異世界に子供の姿で転生し初期設定でチートを手に入れて3 のすべてのチャプター: チャプター 1 - チャプター 10

25 チャプター

1話 深まる絆と夜の約束

深まる絆と夜の約束 ふと考えてみれば、サナと出会ってからというもの、彼女はいつも町娘のような可愛らしいワンピースを身に纏っている。買い物に出かける時も、命の危険があるダンジョンに潜る時も、そのスタイルが変わることはなかった。 人のことは言えない。俺自身も町を歩くような軽装のままで、重苦しい防具を身に着けることはない。 サナなら強力なバリアを使いこなせるし、実力的には何ら問題ないはずだ。ただ、周囲から見れば、これから過酷な採集に向かうというよりは、休日の穏やかなお出掛けにしか見えないだろう。(……まあ、自分も似たような格好だし、今さら気にするのはやめよう)「うん。分かった。なくても問題ないならそのままで。でも、気を付けてね」 俺が改めてそう伝えると、サナは少し真剣な表情を浮かべ、俺の手をぎゅっと握り返してきた。「そらも気を付けろよ。な! 絶対だぞ」 まさか、逆に心配されてしまうとは思わなかった。彼女の瞳に宿る真摯な気遣いが、胸の奥をじんわりと温める。その愛らしさと献身的な言葉がたまらなく嬉しくて、俺は思わず彼女の細い体を力いっぱい抱き締めていた。 サナは驚いたように一瞬体を震わせたが、すぐに幸せそうに目を細めた。密着した体温と、眠れない夜 後ろから抱き寄せた拍子に、意図せず彼女の柔らかな胸に手が触れてしまった。驚きと焦りで、火がつくように熱くなった手をすぐに離そうとしたが、サナはその手を自分の両手で上から包み込み、わざと胸の位置に留まらせた。「そうされると落ち着くな。そのままでいてくれ……」 サナは俺の腕の中にすっぽりと収まりながら、吐息のような声で囁いた。「サナが良ければ良いけど……。でも、ボクが……恥ずかしいんだけど」「恥ずかしいか? 誰も見ていないぞ? お前と、わたししかいないのにか?」「そういう問題じゃなくて、ドキドキするというか……」 俺の正直な白状に、サナは少しだけ体を揺らして笑った。背中越しに伝わる彼女の体温が、より一層熱を帯びたように感じる。「ああ、そうだな。ドキドキはするな。……嫌、なのか……?」「嫌じゃないってっ」 そう即答すると、彼女は満足したように、俺の腕から静かに手を離した。「わたしは満足したから、もう良いぞ。そらは満足できたかぁ?」「あ、うん。ありがとね」 少しの寂しさと、大きな高揚感を抱えた
last update最終更新日 : 2026-03-15
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2話 ゴブリン殲滅の常識外れ

 リーダーが地図をしまいながら、引き締まった表情で立ち上がった。「おはよう。朝食を食べたら、さっそく出発しよう。山頂まではあと一踏ん張りだ」「分かりました」 俺は一旦テントに戻り、アイテムストレージから宿屋で用意してもらっていた朝食を取り出した。サナと二人、テントの中で手早く食事を済ませる。彼女はパジャマから例の「水色と白のストライプ」を忍ばせたワンピースに着替え終え、満足げに口元を拭っていた。 使い終わった食器を片付け、六人用の大きなテントを魔法でストレージへ回収する。周囲を見渡せば、他のメンバーも荷物をまとめ、武器の手入れを終えて出発の準備を整えていた。 朝日が木々の隙間から差し込み、結界石が眠る山頂付近を白く照らし出している。「よし、それじゃ行こうか!」 俺の言葉に、サナが当然のように腕を絡めてきた。昨夜の甘い時間は一旦横に置き、俺たちは再び前衛へと足を進めた。