All Chapters of 転生先で美少女に出会いました: Chapter 11 - Chapter 20

25 Chapters

11話 氷の魔弾と、背中に伝わる体温

 ユウは、その言葉を聞いて、再び異世界とゲームの常識のギャップに直面した。(え? レベル20もあれば楽勝で倒せるだろ。経験値もそこそこ入るし、レベル上げにも良いし、素材やアイテムも手に入るんだから……) ユウにとって、ワイルドボアは単なる経験値と素材の塊であり、中級者なら通り道で一掃する程度の魔獣だった。それがこの世界では「希少」な獲物として扱われている。この世界の住人たちが持つ力のレベルは、自分が思っているよりもずっと低いのかもしれない。ユウは、改めてこの「転生した世界」での自分の能力の特異性を認識した。 ユウが申し訳なさそうに、ミユに声を掛けた。「それにしても服を汚させちゃったな……」 ユウはミユの解体作業が大変だったことを改めて思い、気遣いの言葉をかけようとしたが、ミユは踏み込んだことを口にした。「えっと……それなんだけどさぁ……水浴びをしたいんだけど……。それに、料理をするのにお水が必要だし。残ったお肉はどうしよ? 持ち歩けないし……」 ユウの脳内は、ミユの「水浴び」という言葉で一瞬フリーズした。(は!? え? み、水浴びですか!? 持ち歩けないとか、俺も一緒にってことだよな? この魔獣が出る森で、一人で行かせられるわけがないし……) ミユと二人きりでの水浴び、という刺激的な想像が、ユウの頭の中を駆け巡る。彼は、動揺した顔と口調を隠しきれずに、肉の持ち運びについてだけ答えた。「あぁ、収納するから大丈夫だって……」 ユウはそう言いながら、ワイルドボアの巨大な死骸に手をかざし、ゲームの知識通りにアイテムボックスに収納するイメージを強く念じた。 次の瞬間、二人の目の前から巨大なワイルドボアの死骸が、まるで霞のようにフッと音もなく消え去った。 それを見たミユは、目を丸くさせ、驚きのあまり小さな悲鳴のような声を上げた。「わぁっ、え? あれ!? どこに行っちゃったの!?」 ミユの驚きは、ユウの想像をはるかに超えるものだった。ユウは、この世界の住人がアイテムボックスの存在を知らないことに改めて気づき、慌てて説明した。「え? あぁ……仕舞っただけだけど? 後で、また取り出せるから心配ないって」 ミユは、信じられないものを見るかのように、ワイルドボアが消えた空間とユウの顔を交互に見つめていたが、やがてその顔に感心の色が広がった。「そ、そう
last updateLast Updated : 2026-03-17
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12話 護衛の口実と、水辺の誘惑

(だ、だめだ。心臓が持たない……! こんなに可愛い子が、俺に頼って抱きついてくるなんて……夢でもこんな展開は想像しなかったぞ!) ユウは、緊張で握りしめた拳の汗を悟られないよう、静かにミユの頭を撫でてやった。彼女の髪は柔らかく、太陽の温もりを保っていた。 この道中、魔獣が現れるたびにミユがユウに抱きつく、という行為は三度繰り返された。ユウは、その度に増していく幸福感と、心臓の鼓動が早まることへの動揺を必死で隠し、平静な顔を装い続けた。彼の心の奥底では、もうこの道中が永遠に続けばいいのに、とさえ思い始めていた。 魔獣との遭遇を繰り返し、ユウの背中に幾度となくミユの温もりを感じながら進むうち、木々の間からキラキラと光る水面が見え始めた。ザーッという、穏やかな水の流れる音も聞こえてくる。 ユウの胸の鼓動は、次第に高鳴っていった。魔獣が現れるたびに高まっていた動悸とは違う、期待と緊張が混ざったような感覚だ。 目の前が開け、清流の流れる美しい川が姿を現した。水は底が見えるほど澄んでおり、岸辺には丸い石が並んでいる。「わぁ……っ。見てみて! 川だぁ~久しぶり! ユウさんも一緒に水浴びする!?」 ミユは顔を輝かせ、まるで幼い子供のように無邪気な笑顔でユウを見上げた。その瞳は、水面と同じくらいキラキラと輝いている。しかし、その口から発せられた言葉は、ユウの心臓を鷲掴みにする、とんでもない内容だった。(あぁ……俺を誘うってことは、服を着たままの水浴びかな? そりゃそうだよな。魔獣の血や泥で服も汚れてるし、異性の前でも気にせず水浴びできるしな) ユウは、ミユの純粋な提案の意図を理性で理解しようとした。衣服を洗うことと、体を洗うことを同時に行う、この世界では自然な行為だろうと。(てっきり……裸になるかと期待してたのに……) ユウの心の奥底に渦巻いていた、秘めた欲望は、その瞬間に静かにしぼんでいった。最強の力を手に入れた騎士の姿になっても、彼の性分は奥手で臆病なユウのままだ。しかし、目の前の彼女の無邪気な誘いに、ユウの胸は喜びと安堵が入り混じった複雑な感情でいっぱいになった。 ユウは胸の高鳴りを必死に抑え込み、努めて冷静な口調で答えた。「俺は、遠慮しておく……離れた場所で待ってるな」 ミユの無邪気な誘いには応えられない。目の前で水着ならまだしも、服を着たままと
last updateLast Updated : 2026-03-17
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13話 滴る熱と、不意に芽生えた独占欲

