婚約から七日目、恋人の高橋悠真(たかはし ゆうま)はガンを患う忘れられない人である伊藤美咲(いとう みさき)と結婚すると言い出した。私、浅野夏美(あさの なつみ)が首を縦に振らないでいると、彼は毎日のように私に身を引くよう説得してきた。結婚式の前日になってようやく、一通の結婚招待状が届いた。私たちの結婚計画は、新婦をすり替えて予定通りに進められていたことに、私はそこで初めて気がついた。彼は最初から、私の気持ちなどこれっぽっちも考えていなかったのだ。この瞬間、彼への思いは完全に冷めきった。だから私はプロポーズの指輪を投げ捨て、連絡先から彼に関するすべてを完全に消去して一切の繋がりを断った。そして彼の結婚式当日、国際航空プロジェクトへと参加した。それ以来、二度と会うことはなかった。……「何度も言ってるだろ、美咲はガンなんだ。末期なんだよ!俺が彼女と結婚式を挙げるのは、彼女を喜ばせて、願いを叶えてやりたいからだけだ」悠真はまたしても、美咲と結婚したいと私に要求してきたが、私は相変わらず首を横に振って同意しなかった。彼は箸をテーブルに叩きつけ、ひどく失望したような顔で私を見た。「夏美。どうしてそんな風になっちゃったんだ?」失望と非難の入り混じった彼の言葉が、すでに傷だらけの私の心に深く突き刺さった。私は呆然と顔を上げて悠真を見た。私と言い争ったせいで、彼の目にはまだ怒りの色が残っていた。悠真がここまで感情をあらわにするのを見るのは珍しかった。私の記憶の中の悠真は、どんなことに対しても冷静で、自制心のある人だった。父が亡くなった日、途方に暮れる私に寄り添い、葬儀の手配を一緒に手伝ってくれたのは彼だった。悠真の心の中の悲しみも、私に劣らないくらい深いことは分かっていた。私の父は彼の恩師だった。彼は心の中でどれほど悲しんでいても、ただ涙を堪えて目を赤くするだけだったのだ。彼はいつもとても理性的だった。しかし、そんな彼の理性も、美咲のこととなるとすべて消え失せてしまうのだ。初めて美咲に会った日のことをふと思い出した。それはとても穏やかな朝で、悠真はキッチンで私のためにみそ汁を作ってくれていた。彼の幼馴染の高木辰哉(たかぎ たつや)が美咲を連れて私たちの家にやって来た。美咲を見た瞬間、
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