元日のことだった。国際遠距離恋愛にきっぱり終止符を打つため、彼氏の篠原蒼生(しのはら あおい)は、十数時間のフライトで帰ってくる。その時、なんとなくスマホをスクロールしていた私の目に、ある掲示板のスレッドタイトルが飛び込んできた。 【愛って、距離を乗り越えられるのか?】 一番「いいね」がついているコメントは以下のようだった。 【乗り越えられないな。国際遠距離恋愛なんて、会うたびに何万キロも移動しなきゃならないし、片道で平気で十数時間もかかる。やっと会えたと思っても、すぐにまた別れの時が来る。そこから先は、また長くて終わりの見えない離れ離れの日々だ。どれだけ熱烈な愛だって、その十数時間の移動と待ち時間ですり減って、消えていくんだよ。もうすぐ彼女とは998回目の再会になる。飛行機を降りたら、そろそろ、この関係を真剣に見直そうと思ってる】読み進めるうちに、胸の奥がギュッと締め付けられた。蒼生にこのスレをシェアして、「わかるかも」なんて感慨深げに語り合おうとした、ちょうどその時。彼が離陸前に送ってきたメッセージが、画面にポップアップで表示された。【ひな、これが俺たちの998回目の再会だね。着いたら、話したいことがあるんだ】……「まもなく到着便のご案内を――」 空港のロビーにアナウンスが響き渡る。人混みの中に立っていた私は、どこからか吹き込んできた冷たい風に思わず肩をすくめた。そのとき、スマホが震えた。 【着いたよ】 短いメッセージに、私は無意識に到着ゲートの方へ視線を向けた。出口の近くに、見慣れた横顔を見つけた。 声をかけようとしたとき、すぐ近くから可愛らしい女の子が駆け寄ってきた。まっすぐ、迷いもなく、そのまま蒼生の胸に飛び込んだ。勢いに蒼生の体がわずかによろめいた。なのに、彼の腕は、反射のように女の子の腰をしっかりと抱きとめていた。困ったような、それでいて甘やかすような笑みが、彼の口元に浮かんだ。まばらな人混み越しに、このような光景をはっきりと見た――蒼生が顔を伏せて、信じられないほど優しく、彼女の髪にキスを落とした。 スマホがまた震えて、画面が光った。かじかんだ指でメッセージを開いた。 【ひな、急用ができちゃった。帰るの少し遅くなる】 胸の奥が乱
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