로그인プロジェクトに区切りがついた後、私はこのまま研究拠点に残るつもりでいた。しかし、健一は私の健康診断の検査結果を手に、険しい顔で私を呼び出した。彼は深くため息をついた。「夏美、君の体は、もうこれほどの重圧には耐えられないんだ。私には生涯、子どもがいなかった。だから君を実の娘のように思っているんだよ。どうか私のために、自分の体を大切にしてくれないか。将来、私の老後の面倒をみてもらうためにもね。それに、海外にいる君の母親も、君のことをずっと待っているんだから」こうして、私はかつて手放したデザインの仕事を再び手に取ることになった。奪い去られたあの結婚式も、他人のものへと成り果てたあの招待状やウェディングドレスも、今ではすべてが私の創作の糧となっている。私は自分自身のデザインスタジオを立ち上げた。コンセプトは「温かくて心癒されるウェディング」。もう目を刺すようなけばけばしい薔薇の装飾はしない。ただ心を込めて、新郎新婦一組一組の好みや物語に耳を傾けた。スタジオの評判は瞬く間に広まり、ウェディングデザインの依頼がひっきりなしに舞い込むようになった。自らの手で装飾を施した式場の片隅に立ち、心から愛し合う二人が指輪を交換する姿を見守る私の眼差しは、温かな喜びに満ちていた。一度は失ったものを、私はこの手で拾い集め、そして今、以前にも増してまばゆい光の中で、誇らしく生きている。海斗は、私のスタジオで最も忠実な「ボディガード」と「裏方」になってくれた。重い資材を運び、私が深夜までデザイン画を描く時は黙って傍らで見守ってくれる。理不尽な客に絡まれそうになれば、彼は何も言わずにすっと私の前に立ち、盾になってくれた。甘い言葉こそ口にしないが、彼はその行動のすべてで、ありったけの慈しみを私に注いでくれた。ある夕暮れ時。彼は一束のマーガレットを抱えて私の前に現れた。緊張のあまり、その掌が汗ばんでいるのが見て取れた。「夏美、俺は気の利いた台詞は言えないが」彼は真っ直ぐに私を見つめた。その瞳は真剣で、微塵の揺るぎもなかった。「でも約束する。これから雷が鳴る日はずっとそばにいるし、お前の嫌いな食べ物も全部覚えておく。もう二度と、お前に辛い思いはさせない。涙も、一滴だって流させない……一生、お前を支えるチャンスをくれないか」包み隠すこと
美咲の結末は、あっという間に決着がついた。警察の裏付け捜査もすべて完了した。ガンの検査報告書の偽造、実行犯を雇っての放火教唆、さらには詐欺や名誉毀損……積み上げられた数々の罪状はどれも動かぬ証拠として突きつけられ、併合罪として彼女には無期懲役の判決が下った。裁判の当日、私は出廷しなかった。だが、真緒からの話によると、美咲は法廷でも見苦しい言い逃れを試み、「悠真を愛しすぎたあまりに過ちを犯してしまった」と泣き喚いたそうだが、裁判官や陪審員の心を動かすことは微塵もなかった。彼女が最大の武器としていた「儚げな弱さ」は、鉄壁の証拠を前にしてあまりにも脆くも崩れ去った。かつて誰もが同情を寄せたあの「清純なヒロイン」は、今や世間から激しい非難と罵りを浴びる詐欺師、そして卑劣な犯罪者へと成り下がったのだ。美咲が収監された後、悠真はやっと、自分がどれほどの地獄にいたのかを悟った。彼はまるで何かに取り憑かれたように、私の行方を血眼になって探し始めた。そしてようやく突き止めた。私がとうの昔にこの街を去り、健一が主導する国家級の研究拠点へ向かい、亡き父が生涯を愛してやまなかった事業に身を投じていることを。彼はすべてを投げ打った。研究所の仕事を辞め、家を売り払い、辺鄙な場所にある研究拠点まで私を追ってきた。そして、くる日もくる日もゲートの前に、私が姿を現すのを待ち続けた。かつての将来を嘱望された若き科学者としての、知性も気概も見る影もない。頬はこけ、服は汚れ、その眼窩には澱んだ後悔と苦痛だけが溜まっている。その姿は、まるで魂を失った生ける屍だった。警備員に何度追い払われても、彼はゲートの前に土下座し続けた。早朝から深夜まで、雨風に晒されようとも、ただ私に一目会うことだけを懇願していた。その知らせを受けたとき、私は研究室でデータの照合をしていた。ペン先が一瞬ピタリと止まったが、すぐにまた手元の作業に戻り、感情の消え失せた声で言った。「追い払って。会う気はないわ」傍らに立っていた海斗が、黙って私の肩に上着を掛けた。ゲートの方向へ冷ややかな視線を向け、低い声で言う。「……俺が片付けてくる」私は彼の手を引いて止め、静かに首を振った。「いいの。気が済めば、そのうち勝手に帰るわ」だが悠真はまだ諦めなかった。ゲートの前に居座り、通りがかる人々に
