてください。そして、永遠の忠誠を捧げさせてくださいっ!」 いきなり可愛らしい少女に忠誠を誓われた。(ん? まだ寝ぼけてる? 意味がわからないぞぉ??)「え? 忠誠って……? まだ寝ぼけてるのかな?」 小さな女の子と言っても、俺より歳上っぽい……12歳くらいかな。そんな女の子が跪いてお願いをしてる。「寝ぼけてないのです……さすがに目は覚め
この黒い石で築かれた巨大な建造物は、夜空に浮かぶ影のように見え、高くそびえる塔がいくつも立ち並んでいる。塔の頂には常に暗雲が立ち込め、闇の火が燃え盛り周囲を照らし出していた。宮殿の門には重厚な鉄の扉があり、その威圧的な姿は訪れる者に畏敬の念を抱かせる。 宮殿の内部に足を踏み入れると、黒と赤を基調とした豪華な装飾が目に飛び込んできた。壁には黒曜石とルビーが嵌め込まれ、煌びやかな反射が美しい広がりを見せ目を引く。広いホールには豪華なシャンデリアが吊り下げられ、闇の火によって妖しく輝いていた。大理石の床には複雑な模様が刻まれ魔法陣のようにも見え気になってしまう。各部屋の入口には重厚なカーテンが掛けられていた。 王宮は豪華さだけでなく、厳重な警備が施されていた。闇の魔力によって強化された衛兵が宮殿の各所に立ち並び、無言で鋭い目を光らせていたが俺には無反応だった。宮殿全体には強力な魔法の結界が張り巡らされ、侵入者を拒む仕組みとなっており、結界に触れる者はその場で強力な呪いを受ける危険があるが、結界が可視化して見えるので問題は無かった。 さらに、王宮の内部には闇の王の魔法によって作られた監視の目が設置されており、不審な動きを感知すると即座に警報を発し衛兵を呼び寄せるらしい。廊下や部屋の随所には隠された罠が仕掛けられており、毒矢や落とし穴、呪いの魔法など多岐にわたる罠が侵入者を待ち受けている。また、闇の王が飼っている巨大な護衛獣も存在し、王宮の特定の区域を守っている。これらの護衛獣は闇の魔力を帯びており、通常の武器では対抗できないという説明がいろいろと伝わってきた。黒炎の洗礼と、想定外の守護竜 宮殿のあまりに禍々しい光景に、俺は思わず首を振った。 ここに住めと言われている気がするけれど、流石にここを拠点にするのは無理がある。ディアブロや他の悪魔たちなら喜ぶだろうけれど、人間であるルフィアや、神聖な気配を持つ天使たちをこんな場所に住まわせるわけにはいかない。「うん、ここは豪華で広くて良いんだけど……却下だな……」 早々に宮殿を後にし、広大な庭へと出ると、そこには山ほどもある巨大な影が横たわっていた。漆黒の鱗に、絶えずゆらゆらと立ち昇る禍々しい黒炎。その熱によって、周囲の山肌は赤く焼け、普通の草木が一本も生えない異界と化している。 薄暗い洞穴の中で丸まるそ