失恋した親友から、バーで飲んでるから迎えに来て欲しいと電話があった。バーの怪しく光るライトの下で、顔を火照らせた親友の藤堂明里(とうどう あかり)が、ある男の膝に座り、甘えた声で文句を言っている。「いったい、いつになったら結衣(ゆい)と別れてくれるの?あんな地味でつまんない女のどこがいいわけ?7年も付き合うなんて!あなたはもう、私と楽しいことした仲なのにさ。弘樹。私だって本当にあなたと別れたかったわけじゃないの。ただ、もっと私のことを大事にしてほしかっただけ!もう本当にいや!毎回、結衣を宥め終わってから会いにくるあなたを、誰もいない家で夜中まで待ってるなんてさ!」もしこの光景を自分の目で見なければ、私は信じられなかっただろう。首に明里の手を回されてる男が、私が7年間付き合い、もうすぐ結婚するはずの婚約者――小野弘樹(おの ひろき)だったことは……明里がいつも惚気たり、別れるなんて言っては大騒ぎしていた相手が、まさか……私の彼氏だったなんて。しかし、私と明里が親友でいたこの3年間、弘樹はいつも私の前で、明里のことが大嫌いだと言ってた。「あのわがまま放題なお嬢様ぶりが気に入らない」と。つまり弘樹は、ずっと嘘をついて私を誤魔化していただけだったのだ……7年も前に、弘樹と明里はもう出会っていて、その時から複雑な関係が始まっていたなんて。それは、私たちが付き合い始めるよりも、ずっと前のことだ。ということは、弘樹が会社で残業だと言っていた数多くの夜は、全て明里との愛の巣で体を重ねてたということなのだろうか?明里が私と仲良くなった後、私の前で彼氏との夜の話をわざわざしてたのも、私を嘲笑うため?次から次へと明らかになる事実に、まるで雷に打たれたような衝撃が走る。あまりの心の痛みに、そばにあった椅子の背もたれに手をかけないと、立っていることもできなかった。バーのボックス席には、弘樹と一緒に会社を立ち上げた仲間たちもいたが、皆抱き合っている二人を囃し立てるのに夢中で、薄暗い隅で一人で崩れ落ちそうになっている私には、誰も気づいてはくれない。「弘樹。明里ちゃんみたいな、可愛くてお金持ちのお嬢様に一途に7年も思われてるなんて、まじで羨ましい」「明里さんがいなかったら、会社の立ち上げ資金だって、あんなすんなり集まらなかった
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