退院してすぐ、私は裏切りと炎の記憶が染み付いたあの部屋を引き払った。海斗が探してくれたのは、見晴らしのいいリバーサイドのマンションだった。都心からそう遠くないのに、静かで日当たりが良い。彼は口数こそ少ないが、家具の配置から枕元に飾られた一鉢のマーガレットに至るまで、すべてを私の好みに合わせて完璧に整えてくれた。私はすぐに仕事に戻ることはせず、ただ静かに心身を休めることにした。健一は私に長期休暇を与え、こう笑ってくれた。「君のことはもう何年も待っていたんだ。今さら、この程度の時間はどうということはないよ。それに……君のおかげで、海斗の精神状態も快方に向かっているようだ。彼は優秀な戦士だ。我々も、彼には穏やかに過ごしてほしいと願っているんだよ」腕に残る薄い火傷の痕はまだ消えず、心の傷もようやくかさぶたになり始めたところだ。けれど、ふとした瞬間に下腹部へ手が触れると、今でも奥の方で疼くような鈍い痛みが走る。海斗は毎日顔を出してくれた。彼もまた同じマンションに引っ越してきて、相変わらず私の「お隣さん」になっていた。温かいみそ汁を持ってきてくれる日もあれば、新鮮な果物を届けてくれる日もある。彼は決して自分から悠真や美咲の話題を出さず、かといって腫れ物に触るような慰め方もせず、ただ一本の揺るぎない大樹のように、静かに私の傍らに寄り添ってくれた。「……料理、習いに行ってきた」ある日、彼は見た目こそ不格好だが、驚くほど優しい味がする肉じゃがを作ってくれた。味がよく染みたホクホクのジャガイモを私の茶碗に取り分けながら、耳の先をほんのり赤くして言う。「これからは、俺がお前の飯を作るよ」箸を持つ手がピタリと止まり、不意に鼻の奥がツンと熱くなった。悠真とはあんなに長く一緒にいたのに、彼が私のために料理を作ってくれたことなど一度もなかった。彼の頭の中にあるのは実験ばかりで、私に対する態度は愛情というより「義務」に近いものだった。そのことに気づいたのも、美咲という存在に直面してからのことだ。彼が私に見せていた気遣いはすべて、美咲が彼に教え込んだものを、ただ私に当てはめていただけだったのだ。けれど海斗は、彼なりのやり方で、不器用ながらも精一杯私を慈しんでくれた。私のすべてを、誰にも気づかれないようにそっと、その心に留めてくれ
悠真は呆然としていた。「夏美、何を言っているんだ?美咲は病気なんだぞ。俺はこの目でカルテだって確認したんだ。それに放火事件って……あれはただの不慮の事故じゃないか?あの夜……君は怒るかもしれないが、美咲はずっと俺のそばにいたんだぞ」「私が目を覚ました後、海斗が裏で調べてくれたのよ」私は美咲を見据え、一言一言、悠真に叩きつけるように告げた。「彼女の言う末期ガンも、カルテも、検査報告書も……すべてが偽造されたものよ。そして放火事件については、警察の捜査結果が出ているわ。そっちでたっぷり説明することね」美咲の顔から血の気が引き、今にも崩れ落ちそうにふらついた。「嘘よ……私、本当に病気なの。それに、火事のことなんて私、何も知らないわ!」私は構わず言葉を続けた。「あなた、病気なんかじゃない。ただ悔しかっただけでしょう。悠真が他の女を愛するのが許せなくて、病気のふりをして戻ってきたのよ。あなたは人を雇って火を放った。でも、火の手が予想以上に大きくなりすぎて、警察が徹底的に洗ったのよ。火災発生前、監視カメラの死角からコソコソと現場に近づく人影が映っていたのよ。警察がその線を洗っていくと、美咲、あなたに行き着いたわ……あなたがその実行犯に大金を振り込んでいた記録にね。……実を言うと、さっき言った検査報告書そのものは『本物』なのよ。ただ、本当にガンを患っていたのは、その実行犯の男。そして、あなたのお腹の子も……当然、その男の子供よ。死を悟った彼は、せめて生まれてくる我が子には『科学者』という立派な肩書きを持つ父親をあてがってやりたいと思ったわけだ。おめでとう、悠真。他人の子の父親になれて」「でたらめよ!」美咲が金切り声を上げた。「でたらめ?」私は笑った。笑いながら、また涙がこぼれ落ちた。「じゃあ、もう一度病院で検査を受ける勇気はある?」彼女にそんな勇気はない。そして、悠真だって馬鹿ではない。彼はただ、忘れられない人や、若き日の未練に目を曇らされていたのだ。今、目の前でうろたえ、必死に目を逸らす美咲の姿と、私の言葉が重なり合い、彼は一瞬ですべてを悟った。あの優しく可憐な姿も、病の苦しみも、どうしようもない切実さも……すべてが嘘偽りだったのだと。彼は道化のように、美咲の掌の上でいいよう
