私・姫野真紀(ひめの まき)の誕生日に、彼氏の荒木信吾(あらき しんご)がSNSで「今夜はサプライズを」と予告していた。ところが当日の午後、目に飛び込んで来たのは、彼と女性のアシスタントが馬に二人乗りしている写真だった。彼のシャツのボタンが外れ、晒された胸筋には真っ赤な指の痕がある。【人生初の思い出、彼に感謝】コメント欄は盛り上がっていた。【あの胸筋を触れるなんて羨ましい】【この体勢、なかなか怪しいぞ】信吾はそのコメントにわざわざいいねまで押した。私の心は完全に冷めきっていた。ずっと彼は、そういうことをするのは私だけだと思っていたのに、どうやら誰でもいいらしい。私は自ら馬を洗い、痕跡を全て消した。そして馬場を彼に譲ると決めた。「残りの馬は誰にあげてもいいわよ、好きに選んで」彼が喜んでいる様子を見ながら、私は家族が決めたお見合い結婚を受けることにした。……私が馬場に着いたのはちょうど午後三時だった。車を停めてすぐ、遠くに馬にまたがる男女の姿が見えた。信吾のシャツのボタンは全て外され、ズボンのファスナーすら上がっていない。こんな距離でも、彼の胸の痕がはっきり見えた。それは女が興奮した時に残す指の跡だ。さっき何があったか、バカでもわかる。私は写真を撮って信吾に送った。彼はスマホを見て、はっと振り返った。私の姿を認めた瞬間、眉がぎゅっと寄せられた。アシスタントの澤田美彩(さわだ みさ)が馬から下りようとしてよろめき、そのまま彼の胸に飛び込んだ。すると彼の耳元で何かささやく。信吾の表情はみるみる和らぎ、彼女と笑いながら何か言っていた。私の前に歩いてきた時には、まだ笑みが残っていた。二人の間に流れる親密な空気を目の当たりにし、私だけが余計者のようだった。その瞬間、ようやく理解した。私はこれまで、ただ自分自身に嘘をつき続けていただけだったのだ。彼がサプライズを用意していた相手は、決して私ではなかったのだ。朝から私はサプライズを心待ちにして準備を重ねていた。全ての会議を後ろ倒し、接待も全てキャンセル。家を新しく掃除して飾りつけ、以前信吾が欲しがっていた車まで買っておいた。今日は私の誕生日であると同時に、私たちの恋愛記念日でもあるからだ。信吾はすっか
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