「ダンテ・モレッティ様でいらっしゃいますか」電話口の声は若い男のものだった。丁寧で、感情のない声。「私はデイヴィッド・トンプソンと申します。トンプソン&アソシエイツのパートナー弁護士です。アレッシア・モレッティ様より依頼を受け、離婚協議および財産分与についてご連絡しました」ダンテの血が、一瞬で凍りついた。都心の法律事務所へ向かう間、彼はかすかな希望を捨てきれずにいた。――会えるかもしれない。たとえ条件の話だけでもいい。無事だと、直接確かめられれば。だが会議室にいたのは、トンプソンただ一人だった。「妻はどこだ」「申し訳ありません、モレッティさん。本日、私の依頼人は出席しておりません」トンプソンはそう言うと、席に着き、ブリーフケースから分厚いファイルを取り出した。「これは彼女が準備した離婚合意書です。資産分割、扶養料、その他すべての関連条項が明確に記載されています」ダンテは、書類を見ようともしない。「会わせろ」「お気持ちはお察ししますが、私の依頼人はあなたとの面会を望んでいないことを明確にしております。この件は、私どもの弁護士を通じて処理することが最善の方法だと彼女は考えておられます」「最善の方法?」声に、危険な熱が混じる。「五年も夫婦だった相手に、顔も見せずに終わらせるつもりか?」「モレッティさん、私は単にクライアントの指示に従っているだけです。契約書をご確認いただき、異議がなければ……」「異議ならある」ダンテは立ち上がった。「俺は離婚しない」書類を掴み、引き裂く。白い紙片が、雪のように舞った。「俺が死ぬ以外に、彼女が俺から離れる方法はない!」トンプソンは無表情のまま、引き出しから同じ書類をもう一部取り出した。「モレッティ夫人はこのような反応を予期していました」トンプソンは新たなファイルをテーブルに置きながら言った。そして、もう一つ。小型の録音機。「円満に応じていただけない場合、別の手段を取るよう指示されています」「どういう意味だ?」トンプソンは再生ボタンを押した。懐かしい声が部屋に響き渡った――ダンテ自身の声だ。それに伴って、決定的な、濡れたような親密な音が。「ジェナ、お前の中でなら死んでもいい……」「やめろ」ダンテの顔から血の気が引い
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