 その屈託のない笑顔は、ユウにとってあまりにも眩しく、この夢のような、あるいは転生した現実の世界が、これまで生きてきた現実よりも遥かに魅力的なものであることを、嫌というほど思い知らせていた。 ユウが、警戒しているフリをしながらも、濡れて肌に張り付いた白いパンツ姿のミユを必死にチラチラと盗み見ていると、川の中にいたミユがふと水遊びを止め、クスッと笑った。 その表情は、ユウの動揺を全て見透かしているようで、ユウの心臓は一瞬にして高鳴った。 ミユは川底の石を踏みしめながら、濡れた素肌をさらしたままユウの方へ近づいてきた。水が滴る艶やかな体が、水面にきらめき、ユウの視線を釘付けにする。距離が縮まるたびに、甘い花の香りが濃く鼻腔をくすぐった。 ミユは岸辺に上がり、濡れた足で砂を踏みしめ、ユウの目の前に立ち止まった。水で張り付いた濡れた白いパンツと、上半身の可愛らしい膨らみが、至近距離からユウを誘惑する。「ねぇー、ユウさん! 一緒に入ろー? 入りたそうに見てたよねー?」 ミユは無邪気な笑顔を向けながら、いたずらっぽく小首を傾げた。彼女の琥珀色の瞳は、ユウの顔を真っ直ぐに見つめている。(入りたそうなんじゃなくて……ミユの色っぽい体を見てたんだって! 考えが純粋すぎるぞ。警戒心が無さすぎる……) ユウは内心で叫んだ。彼の理性は、ミユの無防備さと警戒心の無さに愕然とした。しかし、その純粋さこそが、彼の心を強く引きつけていることも自覚していた。(それに、このまま立ち上がると……息子が大きくなってるのがバレる!) ユウは、ミユが近づいてきたことで、自分の身体の変化がより露わになる危険性を察知し、動くことができなかった。彼は服を着たまま座り込み、焦りをごまかすように拳を固く握りしめ視線を泳がせていた。。 だが、ユウの視線は、ミユの上半身から離れなかった。水に濡れて肌に張り付いた薄い布地。その向こうに見える、淡い桜色の乳首と、その愛らしい胸の膨らみ。ミユが動くたびに、濡れた布地が肌を滑り、その曲線が強調される。 ミユがユウのすぐ目の前に立ってくれたおかげで、ユウはこれ以上ないほど近くで、彼女のエロ可愛らしい体を堪能することができた。ユウは、その最高の光景に喜びを感じながらも、動けない自分自身の情けなさと、この状況が夢ではないかという現実感のなさに、ただただドキドキし
last updateLast Updated : 2026-03-17
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14話 過去の面影と、水辺の告白

