私は相沢彩花(あいざわ あやか)。夫は相沢慶介(あいざわ けいすけ)。そして、彼と一緒にいたのは真壁瑠香(まかべ るか)という女だ。まさか、その二人が密会している最中に、慶介があそこを折るような大けがを負うことになるなんて、思いもしなかった。知らせを受けて病院へ駆けつけると、そこには当事者である瑠香が、何事もなかったかのような顔で立っていた。慶介は緊急手術が必要で、同意書には家族である私の署名がいるという。私は瑠香を睨みつけた。けれど彼女は涼しい顔で、私が何もできないとでも思っているかのようだった。「患者さんのご家族の方は?」医師の問いかけに、私は即座に答えた。「私です!」「では、こちらにご署名を」震えそうになる手を抑えながら、私は書類にサインをした。医師は私と瑠香を見比べ、一瞬だけ事情を察したような目をした。「……最近の若い人は、ほんとに無茶をする」その言葉が妙に耳に残った。署名を終え、私は医師の部屋を出る。病室では、慶介が股間を押さえたままストレッチャーに横たわっていた。私を見るなり、顔色を変える。「彩花、違うんだ。話を聞いてくれ……」私は答えなかった。視線は、彼の手首と首筋に残るはっきりとした縄の跡に吸い寄せられる。「ずいぶん手の込んだことしてるじゃない。吊るしてたの?」そこへ、瑠香が近づいてくる。品定めでもするみたいに、面白そうに私を見た。「こんな慶介、見たことないでしょ?次は、あなたも一緒にどう?」……目の前に並ぶ最低な二人を見ていると、一時間前の光景が嫌でも頭に浮かぶ。どんな有様だったのか、想像しなくても分かる。私は瑠香を冷ややかに見据えた。「私が、あなたたちと同じだと思ってるの?」そして、慶介に向き直る。「慶介。離婚しましょう」瑠香は、慶介の元恋人だった。私たちは三人とも大学の同級生だ。卒業後、瑠香は資産家と付き合い始め、慶介をあっさり捨てた。その後、私と慶介は結婚した。仕事は順調そのもので、五年も経たないうちに慶介の会社は上場を果たす。――ちょうどその頃だった。資産家に見限られた瑠香が再び現れ、二人はあっという間によりを戻した。そのことで、私たちは何度も激しく言い争った。それでも慶介は最後まで認めようとせず、
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