本番当日、僕は授業中も落ち着かないほどの高揚感に包まれていた。昼休みの部室では、同期の松本(ガジン)が実は二浪の成人だと知り驚愕する。平穏な日常を望んでいたはずの僕だったが、何が起こるかわからない日常の交流が心地よく感じられるほど、部は僕にとって大切な居場所になっていた。本番直前、僕は気恥ずかしさを抱えつつも、同じ一年生の橋本さんを「裕子ちゃん」と名前で呼ぶ。そんな甘酸っぱいやり取りや、舞台裏での佐々木先輩の手伝いを通じ、僕は本番前の高揚感に浮かされて授業をサボり、自分の時間を舞台に捧げることを決める。 迎えた開演。僕はサイドスポット操作という重責を担い、暗闇の中でスタンバイする。上演された演目「the end of the world」は、学生時代に演劇を共にした三人の男女が、卒業後に直面する現実と悲劇を描いたものだ。家業の倒産と借金に苦しみ自殺を選んだ芝浦(ブラザーさん)と、彼を演劇の世界へ呼び戻したことに罪悪感を抱く小山(金八さん)、自殺の兆候に気づくことができなかった笹田(久美子さん)そして、亡き兄の遺志を継ごうとするカズマ(骨折さん)の熱演が、観客の心を激しく揺さぶる。僕は劇の山場、骨折さんが叫ぶ「お前さえいなければよかったんだ!」というセリフに合わせ、無事に寸分違わぬタイミングでサイドスポットを操作することができた。 全五公演は大盛況に終わり、最終日には立ち見が出るほどの熱気に包まれた。鳴り止まない拍手の中で行われたカーテンコール。その光景を照明席から見守っていた僕は、物語が現実を変える瞬間に立ち会い、かつてない達成感を覚える。撤収作業である「バラシ」を経て、非日常から日常へと戻っていくホールを眺めながら、寂しさと共に次への強い期待を抱いていた。 打ち上げの席で、僕は苦いビールを口にし、大人への階段を一段登る。週が明け、寝不足のまま訪れた部室で、部長から十一月の新人公演が一年生主体で行われることを聞かされる。脚本を書きたいと意気込むガジンから「役者をやってみないか」と誘われたとき、あんなに人前に出ることを避けていたはずなのに「やってみてもいいかな」という言葉が自然と漏れた。ガジンの「どっぷり演劇の沼にはまっている」という言葉を、僕は否定しなかった。演劇に出会い、自分の殻を破って新しい世界へ一歩踏み出す勇気を得たような気がしていた。 公演後、演
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