露払いの道中 リーダーが険しい表情で山道の先を睨み、声を低めた。「この先、魔物が強くなるぞ」「厄介ですね……」 剣士の男が同意するように、愛剣の柄を握り直す。これまでの戦いで、彼らの武器が通用しない場面が増えてきていることを、彼ら自身が一番よく理解していた。「俺の剣も効かないからな。……そら、頼めるか?」「あなたたちが頼りね……」 女性メンバーも不安げな視線を俺とサナに向ける。期待と、どこか縋るようなその声に、俺は短く頷いた。「任せてください」 再び歩き始め、俺たちは一行の先頭に立つ。しばらく進むと、茂みの奥から濁った鳴き声が聞こえてきた。 現れたのは、十数体のゴブリンたちだった。本来ならそれほど脅威ではないはずだが、この高さまで生息している個体は、通常のそれよりも皮膚が硬質化し、目つきも凶暴さを増している。「が、ぎっ!」 ゴブリンたちが不揃いな武器を掲げ、小癪にもこちらを包囲するように散らばる。しかし、俺とサナの歩みが止まることはなかった。 俺は軽く手をかざすと、手のひらに熱を収束させる。「散れ」 指先から放たれた小さな火球が、空中でいくつもの火の粉に分かれ、ゴブリンたちの眉間を正確に撃ち抜いていく。サナもまた、面倒そうに指を弾き、衝撃波で残りの個体を崖下へと吹き飛ばした。「……相変わらず、次元が違うな」 背後でリーダーが呆然と呟くのが聞こえた。俺た
last update最終更新日 : 2026-03-15
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3話 飛竜の群れと絶望の視線

 不穏になりかけた空気を察したのか、リーダーが沈痛な面持ちで男を制した。「いや……噂が本当なら、あり得るな。……それ以上の不要な詮索は止めろ。俺たちの命を守ってくれているのは、彼らなんだからな」 リーダーの言葉に、男は納得がいかない様子ながらも、口を噤んで歩き出した。「まあ、秘密ってことで……お願いします」 俺が人差し指を口に当てて笑ってみせると、隣のサナが「わたしのそらは凄いだろ?」と言わんばかりに、さらに強く腕を絡めてきた。洞窟の浄化と地獄の炎 山道を登り詰めると、岩肌にぽっかりと口を開けた巨大な洞窟が姿を現した。周囲には禍々しい気配が漂い、入り口には見張りと思われる五体のゴブリンが、粗末な槍を手に周囲を警戒している。「みんな待機しろ! 周囲の警戒も怠るな!」 リーダーの鋭い号令とともに、パーティの面々は一斉に草むらや岩影へと身を隠した。彼らにとって、これから始まるのは死力を尽くした隠密行動か、あるいは決死の突撃なのだろう。 だが、俺とサナはその横を平然とした足取りで通り過ぎた。「おい、そら! 何を……!」 背後でリーダーの驚愕の声が上がるが、構わずに歩を進める。俺の姿を認めた見張りのゴブリンたちが、耳障りな叫び声を上げて襲いかかってこようとした瞬間——俺は静かに指先を突き出した。《ヘルフレイム……》 虚空から噴き出した漆黒を帯びた紅蓮の炎が、瞬時にして洞窟前を警戒をしていた見張りの5体のゴブリンを飲み込み、灰すら残さず焼き尽くした。 勢いのまま、俺は洞窟の奥へと向けてヘルフレイムを連発する。 轟音とともに、地獄の業火が蛇のように洞窟内を這い回り、奥に潜んでいた数え切れないほどの気配を一気に呑み込んでいく。本来ならもっと効率の良い魔法もあるが、今は「強力な火属性魔法で一掃した」と思わせておくのが一番角が立たないだろう。瞬きの一時間の殲滅劇 洞窟の奥から響いていた騒がしい気配が消え、辺りに静寂が戻る。俺はすぐさま土魔法を発動させ、生き残りのゴブリンが逃げ出さないように……それと、この後に何が起こるのかを見せないようにする為に洞窟の入り口を巨大な岩壁で封鎖した。(さて、後処理を済ませておくか……) 意識を集中させ、探索魔法を洞窟の隅々まで張り巡らせる。壁の向こうにひしめいていたゴブリンたちの位置を正確に把握すると、空間転移を連
