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遠距離恋愛の末、七年間付き合った彼と別れた
遠距離恋愛の末、七年間付き合った彼と別れた
Auteur: 紗々

第1話

Auteur: 紗々

元日のことだった。

国際遠距離恋愛にきっぱり終止符を打つため、彼氏の篠原蒼生(しのはら あおい)は、十数時間のフライトで帰ってくる。

その時、なんとなくスマホをスクロールしていた私の目に、ある掲示板のスレッドタイトルが飛び込んできた。

【愛って、距離を乗り越えられるのか?】

一番「いいね」がついているコメントは以下のようだった。

【乗り越えられないな。

国際遠距離恋愛なんて、会うたびに何万キロも移動しなきゃならないし、片道で平気で十数時間もかかる。

やっと会えたと思っても、すぐにまた別れの時が来る。そこから先は、また長くて終わりの見えない離れ離れの日々だ。

どれだけ熱烈な愛だって、その十数時間の移動と待ち時間ですり減って、消えていくんだよ。

もうすぐ彼女とは998回目の再会になる。飛行機を降りたら、そろそろ、この関係を真剣に見直そうと思ってる】

読み進めるうちに、胸の奥がギュッと締め付けられた。

蒼生にこのスレをシェアして、「わかるかも」なんて感慨深げに語り合おうとした、ちょうどその時。

彼が離陸前に送ってきたメッセージが、画面にポップアップで表示された。

【ひな、これが俺たちの998回目の再会だね。

着いたら、話したいことがあるんだ】

……

「まもなく到着便のご案内を――」

空港のロビーにアナウンスが響き渡る。

人混みの中に立っていた私は、どこからか吹き込んできた冷たい風に思わず肩をすくめた。

そのとき、スマホが震えた。

【着いたよ】

短いメッセージに、私は無意識に到着ゲートの方へ視線を向けた。

出口の近くに、見慣れた横顔を見つけた。

声をかけようとしたとき、すぐ近くから可愛らしい女の子が駆け寄ってきた。

まっすぐ、迷いもなく、そのまま蒼生の胸に飛び込んだ。

勢いに蒼生の体がわずかによろめいた。なのに、彼の腕は、反射のように女の子の腰をしっかりと抱きとめていた。

困ったような、それでいて甘やかすような笑みが、彼の口元に浮かんだ。

まばらな人混み越しに、このような光景をはっきりと見た――

蒼生が顔を伏せて、信じられないほど優しく、彼女の髪にキスを落とした。

スマホがまた震えて、画面が光った。かじかんだ指でメッセージを開いた。

【ひな、急用ができちゃった。帰るの少し遅くなる】

胸の奥が乱暴に裂けたみたいで、そこから冷たい風が入り込んだ。

震える手で、文字を打った。

【どんな急用?家に帰るのすら遅らせるほどの用事って何?】

返事が来るまでが、ひどく長かった。

しばらくして送られてきたボイスメッセージには、隠しきれない疲労感が滲んでいた。

「ひな、俺、帰国したばっかで本当に疲れてるんだ……だから、ワガママ言うのやめてくれない?」

ワガママって?

返信しようとした凍える指先が、うっかり画面をスワイプしてしまった。

表示されたのは、さっき途中まで読んでいたあのスレッドだった。

二十時間以上更新がなかったあのレスが、つい先ほど更新されていた。

【本当は、俺たちの間に物理的な距離だけじゃないんだ。

俺の彼女は……なんて言うか、頭の回転が遅い、鈍いんだ。海外の大学に受かるような頭もないし、俺が本当に求めてるものも理解できない。

たぶん、そもそも住んでる世界が違うんだと思う。

今、彼女に対して抱いている感情が、愛なのか、それともただの責任感なのか、俺にはもうわからない】

「彼女とは話が通じない」ことを証明するかのように、チャット履歴のスクリーンショットまで添えられていた。

画像の中で、彼はこう言っている。

【この問題、実はもっと簡単な解き方があるんだよ。この前教授が言ってた新しい方法、試してみたら?】

それに対する相手の返信はこうだ。

【えー、解ければ解き方はどうでもよくない?結果が合ってればOK~】

やりとりは、そこで途切れた。その下に、彼の最新のコメント。

【ほら、これ。彼女は現状に甘んじて、深く考えることも成長することも拒んでるかわりに、俺はこっちで、毎日最先端の知識と、最高に賢い頭脳に触れているんだ】

アイコンと内容からして、このコメントの投稿主は、蒼生に間違いない。

気づいた瞬間、全身の震えが止まらなくなった。

私、坂本陽菜(さかもと ひな)と蒼生は高校のときに付き合い始めて、やっと、7年目を迎えたのに。
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