数日後、篠のもとに、業界パーティーの招待状が届いた。会場は深津市でも指折りの格式高いホテルで、大きな窓からは、きらびやかな街の夜景が一望できた。シンプルな黒のロングドレスに身を包んだ篠は、英樹と一緒に、少し静かなテラスの隅にいた。英樹はすでに新聞社を辞め、今は個人でメディア会社を運営しているという。彼は篠を見て、心から安心したような、感慨深い表情を浮かべた。「あの記事、読んだよ。見事だったけど、少し無茶をしすぎたんじゃないか?明徳のバックについている陣内家や二宮家は、一筋縄じゃいかない相手だぞ」「わかっています」篠はグラスに口をつけた。「手ごわい相手だからこそ、あの子たちの声を、なかったことになんてできなかったんです」英樹がため息をつき、何かを言いかけたその時、騒がしい足音が近づいてきて、二人の会話は遮られた。数人の男たちが、テラスへ向かってきていたのだ。その先頭にいるのは50代くらいの男で、篠はその顔を知っていた。陣内潤(じんない じゅん)、明徳国際学校の理事会の重役で、現在の陣内家で最も力を持つ人物の一人だった。「松尾さん、お噂はかねがね」潤は篠の数歩手前で立ち止まった。その声からは感情が読み取れない。「帰国して早々、こんな手厚い『ご挨拶』をいただけるとは。いやはや、お若い方は血気盛んで、末恐ろしいですね」周りの話し声がすっと静まり、多くの視線が集まる。篠はくるりと振り返ると、彼の視線をまっすぐに見つめ、微笑んだ。「お褒めいただき光栄です、陣内さん。私は記者として、事実を報じただけのことですから」「事実?」潤の後ろにいた若い男が、たまらず鼻で笑った。「根も葉もないことで嘘を並べ立て、世論を煽るなんて。それが事実ですか?松尾さん、あなたは海外でそんなやり方ばかり学んできたんですか?」「証拠は揃っていますし、裏付けも取れていますよ?」篠は一語一句、はっきりと告げた。「もしこの記事が捏造だというのなら、一つ残らず反論してくださればいいですし、もちろん、訴えていただいても構いませんので」若い男の顔がこわばる。潤はそれを手で制すると、じっと篠の顔を見つめた。「松尾さん。その度胸は買いますが、この世界は度胸だけじゃ渡っていけませんからねぇ」潤は一歩前に出ると、声を潜めた。「あなたが暴いたのは、ただの学校の不祥事では
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