last update最終更新日 : 2026-03-15
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4話 結界石を求めて、いざ山頂へ

「そうしたら、剣じゃ攻撃もできないものね……」 女性メンバーの言葉通り、対空手段を持たない剣士にとって、空を自在に舞うワイバーンは死神に等しい。「20匹ってところか……かなりキツいな。というか、絶対に不可能だろ。これは、無理だろ! 1匹でも脅威なんだからな!」 男の叫びに似た声が響く。普通、これだけの数のワイバーンを相手にするなら、熟練の魔導師を揃えた騎士団規模の戦力が必要だ。彼らの足がすくむのも無理はない。 だが、俺の隣で腕を組んでいたサナが、退屈そうに「ふぁぁ」と、あくびをした。「そら、あんなの放っておいても良いが……バサバサと羽虫のようで邪魔だな」 サナは俺の顔を覗き込み、まるで飛んでいる虫でも追い払うかのような気軽さで問いかけてきた。空を焼く漆黒の蒼い地獄の猛火と爆散 リーダーが苦しげに空を仰ぎ、こちらの様子を伺うように問いかけてきた。「これはキツいよな……?」「ええ、飛んで動いている的に魔法を当てるのは、かなりキツいわよね。上級者でも難しいわ。その上、相手の攻撃も防がなきゃならないし……」 女性メンバーも同意し、無理に突破するよりは引き返すか、時間をかけて迂回すべきだという空気が流れ始める。だが、俺はサナと視線を合わせ、静かに口を開いた。「いえ、大丈夫ですよ。ワイバーンの群れの討伐経験もありますから、問題ないですよ」「は? ……これもか。だんだん驚かなくなってきたぞ」 リーダーはもはや呆れを通り越したような表情で、乾いた笑いを漏らす。「サナ、一緒に行ける?」「問題ないぞ。そらの邪魔をする奴らは、わたしが全部片付けてやる」 サナは頼もしく胸を張り、俺たちはパーティの面々の前から一歩前に踏み出した。 気配を察知したワイバーンの群れが一斉に翼を広げ、耳を突き刺すような咆哮を上げて空へと舞い上がる。地上を見下ろし、獲物を仕留めんと急降下を開始したその瞬間——。《ヘルフレイム!》 俺の両手から放たれた漆黒の焔が、空中でいくつもの龍のような形状に分かれ、飛来するワイバーンを追尾するように伸びていく。回避しようと旋回する飛竜たちを、地獄の業火が逃さず飲み込み、その翼を瞬時に焼き尽くした。「遅いぞ、貴様ら! もっと、わたしを楽しませてくれ!」 サナが空に向けて掌をかざすと、不可視の魔力が上空で凝縮され、凄まじい衝撃波を伴って爆
last update最終更新日 : 2026-03-23
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5話 立ち塞がる巨躯と「王」の威圧

♢立ち塞がる巨躯と「王」の威圧 視線の先、結界石が露出する岩場の広場を占拠するように、数体の巨影が鎮座している。筋骨隆々の身体に、濁った知性を宿した瞳。手にはどこかの遺跡から剥ぎ取ったような巨大な石斧や棍棒を握っている。「これは……さすがに無理だろ……」 リーダーの声が、これまでにないほど低く沈んだ。「奴らが、いなくなるのを待つしかないか……」「それが良いと思うわ……」 女性メンバーも顔色を変え、岩影に身を潜める。「下手に手を出しても追い回されて殺されるぞ。ガードも固いし、知性も攻撃力もあるからな。