地震が襲った時、夫の白井松陽(しらい しょうよう)は私――森田心美(もりだ ここみ)を突き飛ばし、一目散に彼が支援する貧困学生の木下琴音(きのした ことね)を助けに向かった。私は崩れた壁のレンガの下敷きになり、肝臓を損傷し、肋骨を二本骨折した。そしてお腹の赤ちゃんも低酸素で命を落とした。救命室へ運ばれる途中、夫が医師の腕をつかんで叫ぶ声が聞こえた。「まず琴音を救ってくれ!彼女は体が弱く、貧血も起こしやすい……心美から輸血すればいいんだ。二人は同じ血液型だから」この病院は白井家の傘下の私立病院だった。医師は一瞬躊躇したが、震える手でその指示に従った。私の治療は遅れ、亡くなった胎児が子宮内で感染を引き起こし、大量出血のため緊急手術が必要となった。手術室は静まり返り、隣の部屋から夫が別の女性を優しくささやきかけ、慰める声がかすかに聞こえてきた。やがて、私のお腹は平らになった。真っ白な天井を見つめながら、汗と涙が一つになって頬を伝った。私はようやく電話をかけ、かすれた声で絞り出すように言った。「先生……来週の貧困地域教育支援プロジェクト、私も参加させてください」「良かった、心美!前から君が最適だと思っていたんだ。ただ……白井さんが同意してくれるかな?」私は静かに答えた。「彼の許可は必要ありません」今まで、重い病気の母に心配をかけまいと、長年耐え、完璧な家庭を演じてきた。元気な孫の顔を見せて、母を喜ばせてあげたかったのに。しかし、それが私の妥協だと松陽に誤解された。彼がつけ上がるなら、私もかつての情に縛られることはない。離婚すればいい。家族なんて、私を縛りつけるものじゃない。電話の向こうの曽我先生は詳しくは尋ねず、ただ嬉しそうに電話を切った。看護師は回診に来て、目を赤くしながら呟いた。「本当に残念でした……もし出血がもう少し少なかったら、赤ちゃんは助かったかもしれませんのに」見知らぬ人からの思いやりの言葉に、私を無理やり輸血させた夫のことを思い出し、涙がこぼれそうだった。看護師に支えられ、よろよろと隣の部屋へ向かった。だが琴音は松陽にもう連れて帰られたと告げられ、ベッドの足元に落ちていた小さなメモだけが見つかった。それは謝罪の手紙だった。【俺、白井松陽が真剣に反省する。真っ先に駆けつけられず、
Read more