第16話 天空の通行書 「金だ! 金を出せば、どんな扉でも開く! あの女の部屋の鍵だって、いくら積めば手に入ると思っているんだ!」 アラタの咆哮が、ホテルのスイートルームに響き渡る。 彼はもはや、45歳の分別ある社長ではなかった。自分の思い通りにならない「おもちゃ」を前に地団駄を踏む、醜い子供だった。 そこへ、ことねが仕掛けた「LINK」のホログラムが、アラタの目の前に鮮やかに浮かび上がった。 『アラタさん。あなたは先ほど、天界へ帰るための最後の通行証を、自ら破り捨てたわ』 「また貴様か、橘ことね! 警察にでも通報するがいい。弁護士はいくらでも用意できる。私は被害者だ、多額の支援を裏切られた哀れな投資家なんだよ!」 その言葉を聞いた瞬間、隣に控えていた総悟が、耐えきれずに吹き出した。 「ハッ! 投資家? 笑わせんじゃねぇよ。お前がやってるのは、ただの『死に損ないの買い叩き』だ。吉原の客だって、振られたらもっとマシな引き際を知ってるぜ。女の部屋の鍵を金で買おうなんて、浅ましいにも程がある」 総悟の言葉は、鋭い刃となってアラタのプライドを切り裂く。 「なんだと……! 無礼な、私は一国の……」 『……いいえ、あなたはもう、何も持っていないわ』 ことねの声が、冷たく、重く響く。 瞬間、アラタのスマホに次々と通知が入り始めた。 ――高級ホテルの全店舗における、宿泊予約システムの完全ダウン。 ――過去の脱税、および外注先への不当な圧力に関する内部告発資料の、全メディアへの一斉送信。 アラタが金で作り上げ、握りつぶしてきた「汚れ」が、ことねの筆によって白日の下に晒されたのだ。 「ば……馬鹿な! 私の資産が……私の帝国が!」 「あなたが積み上げたのは、金じゃない。他人の涙と、不条理の塊よ。アラタ、何度も反省を促すチャンスはあった。でも、あなたはそれを嘲笑った」 ことねは、端末の「最終審判」のボタンに指をかけた。 「天界に帰れないシステム。それが今のあなたのステータスよ。反省しない魂に、明日は来ない。あなたはこれから、自分の罪を一つずつ数え直す『輪廻転生コース』へと送られる」 「待て、待ってくれ! 金ならいくらでも出す、助けてくれ!」 アラタの惨めな叫
最後更新 : 2026-03-08 閱讀更多