連携をされたら厄介だぞ!」 男が必死に状況を分析する。オーガはこれまでのゴブリンやワイバーンとは一線を画す存在だ。ただ暴れるだけでなく、獲物を追い詰め、連携すらしてくる。「キングオーガまで居やがるしな。……オーガが8体、キングが1体か。これは……無理だな、やっぱり」 中央で一際巨大な体躯を誇り、玉座のように岩に腰掛けているのがキングオーガだろう。周囲のオーガたちを統率するその威圧感は、並の冒険者なら対峙しただけで動けなくなるほどだ。 パーティの面々は、静かに息を潜めて彼らが去るのを待つ構えを見せる。だが、俺は隣のサナと顔を見合わせた。「サナ、あいつら退いてくれそうにないね」 サナは退屈そうに指先で紫の髪を弄りながら、鼻を鳴らした。「ふん、図体ばかりデカくて邪魔な連中だ。そら、あんなのが、いなくなるのを待つ必要なんてないぞ」「……だよね。じゃあ、サッと終わらせようか」 俺たちが立ち上がろうとすると、背後からリーダーが慌てて俺の裾を掴んだ。「おい、待て! さすがにキングオーガ相手に正面突破は無謀だ! 死ぬぞ!」「大丈夫ですよ。ちょっと、道を空けてもらうだけですから」 俺は驚愕に染まる彼らを背に、サナと共に悠然と「王」の元へと歩き出した。♢蹂躙の遊び場「もしかして倒せるのか?! 俺たちは加勢は無理だぞ!」 リーダーの必死な叫びを背中に受けながら、俺は隣のサナに視線を向けた。「サナ、どうする? ボクだけでも大丈夫だけど、一緒に行く?」 サナは楽しげに目を細め、俺の腕に体重を預けるように寄り添う。「うん、んふふ。当然、一緒に遊ぶに決まってるだろ!」「一緒に遊ぶって、何だよ……」「あれが遊びかよ」 背後で男たちが戦慄したような
last update最終更新日 : 2026-03-23
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6話 桃色の誘惑と山頂の休息

「さっさと採掘するぞ! 採掘は俺たちの仕事だ。近くで休んでいてくれ」 リーダーが気を取り直したように号令を下すと、三人は慣れた手つきで採掘道具を取り出し、青白く発光する岩壁へと向かっていった。キン、キンと高く澄んだ金属音が、静まり返った山頂に規則正しく響き始める。「じゃあ、お言葉に甘えて」 俺とサナは、少し離れた日当たりの良い平らな岩場に腰を下ろした。 周囲にはまだ、俺が放った蒼い焔の余韻が陽炎となって揺らめいている。冷たい山の空気と、魔法が残した熱気が混ざり合い、不思議と心地よい温度を作っていた。♢桃色の誘惑と山頂の休息 俺とサナは少し離れた平らな岩場に腰を下ろし、その様子を眺めることにした。ふと隣を見ると、サナがなんとも言えない絶妙な表情で俺を見つめている。「……顔がニヤけてますよ、サナさん」 俺の指摘に、彼女は誤魔化すようにふいっと顔を逸らしたが、その口角は隠しきれずに上がったままだ。「それじゃ、自然にチラッじゃないですよ」 彼女がわざとらしく足を組み替えた瞬間、ひらりと揺れたワンピースの裾から、鮮やかな色が目に飛び込んできた。 昨日の夜、テントの中で触れてしまった時に見えたのは、確か淡いピンクだったはずだ。だが、今、俺の視界を掠めたのは……。(……ピンクに、白いハート柄……か) またテントから出る時に着替えたらしい。わざわざこのタイミングで見せてくるあたり、確信犯なのは間違いない。「どうだ? 可愛いか? 可愛いだろ?」 サナは俺の顔を覗き込み、いたずらっぽく小首をかしげた。「可愛いけど……。もうそれ、自然とチラッじゃなくなってるからね」「……やっぱりダメか?」 少しだけ眉を下げて、上目遣いにこちらを伺ってくる。