一ヶ月後。悠真が私の前に姿を現した。服はひどく乱れ、両目には赤い血走りが浮き、顎には青々とした無精髭が伸びている。かつての理知的で端正な面影は、見る影もなかった。病室のベッドに横たわる私を見るなり、彼はその場に凍りついた。そして次の瞬間、弾かれたように駆け寄り、私の手を掴もうとした。「夏美!生きて……生きていたんだな!よかった、本当によかった!ずっと探していたんだ。君が俺を置いていなくなるなんて信じられなかった。本当によかった……」彼はしどろもどろに、狂ったように言葉を重ねた。私が嫌悪感から顔を背けると、海斗が一歩前に出て、その逞しい体で私を庇うように立ち塞がった。氷のように冷徹な眼差しを悠真に向け、低く言い放つ。「彼女から離れろ」だが悠真はなりふり構わず、血走った目で叫び続けた。「夏美、説明させてくれ!わざとじゃないんだ!ただ美咲の願いを叶えてやりたかっただけで……式が終わればすぐに戻って、君を出すつもりだった。本当に、すぐに戻るつもりだったんだ……睡眠薬だって、ごく微量だった。火事だってただの不慮の事故だ!あんなことになるなんて思いもしなかった。君を傷つけようなんて、一度も思ったことはないんだ!」そう言いながら、彼は大粒の涙をこぼした。その瞳には、痛切な悔恨の念が滲んでいた。以前の私なら、きっとその姿に胸を痛めていたことだろう。けれど今、目の前の男の醜態は、ただただ滑稽にしか映らなかった。私はゆっくりと顔を上げ、静かな眼差しを悠真に向けた。「事故?」私は小さく、しかし一言一句はっきりと口にした。「悠真、そんな言葉は自分自身にだけ言い聞かせていればいいわ。あなたがどうしても新婦をすり替えると言い張らなければ、私はあんな目に遭うこともなかった。父が亡くなった日、あなたは父を誰よりも尊敬しているから、私を一生守り抜くと言ってくれたわよね。でも、私は薔薇が好きじゃないのに、あなたはプロポーズの時、一面の薔薇の花束を用意した。婚約指輪のサイズだって合っていなかった。それでも私は、その都度自分に言い訳をして、あなたを許してきたわ。でも、今ははっきりと分かる。薔薇が好きなのは、美咲なのね。あの指輪も、サイズが間違っていたわけじゃない。ただ、それを嵌めるべき人間が私ではなかっただけよ」そこへ
次に意識が戻ったとき。そこが三途の川などではなく、消毒液の匂いが立ち込める病室だと気づいた。真緒は魂が抜けたような顔で寄り添っていたが、私の目が開いたのを見るなり、わっと泣き出した。「よかった……本当によかった、死んじゃったかと思ったんだから……」私の視線は、彼女のそばに立つ男性に向けられた。上の階に住む元戦士で、何度か見かけたことのある渡辺海斗(わたなべ かいと)だ。悠真はずっと彼のことを嫌っていた。陰気で、どこか精神を病んでいるようだと言い、粗野で声が大きく、言葉遣いも乱暴だと決めつけていた。けれど今、彼の逞しい背中を眺めていると、不思議と震えが止まり、深い安心感が胸に広がっていくのを感じた。海斗は私が目を覚ましたのを見て、照れくさそうに頭を掻き、屈託のない笑みを浮かべた。「俺は耳が良くてな、人より聴力が優れてるんだ。お前の助けを呼ぶ声が聞こえたから、チェーンソーを取りに戻ってドアを切断したんだよ。頑丈な鉄扉じゃなかったのが不幸中の幸いだな、じゃなきゃ今頃、お前は灰になってたところだ」私は涙を浮かべながら彼に微笑みかけた。そして、包帯が巻かれた彼の腕に視線を落とす。「……ありがとう」海斗の髪は炎に舐められ、無残に焼け焦げていた。真緒はそばで沈黙しており、何か言いたそうにしていたが、どう切り出せばいいのか分からないようだった。しばらくして、彼女はようやく口を開いた。「夏美、落ち着いて聞いてね。あのね……」彼女は目をギュッと閉じ、早口で言った。「あなた、妊娠してたの。でもまだ初期だったから……お腹の子は、助からなかった……」私は呆然とした。ここ最近は悠真と口論が絶えず、生理不順も重なっていたから、自分が妊娠しているとは思いもよらなかったのだ。無意識に下腹部を撫で、最後に無理やり真緒へ笑顔を見せた。「……そう、よかったわ」平らな下腹部にそっと指先を這わせる。そこにはかつて一つの命が宿っていた。私はその存在を知る間もなく、失ってしまった。身をよじるような苦しみは訪れなかった。ただ、ぽっかりと空いた心の穴を、ひどく冷ややかな虚無が満たしていく。本当に、これでよかったのだ。悠真と美咲が繰り広げる、自分勝手な悲恋ごっこに、子供まで巻き込んで苦しむ必要はない。産むべきか否かと独り