 今まで他人との関わりに消極的だったユウにとって、この感情は全く新しいものだった。彼は、この転生した世界で、ミユという存在を特別なものとして認識し始めていることを、否応なく自覚させられた。 ユウの顔が一瞬、複雑な感情で曇ったのを、ミユは見逃さなかった。ずぶ濡れの服から水滴を滴らせながらも、彼女はすぐにユウの異変を察知した。「ユウさん……? どうしたの? 機嫌が悪そうだけど……わたし、何かしちゃった?」 ミユは心配そうにユウの顔を覗き込む。その純粋な眼差しに、ユウは自分の心のモヤモヤを隠しきれないでいることに気づき、慌てて表情を取り繕った。しかし、この機会に疑問を解消しておきたかった。「いや、その……ミユは、ここにたまに水浴びをしに来るのか?」 ユウは、他の誰かと一緒に来ているのかどうかを遠回しに尋ねた。 ミユは質問の意図を理解していない様子で、指先を顎に当てて考え込む仕草をした後、ふわりと笑顔になった。「えっと……孤児になる前に両親とね、来たよ? お父さんもお母さんも冒険者だったんだー! それでね、『きれいな川を見つけたから行くぞー』って」 ミユの言葉を聞いたユウの胸から、重くのしかかっていたモヤモヤが一瞬で消え去った。他の男とではなく、彼女が幼い頃に両親と来ていたという事実。ユウの心には安堵感が広がり、安堵の息を小さく漏らした。 しかし、その安堵はすぐに別の感情に置き換えられた。ミユが、「孤児になる前に」と言ったことを思い出したのだ。(そうか……そう言ってたんだ。こんな可愛くて、しっかりした子が、もう両親はいないんだな……) ユウは、ミユの過去に触れてしまったことに申し訳なさを感じつつも、彼女の笑顔の裏にある孤独と哀しみの影を垣間見た気がした。その瞬間、ユウの中でミユに対する守りたいという感情が、さらに強固なものとなった。彼は、この転生した世界で、ミユの笑顔を守ることを、自分自身の新たな使命だと心に刻みつけた。「ツライことを思い出させちゃったな……ごめんな。俺のヤキモチの為に……」 ユウは、ミユの過去について深く尋ねてしまったことを謝罪しつつ、素直に自分の心の内にある独占欲を口にした。 ミユの頭の中で、ユウの言葉が反芻された。(ヤキモチって……え!? ヤキモチって……その、好きな人にするものだよね? ユウさんは、わたしのことが好きな
last updateLast Updated : 2026-03-17
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15話 呼び名の魔法と、不器用な誓い

 ミユは、恥ずかしさのあまり最後の言葉をほとんど吐息のように絞り出した。彼女の口から飛び出した「ユウくん」という呼び方に、ユウの全身が電流に打たれたように震えた。(わぁ……『ユウくん』って……呼んじゃったっ!! わぁっ、わたし……完全に意識しちゃってる! あぅ……ドキドキが止まらない) ミユの胸中は、混乱と、初めての恋愛感情による甘い高揚感でいっぱいだった。彼女は、強大な魔獣を倒し、高価なナイフを気前よくプレゼントしてくれるユウの姿を思い浮かべた。(強くてカッコよくて……お金持ちだよね? 高価なナイフを、気軽にプレゼントしてくれるんだよ!? あり得ないしぃ……) ミユは、ユウの強さと優しさ、そして謎めいた裕福さに、完全に心を奪われ始めていた。 一方、ユウはミユの口から出た「ユウくん」という響きを、何度も心の中で反芻していた。それは、彼が小学校の時に、ごくわずかな友人から呼ばれていた懐かしい呼び方だった。 中高生になりいじめを受けるようになってからは、「オイ」「そこのキモいヤツ」「キモオタ」と呼ばれることが多くなり、それ以前に名前で呼ばれること自体が稀になっていた。過去の痛ましい記憶を覆い隠すように、ミユの優しい声が心に響いた。 ユウにとって、「ユウくん」という呼び方は、失われた自己肯定感と、純粋だった頃の居場所を思い出させる、温かい響きだった。彼の頬は、もう恥ずかしさだけでなく、満たされた喜びで赤く染まっていた。 ミユの口から発せられた「ユウくん」という響きは、ユウの心を強く揺さぶった。(……え? おぉ、今『ユウくん』って……呼ばれた!? しかも、こんな可愛い子に呼ばれるなんて嬉しすぎだろ!) ユウの胸は喜びでいっぱいになり、顔がさらに緩むのを感じた。その嬉しさを隠すように、彼は少し強引に、しかし真剣な眼差しでミユに告げた。「あ、あぁ……ミユは可愛いから……あんまり、他の男について行ったりするなよ。心配だからさぁ……」 それは、彼の心に芽生えたばかりの独占欲と、彼女を守りたいという強い思いが混ざり合った、精一杯の告白めいた言葉だった。 ミユの頬は、再び真っ赤に染まった。ユウの言葉が、彼女の心の中で大きな波紋を広げた。(これって……なに!? え? わぁ……わたしに、春が来た!? しかも……カッコいい人! うぅぅ、ユウくん!! 好きになっち
last updateLast Updated : 2026-03-17
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16話 湯気の向こうの献身と、独占の算段