その破壊力に、俺は抗えるはずもなかった。「……ダメでは、ないけど」 俺がそう答えると、サナは「なら良い」と言わんばかりに満足げに微笑み、再び俺の腕を強く抱きしめてきた。♢山頂の猟師と静かなる一撃 岩壁に向かっていたパーティの面々が、突然、悲鳴に近い声を上げて採掘の手を止めた。「な、なんだあのデカいのは……!」 地響きと共に木々をなぎ倒して現れたのは、通常の個体とは比較にならないほど巨大な猪だった。隆起した筋肉と、鋭く尖った二本の牙。突進の構えを見せるその巨体は、まさに動く肉の塊だ。(ヘルフレイムは使え
last update最終更新日 : 2026-03-23
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7話 オーラの余波と早すぎる撤退

(あ……さっきの話の続き、ですか?) ピンクにハート柄の、あの「チラ見せ」の話だ。彼女の中ではまだ終わっていなかったらしい。「……うん。頑張って」(何を言ってるんだ俺は……。そんなことは頑張らなくていいよ……と思う反面、心のどこかでそれを楽しみにしている自分がいた) そんな俺の矛盾した返事を聞いて、サナは「よしっ」と小さく拳を握り、満足げに微笑んだ。そのニヤニヤとした表情を見る限り、次はどんな「自然な」演出を仕掛けてくるつもりなのか、想像するだけでこちらの顔が熱くなる。「……終わったぞ! 結界石、これだけ採れた!」 ちょうどその時、汗を拭いながらリーダーたちが戻ってきた。その手には、淡い光を放つ結界石がずっしりと抱えられている。「大漁ですね。それじゃあ、暗くなる前に下山しましょうか」 俺はサナの「次の作戦」を警戒しつつ、重い腰を上げた。♢禁忌のオーラと震える仲間たち「あまり採っても、重くて運べないしな」「もう十分採れたわ。これだけあれば依頼のノルマなんて余裕で達成よ」 男たちが重そうに袋を担ぎ、女性メンバーが満足げに額の汗を拭う。山頂での目的を果たした一行には、どこか安堵の空気が流れていた。「途中で夜営もしないとだしな」「昨日の夜営した場所まで急ぎましょう。日が暮れちゃいますよ」 俺の提案に、リーダーも深く頷いた。「そうだな。魔物の活性が上がる前に、早く戻ろう」 下山を開始したが、正直なところ、もう道中の雑魚魔物と一戦交えるのすら面倒になっていた。一々足を止めるのも、サナとの時間を邪魔されるのも気が進まない。(……少しだけ、威圧しておくか……魔物避けになるだろうし) 俺は歩きながら、ほんの少しだけ『絶対的な支配者のオーラ』を解放した。戦う意思のある者を萎縮させ、近寄らせないための「魔除け」のつもりだった。 だが、隣を歩いていたサナの顔色が、一瞬で紙のように真っ白になった。「……そ、そら。いったい……な、何をしてるんだ?」 彼女の声は小刻みに震えている。「戦うのが面倒だから、回避しようと思ってオーラを出してみたんだけど?」「お願い、消してくれ! ……それ、恐怖で体が動かなくなる……っ」 サナが俺の腕に縋るようにして、その場に膝をついた。慌てて周囲を見渡すと、リーダーたちもその場に崩れ落ち、呼吸を忘れたようにガタガタと
last update最終更新日 : 2026-03-23
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8話 桃色の特訓と不自然な誘惑

