私・白川初音(しらかわ はつね)は死んだ。半透明の魂が宙に漂いながら、涙を流して叫んでいた。だが隣にいる夫・白川鳴(しらかわ なる)には、今の私の絶望も嘆きも見えていない。マスクをつけた彼は、一体の遺体の解剖に集中していた。鳴は法医だ。今朝、上司の指示で郊外の遺棄現場へ向かった。血腥い場面を数えきれないほど見てきた彼も、その幼い子供の遺体を前にして、吐き気を堪えきれずにえずいた。表情に同情と不憫が過ぎった。小さな遺体は、生前の面影をまったく留めていなかった。顔は鈍器で砕かれ、全身に無傷な部分は一箇所もない。発見が遅れたせいで、遺体はすでに腐敗し始めており、目を背けたくなるほどだった。初期の検死を終えた後、鳴は遺体を解剖室に運び、系統的な解剖を行った。手つきは熟練していて、迷いがなかった。私は宙に浮いたまま見ていた。悲しみで胸が張り裂けそうで、もう一度死んでしまうような気さえした。もし鳴が、今自分の手で解剖している遺体が娘の真白(ましろ)だと知ったら、それでもこんなに落ち着いていられるだろうか。「死者の年齢は六、七歳前後、性別は女。後頭部に明らかな損傷あり、死因は打撲による脳挫傷と推定。死後、遺体は激しく損壊されており、顔面は鈍器で破壊、皮膚の腐食が著しく指紋の採取は不可能」鳴は淀みなく記録を終えて、無残な遺体を前にため息をついた。「いったいどんな人間が、こんなに小さな子をこんな目に……」同情の言葉を聞きながら、私の心には憎しみが燃え盛っていた。真白を殺したその人間こそ、鳴が自ら家に連れ帰った初恋の人――御堂雅(みどう みやび)だ。幼児殺害・遺体遺棄という凶悪な事件に加え、最近ずっと降り続けていた雨が現場の痕跡の大半を洗い流してしまったせいで、捜査は難航していた。捜査チームは全員残業し、一日でも早い解決を目指していた。鳴が家に帰り着いた時間は、すでに深夜に近かった。彼の後をついて玄関に入ると、ソファで待っていた雅の顔が見えた。思わず目を剥いた。この蛇のような女が、私の大切な真白を殺したのだ。「鳴、今日はどうしてこんなに遅いの?」雅が立ち上がり、鳴の上着を脱がせた。「郊外で子供の遺体が出てね、犯人が狡猾で、捜査が難航してるんだ」鳴はこめかみを揉んだ。そのせいで、雅の顔に一瞬走
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