 ユウは、ミユの熱い誓いと、自分の傍にいたいという切実な願いを受け止め、満たされた幸福感に包まれていた。その安心感が、彼の理性のタガを緩めたのだろう。途端に、強烈な空腹感が胃の底から湧き上がってきた。「そろそろ……昼食の準備をしよっか」 ユウは思わず笑顔になり、そう提案した。 ミユも同じように、ユウの愛情表現に満たされ、顔全体を幸せに緩ませていた。彼女は元気いっぱいに返事を返した。「にへへ♪ うんっ! がんばって作る……ね……って、調味料! 塩もないよ!?」 ミユがハッと気づき、焦った声を上げた。彼女にとって、料理はあっても調味料がなければ始まらない。 ユウは冷静に、頭の中に浮かんだゲームの知識を整理した。(確か……植物系の魔物を倒すと、回復や希少な薬品を作るための素材や調味料アイテムを落としてたよな……。それに、調理道具も、大地の土属性の魔物を倒すとフライパンやら鍋のアイテムを落とすんだよな) ユウは、この世界での自分の知識とアイテムボックスの万能さを再認識し、自信を持ってミユに言った。「塩に調味料や野菜とか調理道具も全部そろってるから、必要な物があったら言ってくれな」 ミユはユウの言葉に驚いた顔をし、首を傾げながら彼を見つめた。「えぇ!? 調味料を持ち歩いてるの? ……ユウくんって、料理人なの?」 その可愛らしい勘違いに、ユウは思わず笑みがこぼれそうになったが、冷静に答えた。「いや、持ち歩いてるというか……収納に入ってるだけから」 ミユはすぐに、先ほど巨大なワイルドボアが一瞬で目の前から消えたことを思い出した。その魔法のような光景が、彼女の中でユウの言葉と結びつく。ミユの顔に納得の色が広がった。「へ? あぁ……さっきの! その魔法って便利だね」 ミユは感心したように目を輝かせた。ユウは、自分の能力がミユにとって驚きと喜びになっていることが嬉しく、この異世界での生活が、以前の現実とは比べ物にならないほど充実したものになることを確信した。 ミユは、ユウがアイテムボックスから取り出した新品の調理器具と食材を見て、目を輝かせていた。ユウが取り出したナイフと比べて、調理用のナイフは使い慣れた大きさだったのだろう。彼女はワイルドボアの巨大なブロック肉から、手際よく調理しやすい大きさに切り分けていく。その指先の動きは繊細で、肉の筋を的確に見
last updateLast Updated : 2026-03-17
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17話 独占の魔導と、清潔な微笑み

 アイテムボックスの拡張、スキルや魔法の習得、レアアイテムのコレクションは、ほぼコンプリートに近く、特にユウが極めていた希少な合成魔法スキルが、今、最大の威力を発揮しようとしていた。これは、複数の魔法を同時に練り上げ、一つの新しい魔法として発動させるという、高度な技術を要するものだ。 ユウは、ミユの笑顔と、自分の独占欲という明確な目標のために、その膨大な知識と技術を惜しみなく注ぎ込んだ。(空間魔法で水を転送するだけじゃ、汚れが残るかもしれない。浄化魔法と組み合わせる必要がある……いや、水と乾燥も同時に行う四属性の複合合成で、一瞬で清潔な状態にするのがベストだ) ユウの優れた頭脳と、ゲームで鍛えられた魔法の構造解析能力が融合した。彼はミユが肉を焼いているわずかな時間を利用し、複数の魔法の知識を組み合わせて、洗浄魔法を完成させてしまった。 水魔法、風魔法、浄化魔法、そして空間魔法を組み合わせ、一瞬で対象の汚れと水分を分離し、清潔で乾燥した状態にするという、『インスタント・クリーン』とでも呼ぶべき魔法だ。普通の魔術師であれば、その複雑な理論と魔法の配列を理解し、実際に発動させるまでに数日、あるいは数カ月から数年を要するであろう難易度の高い合成魔法だった。 ユウのそばでミユが調理を続けている中で、ユウは静かに完成した魔法を自身の服に試験的に発動させた。 フッと、ユウのずぶ濡れだった服から一瞬だけ熱が失われるような感覚がした。次の瞬間、彼の服は完全に清潔になり、乾燥していた。泥も血の跡も、水気すらも残っていない。 もし、この光景を魔法に詳しい者が見ていれば、その即時性と完璧さに驚愕していただろう。しかし、ミユは目の前のユウの魔法の凄さを知る由もない。彼女は魔法を使えるのかさえ微妙なところで、ユウがどれだけ苦労したかなど、到底分かってくれないだろう。(まぁ、いいさ。ミユが喜んでくれて、俺が安心して過ごせるならな) ユウは、これは自分が独占欲と安心感のために勝手に行ったことだと割り切り、気にはしなかった。彼の顔には、ミユの安全と快適さ、そして彼女との未来を確保できたことへの、満足そうな笑みが浮かんでいた。 ユウが自らの服で洗浄魔法の成功を確認した直後、料理をしていたミユが、濡れたままの格好でユウを振り向いた。「ねぇ、ユウくん。スープの味見お願いっ!」 彼
last updateLast Updated : 2026-03-17
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18話 満腹の儀式と、甘い脅し文句