♢桃色の特訓と不自然な誘惑 下山を急ぐ一行の中で、サナだけはどこか楽しげに、リズムを刻むような足取りで俺の隣を歩いていた。リーダーたちが背後で「さっきのプレッシャーは何だったんだ……」と怯えたように囁き合っているのも、今の彼女には届いていないらしい。 ふと、サナが俺の少し前を歩き始めた。「そら、見てろよ。自然に、だぞ……自然にするから」 彼女はそう言うと、わざとらしく道に落ちている小さな枝を跨ごうとした。「……っ」 不自然に大きく足を振り上げた瞬間、ひらりとワンピースの裾が舞う。そこには、俺が先ほど確認したハート柄が、隠す気などさらさらないと言わんばかりの主張を伴って現れた。「……サナ、それ全然自然じゃないし、むしろ見せにいってるよね?」「えっ、ダメか? 今のはかなり『偶然』を装ったつもりだったんだが」 サナは立ち止まり、少しだけ頬を膨らませて不満げな顔をした。どうやら彼女の中で「自然」の定義が迷走しているらしい。「もっと、こう……日常の動作に溶け込ませないと」「日常の動作……。分かったぞ、任せておけ」 サナは深く頷くと、今度は俺の横に並んで歩きながら、急に靴の紐を直すフリをして屈み込んだ。だが、その角度が絶妙に……というよりは、あまりに計算され尽くした「狙い撃ち」の角度で、俺の視線は嫌でも彼女の足元、そしてその奥へと誘導されてしまう。「どうだ? 今のは、完全に自然だっただろ!」 顔を上げたサナは、成功を確信したような得意げな笑みを浮かべている。「……いや、紐結び直してるけど、サナの靴に紐なんてないよね?」「あ」 サナは自分の魔導ブーツを見つめ、気まずそうに視線を泳がせた。(何を頑張っているんだ、この美少女は……) 呆れ半分、期待半分でそんなやり取りを続けていると、昨日の夜営地が見えてきた。後ろを歩くパーティの面々は、俺たちのバカげた会話を聞いて少しだけ緊張が解けたのか、ようやく顔に赤みが戻ってきている。「サナ、続きはテントの中でね。……今はリーダーたちが後ろにいるから」 俺が耳元でそう囁くと、サナは「むぅ」と声を漏らしながらも、嬉しそうに俺の腕を強く抱きしめてきた。♢秘めやかな夜営地の誘惑 下山の道中、俺のオーラの余波ですっかり静まり返った山道を抜け、一行はようやく昨日の夜営地へと辿り着いた。リーダーたちは「助かった
last update最終更新日 : 2026-03-23
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9話 秘めやかな一夜と桃色の余韻

 ワンピースの柔らかな生地が肌に触れ、彼女の膝が俺の脇に潜り込むたびに、例の桃色のハート柄が視界の端で揺れる。「……そらの鼓動、さっきよりもずっと速いぞ。どうしたんだぁ……?」 彼女は俺の胸に耳を押し当て、楽しそうにクスクスと喉を鳴らした。サナの紫の髪がさらりと俺の頬を撫で、甘い香りが肺の奥まで満たしていく。俺の腕の中に収まる彼女の身体は驚くほど柔らかく、そして温かい。 俺は諦めたように、彼女の細い腰に手を回して引き寄せた。「……お前には、本当に敵わないな」「当たり前だ。そらの弱点は、全部わたしが握っているんだからなっ♪」 サナは満足げに目を細めると、顔を上げて俺の耳たぶを優しく食んだ。熱い感覚が全身に走り、指先にまで力が入りそうになる。彼女の舌先が転がるたびに、昼間の「特訓」のことや、リーダーたちの視線なんて、どうでもいい霧の向こうへと消えていった。「今夜は、寝かせてやらないぞ……。たっぷりと、お詫びをしてもらわないと……っ♪」 耳元で囁かれた密やかな宣言。サナは俺の首筋に顔を埋め、吸い付くように熱を刻みつけてくる。 テントの外の世界がどれほど過酷で、どれほど強大な魔物が潜んでいようと、今の俺にとっては、この腕の中で甘い吐息を漏らす少女を満足させることの方が、ずっと重要で、難しい難問のように思えた。♢秘めやかな一夜と桃色の余韻 テントの薄い布地を叩く夜風の音が、遠い世界の出来事のように感じられた。