私の職業は特殊だ。専門は「別れさせ屋」裁判や協議離婚のサポートではない。それは弁護士の仕事だ。世間では愛はプライスレスだと言われているが、ほんの一秒前までパートナーに「愛している」と囁いていた男女が、次の瞬間には私に高額な依頼をしてくることも珍しくない。例えば今。私のスマホには、夫の藤堂蒼介(とうどう そうすけ)からメッセージが届いたばかりだ。結婚記念日の旅行先は、海外のロマンチックな街が良いか、それともリゾートが良いかという問い合わせである。しかしその次の瞬間、清楚な顔立ちをした若い女が私のオフィスに入ってきた。女は怯えたような様子で、多大な勇気を振り絞って口を開いた。「彼氏の代わりに依頼をしたくて来ました。彼、奥さんと離婚することに決めたんです」私は曖昧な態度のまま資料を手に取ったが、そこに蒼介の名前を見つけてしまった。私の手がピタリと止まる。しかし目の前の女はうつむいたまま言葉を続けた。「彼が言うには、奥さんは良い人だから、傷つけたくないって」私は微笑み、資料の写真を見つめた。そこに写る蒼介の顔は、見慣れているはずなのにどこか見知らぬ他人のようだった。心の中で深くため息をつく。別れさせ屋となって三年目。私はついに、自分自身の案件を引き受けることになったのだ。……資料を置き、私、黒川結衣(くろかわ ゆい)は目の前の女をじっくりと観察した。私より美人というわけではない。顔立ちはせいぜい清楚と言える程度だ。体つきは細く、出産経験はない可能性が高い。社会経験が浅く、きちんとした教育を受けて育ってきたのだろう。自分が不倫相手であることに触れる際、わずかに目を逸らすのは、気まずさを感じているかららしい。「黒川先生。私のようなケースでは、何か良い解決策はありますか?彼が言うには、できることなら奥さんから自発的に離婚を切り出してほしいそうです。やっぱり長く一緒にいたから、自分から言い出すのは申し訳ないって」彼女は唇を噛み締め、恥じらうような笑みを浮かべた。もし彼女が私の正体に気づいていないと確信していなければ、面と向かって挑発されていると勘違いするところだった。私は口角を少し上げ、ビジネススマイルを作った。「桜井莉奈(さくらい りな)様。彼とは付き合ってどのくらいになりますか?」
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