 ユウが取り出した調理道具の中にあった皿に、彼女は焼いた肉と、根菜がたっぷり入ったスープを盛り付けた。「できたよ、ユウくん! ワイルドボアのステーキと野菜スープ!」 ミユが誇らしげに差し出した料理を見て、ユウの腹の虫は最高潮に鳴き声を上げた。 皿に盛られた肉は、外側はカリッと、内側はジューシーに仕上がっているのが見て取れる。湯気の立つスープは、森のハーブの香りと肉の旨みが溶け合い、見るからに温かそうで美味しそうだった。 ユウはフォークを手に取り、厚切りにされた肉の一切れを口に運んだ。 ジュワッと口の中に広がるのは、ワイルドボア特有の野性味あふれる濃い旨みと、ミユが絶妙に加減した塩とスパイスの風味だ。工場で単調な作業をしていた頃に食べていた、味気ないコンビニ弁当とは、比べ物にならない生の、力強い美味しさだった。「うまっ……! ミユ、これ、めちゃくちゃ美味いぞ!」 ユウが思わず本音を漏らすと、ミユは頬を染めて嬉しそうに笑った。「えへへ、ほんと? よかったぁ! ユウくんが倒してくれた、お肉のおかげだよ!」 次にユウはスープを飲んだ。熱々のスープは、体の芯から冷えを払い、彼の全身に温かさと活力を与えた。ごろごろと入った根菜はホクホクとしており、肉の旨みと相まって、優しくも深い味わいだった。 二人は無言になり、ただひたすらに食事を楽しんだ。ミユもユウの様子を見て安心したのか、大きな肉を幸せそうに頬張っている。彼女の口元には、肉の脂が光っていた。 ユウは、ミユが幸せそうに食べている姿を見て、自分の腹が満たされる以上の満足感を覚えた。最強の力と莫大な富を得たこの異世界で、彼が今感じている最高の幸せは、この美しい少女との共同生活、そして彼女の作った温かい手料理にあると、心から理解した。 孤独な現実から解放され、初めて誰かに必要とされ、そして誰かを守る喜び。その全てが、この美味しくて温かい食事の中に凝縮されていた。ユウにとって、この昼食はただの食事ではなく、新しい人生の始まりを告げる、特別な儀式のように感じられた。 ワイルドボアのステーキとスープを平らげ、ユウは満腹感に浸っていた。満腹になると、急激な眠気が襲ってくる。彼はテントで横になることを考えたが、ふと、ある重大な問題に気づいた。(……気軽にミユをテントで寝ることを誘ったが……テントとはいえ密室の空
last updateLast Updated : 2026-03-17
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19話 独占欲の迷走と、初めての特等席