外では火の粉が爆ぜる音や、見張りを交代するリーダーたちの低い話し声が時折聞こえてくるが、この狭い空間の中だけは、外気から切り離された熱帯のように熱く、甘く、淀んでいる。 サナの指先が、俺のシャツのボタンを一つ、また一つと、焦らすような手つきで解いていく。「そら、こっちを見て……」 熱を帯びた声に促され視線を向ければ、そこには普段の勝ち気な彼女とは違う、とろけるような情欲に染まったサナの顔があった。ランタンの灯りに照らされた彼女の肌は滑らかな陶器のようで、動くたびに桃色の境界線が露わになり、俺の視神経を狂わせていく。 俺は堪らず、彼女の細い項に手を回し、引き寄せるようにして唇を重ねた。「……んっ」 サナの小さな吐息が口内へと流れ込み、互いの体温が溶け合う。彼女の舌先が積極的に絡みついてくるたびに、理性の糸が音を立てて千切れていくのが分かっ
last update最終更新日 : 2026-03-23
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10話 桃色の脅迫と永遠のサナ

♢魔王の覚醒と愛執の朝「サナもステータスってあるの?」 俺の問いかけに、サナは腕の中に潜り込んだまま、とろけるような笑みを浮かべて答えた。「ん? あるぞ……?」 彼女は俺の首筋に顔を寄せ、吸い付くように甘いキスを落とす。その唇の感触が心地よくて、俺の思考は一瞬だけ空に溶けそうになる。「見れるの?」「見るか? わたしのことが気になるかぁ……? んふふ、可愛い奴め」 サナはベタベタと俺に甘えながらも、空中に薄い光の膜を展開した。やはり本人以外のステータスは完全には開示されない仕様らしく、詳細なスキルや数値は霧に包まれているが、主要な項目だけが浮かび上がる。名前:サナ性別:女レベル:68職業:魔王ハンターランク:B(やっぱり……サナは魔王か) その圧倒的な魔力量と、先程の俺の『絶対的な支配者』のオーラに耐えうる魂の強さ。それらを考えれば納得の結果だった。だが、サナ自身は自分のステータスの「一行」を指差して、不思議そうに首を傾げた。「職業が変わってるな。『魔王の娘』だったんだがな」♢桃色の脅迫と永遠のサナ「サナはやっぱり、年上だったんだね」 ステータスに刻まれた『魔王』という称号の重みと、その落ち着き払った……とは言い難い今の甘えっぷりを交互に見ながら、俺はふと確信を持って呟いた。すると、俺の首筋に顔を埋めていたサナが、ぴくりと肩を揺らして顔を上げる。「年上なのか? 年上は嫌かぁ……?」 潤んだ瞳で不安そうに覗き込んでくるその仕草は、とてもではないが齢を重ねた王のそれには見えない。けれど、その奥に潜む魔力の深淵を知っている今、俺の口からは少し意地悪な言葉が漏れた。「そんなことないよ。お姉ちゃんって呼ぼうかな」 その瞬間、サナの表情が劇的に崩れた。「え!? それは嫌だ! やめてくれ!」 彼女は俺の胸を両手で押し、必死の形相で首を横に振る。「サナで良い、サナって呼んでくれ。じゃないと……っ」 一瞬言い淀んだ彼女は、顔を真っ赤にしながら、今朝から散々俺を惑わせてきた「究極の武器」を引き合いに出した。「……じゃないと、パンツ見せないぞ!」 あまりにも可愛らしく、そして彼女らしい脅し文句に、俺は思わず吹き出してしまった。魔王ともあろう者が、自分の下着を交渉材料にするなんて、一体どこの世界の話だろう。「分かったよ。サナって呼ぶ
last update最終更新日 : 2026-03-23
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