妹・苅野菜々美(かりの ななみ)への肺移植を拒んだ私を、両親はL市一の御曹司と呼ばれる男、岩田真佑(いわた しんすけ)のもとへ送り込んだ。冷徹で人を寄せ付けず、心に忘れられない憧れの女性を抱いていると噂される彼。誰もが私の悲惨な結末を予想していたが、意外にも彼は私を掌中の珠のように大切にしてくれた。結婚して三年、彼は時と場所を選ばず、私を求め続けた。トイレにまでついてきて、洗面台に私を押しつけることもあった。避妊はしていなかったが、一向に子供を授かる気配はなかった。自分が妊娠したと思い込み、期待に胸を膨らませて病院で検査を受けたあの日。私は偶然、真佑と医師の会話を耳にしてしまった。「岩田様、三年前に奥様の片肺をこっそり苅野様に移植させ、今度は彼女に生まれつき不妊だと嘘をつけと言うのですか。自分を愛している女性に、そこまでひどいことをしてもよいのでしょうか」「仕方ないだろう。菜々美は肺が弱い。子供を産めなければ、嫁ぎ先で肩身の狭い思いをすることになる。彼女に適合する肺は、奈々子のものしかなかったんだ」聞き慣れた男の声は、凍りつくほど冷たく、まるで見知らぬ他人のようだ。私が信じて疑わなかった愛も救いも、すべて巧妙に仕組まれたペテンに過ぎなかったのだ。それなら、私は消えるだけだ。病院の廊下の突き当たりで、先ほど私に不妊症という残酷な宣告を下した医師が、複雑な表情を浮かべながら言った。「可哀想に、奥様は妊娠したと思い込んでいました。実際には、私が処方した薬の副作用で吐き気が止まらなかっただけなのに」真佑は眉をひそめた。「それなら、副作用の少ない薬に変えてくれ。彼女の体に万が一のことがあっては困る。菜々美には、まだ奈々子が必要になるかもしれないからな」「いつか真実を知れば、彼女はあなたを恨むと思わないのですか?彼女はあなたとの子をずっと望んでいます。自分が一生母親になれないとも知らずに」医師の声には、隠しきれない憐れみが混じっている。「恨まれても構わない。俺は菜々美が苦しむ姿を見ていられないんだ」真佑の声に苛立ちが浮かんだ。「奈々子を岩田家の嫁にしてやったのだ。それで十分だろう?」……曲がり角に立ち尽くす私の体は、抑えきれないほど震えている。――岩田家の嫁にしてやったって?彼はそんなふうに
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