親友の桐山彩(きりやま あや)の結婚式で、ブーケが私・白河雪乃(しらかわ ゆきの)の手に飛び込んできた。彩がにやにやしながら近づいてきた。「霧島誠(きりしま まこと)を付き添いに呼ぶの、どれだけ大変だったか知ってる?七年間ずっと片想いしてたんだから、そのブーケ持って告白してよ!」私はブーケを抱えたまま、呆然として固まった。彩は知らない。私と誠は、もうすでに一年間こっそり付き合っていたことを。片想いがついに実ったと思っていた。苦労の末に手に入れた幸せだと。でも、彼に別れを突きつけて家から来た見合いの申し出を断らせようとしたあの日。彼は気だるげに笑って、ひとつも気にした様子もなく言った。「雪乃、七年も俺に片想いしてたくせに、本当に俺から離れられるのか?」我に返った瞬間、誠が真っすぐ歩いてきて、私の腕からブーケを抜き取った。固まった私の顔を見て、眉を上げながら、確信と侮蔑が混じった目で言った。「雪乃、やっぱりそうだろ。お前は俺から離れられない」ブーケを抜き取られた瞬間、指先にはまだ茎の粗い感触が残っていた。かすかな冷たさも。誠は私をもう一度見ることもなく、振り返ってそのブーケを林千夏(はやし ちか)の前に差し出した。「千夏、この花はお前に似合う」千夏は誠の大学の先輩で、誰もが注目する学園の高嶺の花だった。誠の親が幾千人の見合い相手から選び抜いた、一番お気に入りの嫁候補でもあった。千夏は花を受け取り、頬をほんのり染めて上目遣いに言った。「誠、雪乃ちゃんは気にしないかな?誠のお母さんが昨日も早く決めなさいって言ってたし」わざわざ私を見ながら言った。挑発的な目をしていた。周りの事情を知らない同席者たちが騒ぎ始めた。「つきあっちゃえ!つきあっちゃえ!」「霧島さんと林さんが並んで歩いてるだけで、本当に絵になるよね!」「またすぐ披露宴に呼ばれそう!」私はその場に立ち尽くして、両腕はまだブーケを抱える姿勢のままだったが、手の中は空っぽだった。七年間の青春が今まさに尽きようとしている、そんな空虚さによく似合っていた。誠が振り返り、視線がようやく私に落ちた。口の端に気だるい笑みを乗せて言った。「あいつは物分かりの良い子だから、騒がないだろうさ」物分かりの良い子。物
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