5年目の記念日。たくさんの人に見守られる中、松本湊(まつもと みなと)は片膝をつく。「葵(あおい)、俺と結婚してください」しかし、私の心はまったく動かなかった。やはり……次の瞬間、湊は指輪を投げ捨て、ウェディングドレスを燃やし、会場をめちゃくちゃにした。それを見ている、彼の幼馴染である平野梨花(ひらの りか)もげらげらと笑っている。こんなプロポーズはもう99回目。うつ病を患っている梨花を笑わせるためだけのただの悪ふざけ。そして、湊の仲間たちも揶揄うように囃し立てる。「葵さん、どうしたんだよ?今日はなんだかつれないな。早くうんって言ってあげなよ」「俺たちは、君が本気にして慌てふためく面白い顔が見たいんだからさ」私は特に取り乱すことなく、静かに口を開いた。「ごめんね。私、一昨日婚約したんだ」湊は一瞬呆気に取られたようだったが、すぐに鼻で笑って言った。「俺以外に、お前をもらってくれるやつなんているわけないだろ?」その一言で周りはどっと笑い出し、私がいつ結婚できるかなんて賭けを始める人までいた。しかし、この人たちはまだ知らないのだ。私がプロポーズされていると聞いた本当の婚約者が、今まさに私を迎えに来てくれていることを…………彼らはどれくらい笑い続けていたのだろうか。私がずっと黙っていることに気づいた誰かが、その場をとりなそうとした。「なんだよ、葵さん。ただの冗談だろ?そんなに怒ることないんじゃないか?」私は落ち着いて答える。「怒ってなんかないよ」それを見た梨花が、湊の胸にすり寄った。「湊さん。もしかして葵さんは私のこと嫌いなのかなぁ?」湊は私に視線を向けると、眉を顰めた。「お前のせいで梨花が不機嫌になったじゃないか。謝れよ」湊が本気で怒り出しそうなのを感じ取った私は、指をぎゅっと握りしめ、素直に頭を下げる。「ごめんなさい、平野さん。嫌な気持ちにさせてしまって」プライドとは大事なものなのだろうか?ただ私が覚えているのは、梨花に謝らなかったせいで、前回、湊に地下室へ3日3晩閉じ込められたことだけ。「そういうことで、私はもう帰ってもいいのかな?」私は手元のバッグを手に取る。しかし、湊が私を掴もうと腕を伸ばしてきたので、私は反射的に避けた。その拍子に、服が
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