 彼女は、洗い終わった皿を布で拭きながら、頬を真っ赤にさせ、期待と不安が入り混じった顔をしていた。その無邪気な想像は、現実世界の知識に疎いミユにとって、ユウとの親密な行為の全てが許される未来を意味していた。 一方、ユウは、ミユが頬を赤らめて楽しそうに片づけをしている姿を見て、複雑な気持ちになっていた。 (……俺、なんって言ったっけ……? 『寝てるところを襲っちゃうかも』って言ったよな? 普通、嫌がったり怖がったりするもんじゃないのか? 襲われるのというか、エッチなことをされるというのを、簡単に受け入れて楽しみにするのか?) ユウの頭の中に、暗い疑惑が浮かび上がった。彼女のあまりにも潔い反応と無防備さが、彼の心に影を落とした。 (もしかしたら、そういう経験があるのか!?) ユウは、ミユの過去について深く考え、急激な不安と嫉妬に襲われた。彼の顔はみるみるうちに暗く沈んでいく。初めて抱いた独占欲が、ミユの純粋な過去にまで遡ってしまい、彼の胸を締め付けた。 彼は小さくため息をつき、自分に言い聞かせるように呟いた。「ま、まあ、今は付き合ってる人は……いなさそうだから良いか……」 そう理屈で納得させようとしたが、彼の心は収まらない。ミユの過去の人生で、彼女と親密な関係にあったであろう見知らぬ男たちに対し、ユウは強い妬きを感じていた。彼の心は、純粋な喜びと、新しい感情である嫉妬に揺さぶられ続けていた。 ミユは手際よく後片付けを終えると、ユウのすぐ隣にそっと腰を下ろした。その瞬間、彼女はユウの表情が、先ほどとは打って変わって暗く沈んでいるのを見逃さなかった。 ミユは心配そうな顔をして、ユウの顔を覗き込むようにした。「ユウくん……また、暗い表情をしてるよ。大丈夫かな?」 ユウは自分の思考に深く沈み込んでおり、ミユが隣に座ったことにさえ気づかないほど動揺していた。ミユに声を掛けられ、彼はハッと我に返り、慌てて顔を上げた。「え? あ、あぁ……その、ミユって……付き合っていた人っているんだろ? ミユは可愛いし……モテるだろうから。そういう経験があるのかなって思っちゃって……気になってな」 ユウは、ミユの過去への嫉妬と不安を、隠すことなく直接尋ねてしまった。彼の言葉は、ミユにとって全くの予想外だった。 (えぇ!? 付き合う以前に、仲の良い男の子なんていないしっ
last updateLast Updated : 2026-03-17
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20話 追憶の木漏れ日と、ふたりの隠れ家

「え!? それイヤだ。寂しい……よ。それ、放っておかれてるみたいで、逆に……心配になっちゃう……。面倒なんて思ってないから!」 ミユは顔を上げ、必死の思いで訴えかけた。彼女は、ユウの嫉妬という名の愛情が、自分を誰よりも特別に扱ってくれる証拠だと感じていた。その愛情を失うことは、この世界で得たばかりの幸せを失うことに等しかった。(ミユはそう言ってくれてるけど、嫉妬する気持ちがイヤなんだよな……ツラいし気分が悪い) ユウは、ミユの純粋な好意に感謝しつつも、自分の心に芽生えたネガティブな感情を嫌悪していた。彼は、ミユの言葉に甘えることに抵抗を感じながらも、その優しさを無駄にしたくないと思った。「ありがとな! そう言ってくれると安心するよ。今日、テントを張る場所を探さないとだな」 ユウは、自分の感情の話を切り上げ、現実的な問題へと話題を移した。ミユは、ユウがヤキモチを焼いてくれなくなるかもしれないという不安に戸惑い焦っていたが、「テント」という言葉が耳に入った途端、その思考は一瞬で吹き飛んだ。 (わぁ……本当に一緒に寝られるんだぁ……) ミユは改めてその事実を実感し、その喜びで顔が緩んでしまうのを止められなかった。彼女の胸は、期待と興奮が入り混じった早い鼓動を打ち始めていた。「ユウくん、こっちこっち! 良いところ見つけたよ!」 ミユは、もはや理性を保つことなく、無意識にユウの手を掴んだ。彼女の華奢な手の温もりが、ユウの掌に伝わる。ユウが驚く間もなく、ミユはそのまま興奮した様子で駆け出した。 ミユが来た道を少し戻り、脇道へと入ると、そこには理想的な場所が広がっていた。 周囲の木々が密に茂り、その中心には円形に開けた空間が広がっていた。地面は平らで、陽射しを遮る高い木々の枝葉が、上空を自然の屋根のように覆っている。木陰は深く、強い風を効果的に防いでくれていた。しかし、周囲の木々の配置は計算されたように絶妙で、わずかな隙間から外の視界も確保できるため、不意の接近者にも気づくことができるだろう。 何よりも、この場所全体が、まるで大きな腕に抱かれているかのような感覚を与えてくれる。ユウとミユの二人を外界の危険から隔絶し、守られているという安心感が、その場にいるだけで得られた。ここは、二人の夜を過ごすのに、まさにうってつけの隠れ家だった。 二人がたどり着いた
last updateLast Updated : 2026-03-17
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